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2010小林 翔(青森大学1年)

 東日本インカレで、大学デビュー早々3位という快挙を成し遂げたのが、この小林翔選手です。
 彼を初めて見たのは、2008年のユースチャンピオンシップでした。この年からユースチャンピオンシップで男子の競技も行われるようになり、その初代チャンピオンが、彼だったのです。
 ちょうど『DDD』の取材で入っており、男子新体操好きな編集長だったため、しっかり男子の優勝者インタビューも行ったのですが、そのとき、あまりの爽やかさにほんと、いい歳してぽおっとなってしまったのでした。
 このブログでもすでに取り上げている青森山田高校の団体メンバーとしても活躍していた小林選手ですが、青森山田の演技が、それまでとはひと味違ったダンサブルなものになっていった時代の、まさに彼は中核をなしていたと思います。
 ユースチャンピオンシップでの優勝者インタビューのとき、聞いた話ですが、彼はもともと野球少年だったそうです。しかし、野球でやっていくには致命的な故障があり、中学から新体操に転向したのだそうです。はじめは「男子が新体操?」という照れもすこしばかりあったと言う彼ですが、それもすぐに克服できたと言っていました。
 彼には持ち前の柔軟性があり、それを生かして、男子新体操というステージで輝くことができるということに気づいたから、だったようです。「人にはできない動きができるようになると、見ている人がおおっと言ってくれて、評価もついてくる、それが楽しいです。」2年前、当時高校2年生だった彼は言いました。
 愛知県から青森山田高校に進学して、どんどん開花していった小林翔選手。資質にも恵まれていたことは間違いありませんが、高校時代は部活のあとに、ダンスレッスンにも通うなど、人一倍の努力を重ねてきた選手でもあります。

小林

 その結果が、2009年選抜、インターハイの個人での2冠達成だったのでしょう。昨年はユースチャンピオンシップがインフルエンザの流行で中止になったため、3冠はなりませんでしたが・・・。
 10月の全日本選手権でも、大学生に混じって14位という堂々たる成績でした。このときは、クラブでしりもちをつくというミスがあり、それが響いてしまいましたが、女子ではよく見るバックルジャンプなども入った「小林翔」ならではの演技を見せてくれました。
 大学生のなかで見ると、手具扱いなどはまだまだ発展途上にも見えましたが、静止したときのポーズの美しさ、静止から動き始めるときの間合いのよさなどに、卓越したものがあり、つなぎの動きの美しさ、かっこよさは、次世代王者の可能性を感じさせるものでした。
 ユースで優勝したときに比べると、身長も伸びてかなり身体も大きくなり、フロアでの見映えもさらによくなっていて、大学生になってからの活躍は、十分に想像できました。

 ですから、今回の東日本インカレでの小林選手の活躍は、ある意味、想定内ではあります。しかし、正直言って、大学デビュー戦でここまでとは期待を上回るものでした。
 多くの偉大なる先輩達のいる青森大学の大型ルーキーとして、小林翔は、おおいなる飛翔を見せてくれました。ロープでは、格段にレベルアップした手具扱いも見せてくれ、美しい動きはさらに磨きがかかっていました。高校生のときは、いわゆる「かっこいい男の子」という印象でしたが、踊っている姿にはすでに「セクシーさ」さえ感じられました。

小林

 小林翔選手の大学時代はまだ始まったばかりです。あと4年のうちにいったいどこまで進化してくれるのか、楽しみでなりません。
 願わくば、フィギュアスケートの高橋大輔選手のような、すべての音にのせた動きで、見る人を魅了するような。そして、「エロさ」さえも感じさせるような、魅惑的な選手になってもらいたいです。
 今年のインカレは、8月15~17日に、青森で開催されます。関東や関西から出かけるにはすこし遠いですが、東日本インカレを見ただけでもかなり見所多かったので、絶対に行って損はありません。(西日本のチームも花園大学をはじめ、すばらしいですから!)私は勢いですでにホテルを予約してしまいました(笑)。
 「遠いからどうしようかな~」と迷っていた私に、「行くしかない!」と決意させた要因の1つが、この小林翔選手です。ぜひ、多くの方に見てもらいたいです。

<「新体操研究所」Back Number>※写真は2009全日本選手権

20年近くほぼ持ち出しで新体操の情報発信を続けてきました。サポートいただけたら、きっとそれはすぐに取材費につぎ込みます(笑)。