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2011青森山田高校<夏>

「臨戦態勢」

2011年7月17日。
地元青森でのインターハイを目前に控えた青森山田高校の練習を見た。

まだ公にはなっていない新構成の作品が、ここ青森山田の体育館では惜しみなく(当然だが)繰り返し、繰り返し練習されていた。

テーマは「吻合」なのだという。
和と洋。三味線とバイオリン。
そんなさまざまなものが融合する、そんなテーマを持った演技だと聞いていた。

たしかに。
そこにはそのテーマにふさわしい演技があった。

ただ、私には、もっと違うテーマも感じとれたが。
それは私の妄想かもしれないし、はからずもそういう雰囲気を醸し出していたのか。それは定かではないが。

ひとつ言えるのは、テーマがなんであれ、この作品は、かなり人の心をうつ、ということだ。少なくとも私は、「いい!」と思った。
実施の面でも、完成度はあがっていた。

青森インターハイでの、青森山田高校の演技は、楽しみにしていていい。それは間違いない。

5月の団体選手権で優勝した青森山田高校だが、そこで披露された演技は昨年と同じ構成だった。エキシビションのときに、荒川監督の口からは、「新構成はまだ封印しています」というような話があったが、「封印」「温存」というよりは、「未完成」。それが実情だったのではないかと思う。

これで、インターハイに間に合うのか?
そんな声が少なからず聞こえていた。

6月の高体連東北大会でも、まだ「新構成は封印」だった。
もういい加減、もったいつけてる場合じゃないでしょうに!
私も正直、そう思っていた。

同時性が大きなポイントとなる男子新体操の団体では、やはりいかにその演技を数多くこなしてきたか、の差は大きいのではないか。
いかに青森山田高校の選手たちの能力が高くても、それでは埋められない「かけた時間の差」というものがあるように思えてならなかった。

地元・青森でのインターハイでの優勝!
青森山田高校をもってすれば、それは決して難しいことではないように思えていたが、これは・・・もはや黄色信号では? そう思っていた人もいるのではないか。(現に私がそうだった)

山田01

しかし。
結論から言えば、青森山田は見事にインターハイに合わせてきた。私はそう感じた。
まだ誰も見たことのない演技を、青森インターハイで初披露する。
それは決して「狙って」いたわけではなく、難産の結果、なのだとは思うが、ここまで完成してしまえば、まるでそれはインパクトを狙っての演出だったかのようにも見える。

くしくも試技順は、おわりから2番目。
ほとんどチームが演技を終えて、あらかたの順位も決まったところに、青森山田高校は登場する。
おそらく地元の応援も多いだろう。
どのチームよりも大きな声援のなか、この演技がスタートする・・・。

考えただけで、ぞくっとする。
青森開催のインターハイに、ふさわしい結末を、この作品ならばたぐりよせられるかもしれない。そんな予感はたしかにある。

山田04

おそらく作品が完成したのはどのチームよりも遅い。
一度も評価を受けたことがない。
そんな状態で、インターハイを迎えるが、選手たちにはとくに焦りの色はなかった。驚くほどみんな充実した表情をしていた。前向きに、明るく、そして懸命に。インターハイまでの1日1日を大切に過ごしている。そんな印象を受けた。

楽観するわけでも、思い上がるわけでもなく、でも、彼らは「勝てる!」と信じているのだな、と感じた。そして、それにふさわしい努力をしている。

「インターハイが初披露!」
せっかくそんなお膳立てができているのだ。
私があまり情報を流しては野暮というものだ。
青森山田高校の団体についてはこのくらいにしておこう。

山田02

男子の団体は1つのミスで順位が大きく変わる。
だから、いくら選手の能力が高くても、作品がすばらしくても、勝負はやってみなければわからない。
青森山田高校も例外ではない。

すべては8月1日の、ただ1回の演技に懸かっているのだ。

しかし。
少なくとも、「優勝を争える」ところまで、青森山田はやはりもってきた。
それは間違いない。

山田03

臨戦態勢は整った。
8月1日、青森山田高校は、全国から青森にやってくるライバルたちを迎え撃つ。
結果は・・・そう、神のみぞ知る。

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