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YIIK: ポストモダンRPGをクリアしました。

『YIIK: ポストモダンRPG』をクリアしたので、感想を書いていこうと思います。

プレイしたのはSwitch版のversion 1.03
PCや他機種などのverの違うものとでは、大きく内容が異なる部分があるようなのでご注意下さいませ。

ジャンルはRPG。
1999年のアメリカを舞台に、インターネットの掲示板で知り合った仲間とともに謎の失踪事件を追うというストーリー。

クリアまでのプレイ時間はゆっくり遊んで30時間くらい。

加点100点、減点100点で結果0点みたいな、ものすごいゲームなんだけど、好きか嫌いかでいうと大好き、というような作品でした。

少し前にストーリーの考察を上げていますので、クリアした方はこちらもどうぞ。(ネタバレ注意)

■このゲームをオススメできる人

以下の条件に多く当てはまる人なら、本作を楽しめると思います。

・BGMの良いゲームが好き。
・ローポリのグラフィックが好き。
・普段から小説を読んでいるor長い文章を読むのが苦痛でないという人。
・単純作業が好き。
・2ちゃんのオカルト板や、クリーピーパスタを読み漁るのが好き。
・複雑なストーリーを考察するのが好き。
心が広い人。

特に最後の「心が広い人」は重要で、システム・バランス面でのガバが非常に多いので、そのへんを許せて、かつ、上記の様々な要素が好きであれば楽しめるはず!

以下、具体的な内容について解説していきますが、長いので気になったとこだけ見ながら流し読みしていただければと思います。

一応、ストーリーの内容にも触れる部分がありますので、ネタバレ完全なしで遊びたいという方はご注意下さい。

ですが、終盤の展開等、ストーリーに関するクリティカルなネタバレは避けたつもりですので、興味はあるけどプレイするか迷っているという人は参考にしていただければと思います。

■グラフィック・BGM

本作は後述する問題点を抜きにしても、非常に好みの分かれる作品だと思いますが、その中でもストレートに魅力的だと言える要素がBGMです。

全体的にクセの強い曲が多いですが、どれも作品の雰囲気にマッチしています。

中でも特徴的なのは、戦闘BGMの豊富さ

敵のバリエーションと同じくらい曲数があるんじゃないかってくらい豊富で、通常戦闘曲がここまで多彩なゲームは珍しいと思います。(他に思いつくものではMOTHER3くらいでしょうか)

ピコピコした音源だったり、ジャズ風だったりどれも特徴のある曲で、バリエーションの多さがカオスな世界観にピッタリあっていると思います。

しかし、これがYIIK七不思議(そんなものはない)のひとつでもありまして。

通常戦闘曲が豊富な作品というと、本作も影響を受けているであろうMOTHERシリーズなんかが思い当たりますが、アチラは『敵の種類に合わせて』BGMが選曲されています。

要するに同じ敵と戦えば同じ曲が流れるというわけです。

あるいは、他の作品では『フィールドやエリアごとに曲が変わる』なんてものもありますよね。

しかし、YIIKの場合は、同じ場所で同じ敵と戦った場合でも、毎回違う曲がながれます。

完全にランダムと言うわけでもなく、一応エリアによって多少曲のラインナップが変わったりはするんですが、それにしても選曲が謎です。

いろんなゲストアーティストの曲があって、中にはみんな大好き(おれは好きじゃない)アンダーテールの作者トビー・フォックスの曲なんかもあります。

これがめっちゃカッコいい曲なんですが、序盤のウンコと戦うときに流れたりするのでホントに謎。

中盤のダンジョンでも同じ曲が聴けてこっちはピッタリ雰囲気に合ってるんですけどね〜。

BGMの法則性、わかる方いたら教えて下さい。

※ 追記(2/12)
Twitterにてフォロワー様に教えて頂けました!
どうやら、敵シンボルごとにBGMが固定されているようです。
周回した場合、同じシンボルの敵と戦うと同じBGMが流れるということらしい。
つまり、意図的にあの選曲を……?

