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2010アルフレッサ日建産業(団体)

 アルフレッサ日建産業は、名前が示すとおり、社会人のチームです。社会人の新体操チームとはじめに聞いたときは、「昔やっていた人たちが集まって昔をなつかしんでやるのかな」と思いました(現にそういうチームは男女ともときどき見かけます。それはそれでとても心温まる光景です)。しかし、アルフレッサ日建産業は、そういう同窓会チームとはちょっと違っていました。
 むしろ、野球や陸上、スケートなどにはよくある実業団チーム。「昔とったナントカ」ではなく、今も練習し続け、進化し続けている、新体操に人生を懸けたオトコたちの集団、それがアルフレッサ日建産業なのです。
 創部は2006年だそうですが、はじめは団体を組める6人に満たない人数でのスタートだったとか。毎年、すこしずつ人数を増やしてきて、2008年ついにフルメンバーで、全日本社会人大会の団体の部に出場し、初優勝。その勢いのまま、全日本選手権でも7位入賞を果たしました。
 
  そして、2009年の全日本選手権では、またまた躍進をとげ、5位入賞。「大人の新体操」を見せる、アルフレッサ日建産業の勢いは止まりそうにありません。
 男子新体操は、現在では力のあるジュニアクラブも増えてきていて、大人顔負けの能力をもった(とくに徒手能力)小学生、中学生も増えてはいます。しかし、女子以上に男子の新体操は、体の成長とやってきた年数(熟練)がモノをいう競技だな、と感じます。
 ひとつひとつの技の完成度では、年齢が下でも勝ることは可能ですが、手具操作や動きの深みや見せ方、これはどうしてもある程度の熟練あってこそ、のように思います。
 だから、男子新体操は大学生の見ごたえがすごい! のです。しかし、従来なら、同窓会チーム以外には、大学を卒業してから続ける道がなかったはずです。そんな状況をアルフレッサ日建産業が、打破してくれた、ということもできるでしょう。
 現在、アルフレッサ日建産業に所属している選手達はいずれも、青森大学や国士舘大学、福岡大学などの新体操部で活躍してきたアスリート達です。今回、この記事を書くにあたって、昔の記録をいろいろと調べていたら、高校時代には青森山田高校や埼玉栄高校などからインターハイにも出場していた、など輝かしい実績をもっている選手達だということがわかりました。
 そんな人たちが、社会人になってもなお、本気で新体操をやっているのです。進化しないわけがありません。
 アルフレッサ日建産業の演技には、華があります。表情ひとつとってもいい意味でとても派手なのです。あくまでもストイックなアマチュアである高校生、大学生とのそこが違いかもしれません。競技にも出場はしているけれど、彼らはいわば「プロ」なのだと思います。
 競技で成績を残すことも追求はしているのでしょうが、むしろ「男子新体操の魅力」を伝えることに重きを置いているのではないかと、その演技から感じるのです。例年、出演しているNPOぎふ新体操クラブの発表会での演技などは、まさにパフォーマンス! 女子選手とのコラボも含め、すばらしいエンタテイメントです。もしかして、新体操には(男子も女子も)こういう活路もあり得るのではないか、そんな夢も、彼らの演技は見させてくれます。
 そんなアスリートであり、エンターテイナーでもある選手達。毎年、1月に長野で行われる長野カップのパーティーの会場でいつも中心にいるのも、彼らです。NPOぎふ新体操クラブの男子選手、女子選手にとっても、いいおにいさん(おじさん?)である姿が、とても微笑ましいです。
 新体操というスポーツが、生涯スポーツになっていけるかどうか、また指導者以外に生計をたてる道が可能なのかどうか、アルフレッサ日建産業はいろいろな意味での試金石になりそうな気がします。
 そして、大学卒業後も新体操を続ける場を得た彼らが、果たしてどんな境地の新体操を見せてくれるのか? それが私は楽しみでなりません。
<「新体操研究所」Back Number>2010.4.1

20年近くほぼ持ち出しで新体操の情報発信を続けてきました。サポートいただけたら、きっとそれはすぐに取材費につぎ込みます(笑)。