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2022年男子新体操団体選手権で、あの鹿実に何が起きた?~2022/5公開記事(Yahoo!ニュース)

 3年ぶりの有観客での開催となった第20回全日本ユースチャンピオンシップ、男子は2日目に個人決勝が行われ貝瀬壮(光明学園相模原高校)の初優勝という劇的な展開となった。
  3日目の今日は女子個人決勝と、男子は男子団体選手権が行われる。男子団体選手権は、正確には出場者は高校生に限らず、小学4年生から高校3年生までに出場資格がある。が、出場者の多くは高校生で、インターハイ、高校選抜と並び全日本選手権出場の切符を獲得できる(上位3チーム)場として目標とされている大会だ。
 今回は、17チームがエントリーしているが、注目を集めていた昨年度優勝校の宮城県名取高校は、メンバーの故障のため棄権となっており、優勝争いは混とんとしてきた。こうなると、一躍優勝候補の筆頭となってくるのは3月の高校選抜では3位に終わったものの、今大会は個人でも選手たちの伸びが著しかった青森山田高校だろう。
 個人でも3位に葛西麗音、7位に誉士太陽向が入る充実ぶりだったため、団体にもおおいに期待したいところだが、不安材料があるとすれば個人が良すぎたため、「団体練習は十分にできているのか」ということ。また、個人では棄権していた神山貴臣が団体メンバーにも名前が入っているが、出場できるのか、穴を埋めることはできているのか。ということくらいか。
 個人で優勝した貝瀬壮を擁する光明学園相模原高校にもおおいに注目したい。光明相模原は、3月の高校選抜時は5人編成での演技だったため、1.5の減点があり5位で終わっているが、その演技は上位争いをするにふさわしいものだった。「これで6人揃っていれば」と思ったものだが、今大会には6人で挑んでくる。貝瀬の初優勝というこのうえない起爆剤もあり、勢いにのっていることは間違いないだろう。
 上位3チームに全日本選手権の出場権が与えられるため、インターハイに出場することのできないチームにとってはこの大会は非常に大きな意味をもつ。そういう意味で今大会に懸ける思いがもっとも強いと思われるのが大垣共立銀行OKB体操クラブだ。今大会の個人でも2位・岩田隼、5位・田中千紗仁、8位・長瀬羚と力のある選手が揃っているOKB体操クラブだが彼らが所属する済美高校の名前が登録されている選手は5名しかいない。クラブチームとしては6名編成でチームが組めるが高校では6名そろわずインターハイには出場したとしても不利な戦いになってしまう。全日本選手権出場を狙うなら今大会が好機なのだ。
 そして、今大会の目玉のひとつが、鹿児島実業高校と禁断の華実の2チームが出場する鹿児島実業だ。禁断の華実は、じつは鹿児島実業で活動しているジュニアチーム「鹿実RG」の選手たちで5人編成となっているが、あの鹿実の弟分がどんな演技を見せてくれるのか楽しみにしておきたい。2021年のインターハイでは「名探偵コナン」になりきって話題をさらった鹿児島実業高校そして、エントリー17チーム中10番目に登場する鹿児島実業高校は、メンバー中3人は昨年のインターハイにも出場していたメンバー。高校選抜では個人2位となった太皷真啓もいる。そこに、昨年の全日本ジュニアチャンピオン・東凰雅も加わり、その実力はかなりのものだ。
 いつもはコミカル演技で会場を沸かせてくれる鹿実だが、今年のメンバーはまさに「最強の鹿実」。じつは5月20日には鹿児島県でインターハイ予選が行われており、インターハイ予選が終わってから東京に駆け付け合流したメンバーもいるそうだ。そこまでして鹿実が今大会で見せようとしている演技とは? 「コミカル」が話題になる鹿実だがじつはタンブリング、徒手などの基礎はしっかりと身につけている選手たちだ。果たしていつものコミカル演技なのか?こちらにもおおいに注目したい。
 7月に映画が公開される「バクテン!」は、男子新体操団体に懸ける高校生たちの青春を描いたものだが、今大会は年代的にもまさに「リアルバクテン」を堪能できる。会場での当日券販売は行われていないが、事前にコンビニでチケットを購入すれば(なんと1000円!)誰でも入場は可能だ。
 会場も東京体育館という好立地。団体競技開始は、13時10分からと、日曜の午後にちょっと見に行ってみるのに好都合な条件は揃っている。東京近郊に在住の方、アニメ「バクテン!」で男子新体操に興味をもった方、ぜひ会場に足を運び、リアルバクテンの世界を体験してみてほしい。
【追記2023/4/12】
 ほぼ1年前に書いた記事になります。2022年のユースチャンピオンシップは、日本体操協会主催の新体操の大会としては2019年全日本選手権以来の有観客試合でした。いてもたってもいられずチケットを買って(飛行機にも乗って)見に行きました。やはり久しぶりの有観客ということで会場には活気がありました。そしてその活気に力をもらったかのように、素晴らしい演技がたくさんありました。この記事は男子メインに書いていますが、女子も素晴らしかったです。コロナ禍でリアルで新体操を見るチャンスが少なかった2年間でかなり選手が入れ替わってしまいましたが、高校3年間という貴重な時期をコロナと共に過ごさざるを得なかった選手たちが、まるでそんなことはなかったかのように、素晴らしい演技を見せてくれたことに胸がいっぱいになった大会でした。
 最大のニュースは、鹿児島実業高校の団体競技優勝でしたが、このサプライズを成し遂げた「最強の鹿実」メンバーが入学する前から鹿実は少しずつ「ガチ演技」に手をつけていました。機会をうかがい、チーム状況、周囲の状況を見ながら「いつかはガチ演技で勝負する」んだろうな、と思っていましたが、コロナ禍でもありなかなかそのチャンスは巡ってきませんでした。
 が、やっと開催された久々の有観客試合、東京体育館でのこの試合で、鹿実は「ガチ演技」で日本一になりました。ほんとに映画やアニメも超えるよく出来たストーリーでした。 
※写真は2022年鹿児島実業高校での練習風景

20年近くほぼ持ち出しで新体操の情報発信を続けてきました。サポートいただけたら、きっとそれはすぐに取材費につぎ込みます(笑)。