他には、ボーカル曲がそこそこあるのも特徴。
インディーバンドっぽい、クセのある歌い方が作品の雰囲気にあっていて最高に盛り上がります。

特に終盤で流れる曲はストーリーの展開、ビジュアル面での演出と相まってエモさの極みです。

グラフィックも個人的にはめちゃくちゃドストライクなんですが、こちらは多少人を選ぶかもしれません。

見ての通り、人物の顔が全体的に迫力満点なので……

メインヒロインのヴェラでさえ、なんかすごい顔してます。
立ち絵のイラストの方はまだかわいいんですけどね……

全体的にローポリ調なんですが、単なるレトロゲーム風ではなく、現代的なアートとして取り入れた新しいデザインになっているのがすごく良いんですよね。

新しい町につくと、町の名前のロゴが表示されるんですが、これがまた絶妙にダサかっこよくて非常にツボです。

自分は、『音楽ファンタジー・ゆめ』とか、『ポピーザぱフォーマー』みたいな、のっぺりとした3DCGが大好きなんですが、あの辺の作品に近い魅力があると思います。

また、スクショでは伝わらない特徴としては、コマ送りのようなアニメーションが挙げられます。

キャラクターの歩く動きや、戦闘中の攻撃モーションなんかが、カクカクした動きなんですよね。

最初は違和感があったんですが、グラフィックの雰囲気とマッチしていて非常にこだわって作られていることがわかります。

カメラワークがマップごとに異なっていたり、ムービーや戦闘中の演出なんかもハイセンスで、見ていて飽きません。

マップのグラフィックに関しては、特に精神世界のような場面との相性が抜群によく、新しいエリアに行くごとに驚かされました。

敵のデザインも某ティーンエイジャーでミュータントでニンジャのパロディだったり、ウンコやら宇宙人やらだったりかなり独創的。

ふざけた連中が多いですが、シナリオ上重要になってくるエンティティなんかは最高に格好良くてクールなデザインだと思います。

ネタバレになっちゃうのでボカシますが、終盤のとあるボスのデザインなんかもかなり好きです。

BGMとグラフィックについては、文句のない出来で、PVなどを見てビジュアルに惹かれたという方は遊んで損はないと思います。

■クセの強い世界観

本作の舞台は1999年のアメリカの田舎町イーストン。

大学を卒業したものの、就職するでもなくダラダラとした日々を過ごしていた主人公のアレックスは、ある日、迷い込んだ廃工場でサミーという少女に出会う。

なんだかんだあってサミーと打ち解け、ふたりで廃工場から脱出しようとするが、突然、異空間から怪物が現れて彼女を連れ去ってしまった。

後日、インターネットの掲示板ONISMで、行方不明の少女として、サミーが話題になっているのを見つけたアレックスは、友人のマイケルとともに、サミーを探すために情報を求めて行動を始める。

オカルトや都市伝説といった、『あの頃のインターネット』的な魅力に溢れた世界観が特徴です。

ゲーム的な流れとしては、掲示板で得た情報をもとに、いろんな町へ飛び回って仲間を集めながら調査を進めていくと言う感じ。

この掲示板が非常に作り込まれています。

見た目の再現も素晴らしいんですが、実際にひとつひとつのスレッドを見ることが可能。

ストーリーに関係のあるもの以外にもいろいろなスレが立っており、ゲームの進行とともに内容も更新されていきます。

中には、掲示板に書かれた場所に向かうことで戦闘やイベントが発生し、経験値が貰えるというサブクエストになっているものも。

書き込みの内容も異様にリアルで、荒らしやら成りすましやらが現れたり、何かとデマだの合成だのと指摘するヤツがいたりなど、ああ〜、こういうヤツいるわ〜!となります。

Switchの携帯モードだと文字のサイズがリアルに1mmくらいしかなくて死ぬほど読みづらいという欠点はありますが、本作の最大の魅力と言ってもいい要素だと思います。

いや〜、この、掲示板に書かれたウワサ話を実際に検証してみようってめちゃくちゃワクワクする流れじゃないですか!

