風洞実験などについての小ネタ

前々から書こうと思ってた内容。

Twitterよりパクってきた画像が、とある実験シリーズの最新版の結果だった。この実験は2016年から続くシリーズである。まず第一として、この画像からわかることは技術の進歩=データ上での速さではないということだ。

サーベロやスペシャライズドは挙って過去のモデルより速いエアロロードをホワイトペーパーと共に出してきた。が、第三者の実験によって疑問符が浮かぶ。
特にサーベロのS5はその傾向がよく出ている。2019年のS5と2016年(2015年モデル)のS5を比べると、データ上は2016年のS5の方が速い。評判の良くないY字ステムに3:1ルール改正という追い風があってもなお。マドンに至ってはモデルチェンジで10W近く空力が悪化している。BMCに関してはなんとか1W向上させたものの、専用ボトルゲージや専用ハンドルを使用してようやく1Wだ。旧型Timemachineはエアロハンドルはともかく、他の条件ではかなり不利な筈だ。みんな大好きヴェンジに関しても4W遅い。

先ほど挙げたモデルの共通点は、全てモデルチェンジでディスクブレーキ化したことだ。私個人の見解として、空力の悪化はヘッド付近の空気の流れの変化とホイールのスポーク数の増加が要因か。

それにしてもCanyonのエアロードは重量増のみで全く空力は変化なし。まあドイツの雑誌だし、風洞実験施設もCanyonが使ってるしで優遇されてる感は否めない。だが、本当に風洞実験が全てだろうか。答えは否。レースは空力と重量では決まらない。

ここ暫くのバイクのインプレッションを見ていると、どうにも開発は空力一強から、ライドフィーリングの向上やインピーダンスロスの低減に重点が当たっている。
例えばZIPPの303とか。フックレスリムは軽く、尚且つチューブレスタイヤを使用して空気圧を下げなければならないので巡航と加速それぞれにメリットがあるように思う。メーカー側も設計の手間が省けるというのもある。現にZIPP303の価格は下がった。

それと以前私がアップしたGRID4540でも触れたが、横風耐性によって巡航性能は大きく変化する。その点でも風向きを細かく変化させられない風洞実験は状況の再現性には欠ける。個人的には空力の良くないZIPP454NSWや858NSWは現実のTTでは最速のホイールだと思う(ただしバカみたいに重い)。

またこの実験ではバイク単体の空力を比較するため、人間の下半身を模したマネキンを用いている。つまりスタックの高いフレームは現実の環境では遅くなる。恐らくビアンキのオルトレXR4は実験では遅いバイクなのだろう。しかしカウンターベイルや超低姿勢を実現できるTTバイク並みに低いスタックと長いリーチはバイク開発を真摯に行っていないと絶対にやらない。その点ではデローザのSKも同様だ。

また最近流行しているブラケットエアロポジションは、実はコンパクトシャローハンドルにDi2の組み合わせだとめちゃくちゃ疲れる。下ハン持った方が楽だ。メーカーはシャローハンドルの一体型ハンドルの開発を進めるべきだろう。そういう点ではCanyonには先見の明があったと言える。
また、コンパクトシャロー形状ながら、ハンドルのリーチを長くすることでブラケットエアロポジションをとりやすくしたボントレガーや3T(何故エアロノヴァを生産中止にしたのか)は極長リーチを持つがゆえにブラケットを遠くできる。このようなデータ上速いバイクよりも、実際に乗って速いバイクを見つけることの方が大切だ。

SL7やVENGEはそういう点からも速いバイクなのは間違いがない。まあ買うかと言われたら微妙だが…。

コラム:ぼくのかんがえたさいきょうのばいく

私はディスクブレーキ派だがリムブレーキのバイクに乗っている。多分学生のうちに買うバイクは全てリムブレーキだろう(というか余程の理由がない限りそんなホイホイ乗り換えたくない)。何故か。
端的にいうとコスト面だ。フレームはともかくとして、Di2とホイールの価格が重い。SL7を買いたくない理由もこれがメインだ。では今リムブレーキで買うとしたらどのフレームが旬か。

それはTIMEのアルプヒュエズ01だとハッキリ言う。次点でLOOKの785RS、サーベロのR5辺りか。

共通点は全て軽量フレームということ。そしてターゲットがヒルクライムでありながらロードレースで使用することを前提とした味付けというところか。

風洞実験のデータ、インピーダンスロスのデータではない。そのメーカーの作り上げる世界を見ることがバイク選びにおいては大切だ。そういう点ではトレックのフレームにはとても興味がある。このような選び方はある種の回帰なのだろう。データよりもどう進むか。バイクとの対話が求められる時代に突入したといっていい。

ちなみにS3は平坦では乗り手に合わせてくれるフレームだ。一方登りではバイクが先行する感覚である。追い風の時のスピードの乗り方は流石サーベロと言える。登りはバイクに合わせないと厳しいがこれも対話だ。そしてスプリントは闘争心を全面に押し出したように加速する。そういうフレームだ。多分クリテだと最強格のフレームだろう。

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