(でも、携帯モードで遊ぶなら、ルーペを用意したほうがいいですよ!←ホントにルーペ片手に遊んだ)

ストーリーは中盤以降、パラレルワールドやら異世界やらといった話が出てきてかなり複雑です。

しかも、文章で説明するシーンが多いため、余計に難解になっているような気も。

本作の大きな特徴のひとつとして、文章の多さが挙げられます。

RPGにおいて、地の文というと、あくまでも状況を補足する役割のものが多いですが、本作では、ガッツリと主人公視点のモノローグが挿入されます。

これが、そこそこ頻繁にある上にかなり長い!
翻訳のクオリティが高いのが救いですが、言い回しも独特でまどろっこしいです。

これはかなり賛否が分かれる、というか、どちらかというと否よりの意見が多そうな部分ですが、個人的には、アリだと思います。

小説を読んでいるような感覚でプレイできるので、キャラクターに感情移入しやすいと思います。

まあ、感情移入できるかについては、そもそも、主人公であるアレックスのキャラがかなりクセがあるので、彼を好ましく思えるかどうかというのもデカイと思います。

アレックスは、なんというかデリカシーに欠ける部分があって、わかりやすいのはこのシーンですね。

いろいろトラブルに巻き込まれたとはいえ、妹が自殺して引きこもってたキャラに対してコレですからね。

実際、他の仲間もドン引きしております。

主人公にも関わらず、周りをまとめるどころか、すぐパニックになって場を掻き乱すわ、信頼どころか、若干ウザがられてる節はあるわでろくなやつじゃないんですよ。

みんな、アレックスのこと川に突き落として喜んでましたからね(マジ)

これ、仲良し同士のキャッキャウフフじゃなくて、リアルに嫌いなやつにギリギリ笑って許されるレベルの嫌がらせして楽しむやつです。わかります。

そもそも、ストーリー上意味があるとはいえ、失踪事件を追う動機もフワフワしており、出会って数分の女の子を探す前に職を探せと思ってしまわなくもないです。

ですが、このどうしようもなさそうなというか、嫌われ方、なんというか…身に覚えがあるというか…

個人的なダークサイド・オブ・ヒストリーなので詳細は省きますが、今まで遊んだゲームの中でもトップクラスに身近に感じるキャラだったのです。

主人公がこんなんな上に他のキャラもかなりクセのある、ハッキリいって初見の印象が良いとは言えないキャラ揃いなんですが、たま〜に、チラッとホンネというか、臆病者特有の生ぬるいやさしさが見え隠れする感じが、こう、絶妙に生々しい陰のコミュニティを描けていてね、良いんですよ……

特に好きなのは、アレックスの親友のマイケルですね。

こいつは、明るくておしゃべりな普通に良いやつで、他のキャラと違ってそれほど闇を抱えてるわけでもないんですが、なんでか、アレックスの親友なんですよね〜。

共感してくださる方がいるかは分かりませんが、アレックスみたいなロクデナシにも、こういうなんで仲良くしてくれるんだろう……っていう友達、いるんですよ……

本作においては、このあたりの関係性や、アレックスの性格についても、ストーリーや世界観に関わる理由付けがされており、きちんと意味のある設定になっています。

失踪事件をはじめ、様々な奇妙な出来事が起こりますが、そういった謎については、ハッキリと答えを出すというよりは、断片的な情報から推理していくような形をとっています。

そのため、分かりやすいストーリーや伏線回収を期待していると肩透かしをくらいますが、ストーリーの考察をするのが好きという方であれば楽しめると思います。

この手の作品に期待するシュールなギャグ展開もセンスが良いです。

まあ、ギャグに関しては、好みが分かれるので合う合わないの話だと思いますが、自分は大好きなヤツでした!

とはいえ、お墓のネタに関しては人によっては不快に思うかも知れません。(たぶん、作者としてはリスペクトのつもりで悪意はないと思われる)

あとは、パロディなんですが、某国民的RPGのキャラを見た目も名前もそのまんまで登場させるのなんかは、ちょっとアレかもしれません。

しかも、そのタイミングでそれやる!?って場面で出てくるのでめちゃくちゃ困惑しました。

ギャグ以外ですと、オカルト・ホラー描写がキレ味バツグンでかなり良いですね。

下手なホラーゲームなんかよりも、よっぽどキレてます。

夜中に目を覚ましたら、リビングのソファにバケモノが座ってるところなんか、最高ですよ。

これ、とくに主人公は触れない上に、調べると『ここには何もない』って出たり、下手にリアクションをとらないところがバツグンにうまい!

このあとの展開もかなり良いんですが、気になった方はぜひプレイして自分の目で確かめてみて下さい。

ドカーッ!と脅かすんじゃなくて、イヤ〜な違和感を感じさせるスタイルなのが最高にクールです。

■様々な問題を抱えたシステム

本作は、基本的にはRPGの形を取っているものの、独特なシステムがいろいろと盛り込まれています。

ですが、これが曲者でして……

探索パートについては、わりとオーソドックスです。

フィールドマップを移動し、町やダンジョンを行き来してストーリーを進めていきます。

町やダンジョンでは、パンダを召喚したり猫を発射したり前髪を伸ばして木を切ったり、様々なアクションを行うことができます。

何言ってんだよ、って感じですが、ホントにそのまま文字通り猫を発射します。

これらのアクションを使って仕掛けを動かしていくという、大雑把に言うとゼルダシリーズのような謎解き要素があります。

まあ、こういった要素は他のRPGでもたまにありますな。

町の至るところに、これらのアクションを使って入手する宝箱が隠してあったり、探索が楽しくなるので純粋に良い要素だと思います。

絵面のシュールさもナイスです。

問題点らしい問題点といえば、スケボーの性能でしょうか。

スケボーは、乗ると早く移動でき、ジャンプ台があれば穴を飛び越えられるというアクションなんですが、乗ってる間は曲がることが出来ず、真っ直ぐにしか進めません。

それだけなら、いいんですが、任意で止まることすら出来ないので、壁や物にぶつかるまで操作不能になります。

うっかり町中で誤爆したり、または移動用に使用していると、町の端まで一直線に進み続け、フィールドマップに出るまで止まらないことがあります。

とは言うものの、実際にプレイする上では些細な問題です。

もし任意に止まれたら移動用に便利なのにな〜というレベルですね。

・マインドダンジョン

本作を語る上で欠かせないのはマインドダンジョンの存在でしょう。

本作では、敵を倒すと経験値が貰えるというのは一般的なRPGと同様なのですが、それだけではレベルは上がりません。

レベルを上げるためには、まず、セーブポイントである電話から、マインドダンジョンに入る必要があります。

かなり大雑把にいうと、FF10のスフィア盤みたいな感じで、ここに入って主人公のステータスをひとつひとつ上げていく形になります。

これが2度デマどころか3度デマ、4度デマでして……

①電話からマインドダンジョンにはいる。

②経験値を100払って下の階層へ行く。

③部屋ごとに上げたいステータス(HPや攻撃力)を選ぶ。

④もう一度、扉を調べて部屋に入るとそのステータスが扉の上の数値分上昇する。

これだけで相当めんどくさいですよね。
特に③、④の二度デマ感と言ったら……

そのうえ、経験値100ごとにひとつの階層を開放でき、かつひとつの階層には4つ扉があるので、仮に経験値が500あったら、5×4=20回これ(③→④)を繰り返す必要があるのです。

ですが、実際のところ20回やる必要はありません。

マジで20回やらされてたらさすがに自分も投げてたと思いますし、作り手側もある程度はわかっていたのだと思います。

まず、分かりやすい救済措置として、カラスに話しかければおまかせで数値を設定してもらうことができます。

そうすれば、③④はやんなくていいワケですね。

ですが、これでは、せっかくのステータスを自分でカスタマイズするという要素が失われ、なおさら虚無になってしまいますよね。

そんなときは、③の上げたいステータスを選ぶところだけやってからカラスにおまかせすると、選んだステータスはそのままに選ばなかったところだけ自動で設定してくれます。

また、いちいち部屋に入らなくても、4つ全部選んでからカラスに話しかければ一括でアップさせることも可能。

これがわかると大分マシにはなります。

ですが、このへんの仕様についても特に説明がないんですよね……

説明書もないので困ります。

また、後述する戦闘バランスの関係でそもそもステータスをカスタマイズする必要性すらほぼ無いと言えます。

ですが、マインドダンジョン自体は個人的にはそこまで嫌いでも無いです。

タオルケットをもう一度の「こころの中」とか、SD刑事ブレイダーの「ギャラクシー基地」とか、ゲーム中に任意で移動できる別エリアみたいのが結構好きなんですよね。

ちょっと寄り道しよ〜とか休憩しとこ〜みたいのが好きというか。

レベルアップ以外にも、一定の階層に到達すると、いろんなイベントが見れるという要素もあります(内容はストーリーに関係あるんだかなんだかわからない感じで微妙なんですけどね……)

なので、マインドダンジョン自体は悪くないというか、ステータスのカスタムとかゲームバランス次第では面白い要素ですし、もうちょっと練り込んだら良くなりそうな気がするんですよね。

ダンジョンに入り、下の階層へと進んでいくという部分は演出程度にとどめて、レベルアップとステータス割り振りが一括で出来るとかなら大分楽になる気がします。

ぶっちゃけ、一応シナリオ・設定上の意味があるとはいえ、システムとしての機能については無くても良いといえば良いんですよね……

レベルを上げるとたまにイベントが見れる寄り道要素程度の扱いでも充分かも。

・戦闘システム

本作の戦闘システムは、基本はターン制のコマンドバトルですが、コマンドを選ぶごとに、専用のミニゲームが挿入されるという特徴があります。

ミニゲームはほとんどのコマンドに設定されていて、種類も豊富。

しかし、いちいちミニゲームを挟むので、テンポが良いとは言えず、一回の戦闘がかなり長めです。

問題なのが、敵に攻撃された場合で、この際も当然のようにミニゲームが挟まれます。

しかも、全体攻撃の場合は、キャラごとに一回ずつ(4人パーティなら4回)ミニゲームをする必要があり、これがかなりテンポが悪いんですよね。

味方攻撃のミニゲームに成功すれば、ダメージが上がり、完全に失敗するとノーダメージ。

敵の攻撃のミニゲームの場合は、成功させればダメージを軽減し、さらにシビアなタイミングで成功させれば攻撃を完全に回避する、といった感じ。

それ以外には、敵からダメージを受けると貯まるタイムゲージを使うことで、ミニゲームをスローにして、成功させやすくするという要素もあります。

この戦闘システム自体は、個人的には好きです。

近いシステムとして、マリオRPGシリーズが挙げられますが、体感としてはRPG要素の加わったメイドインワリオって感じがします。

心地良い音楽を聴きながら、ミニゲームを次々とこなしていくのは地味なんですけど、結構楽しいんですよね。

なんか、漢字の書き取りの宿題に近いと思います。

淡々とした単純作業が好きな人は好きだと思いますね。

ミニゲームの難易度も基本的には絶妙で、簡単すぎず難し過ぎず、何度もやっているうちに少しずつ上手くなっていく感じで良いです。

プレイヤーの腕前と、キャラクターの数値的な成長、さらにそこにタイムゲージの要素が加わって、独自のプレイ感覚になっており、システム自体は悪くないと面白います。

一回の戦闘が長い分、敵が出てくる頻度は少なめでシンボルエンカウントなのも救いでしょう。

しかも、ひとつの章に出てくる敵の数は決まっていて、すべて倒すと次の章までザコ戦は発生しないのも良いです。

でも、やっぱり敵の全体攻撃はめんどくさいです……

そして、最大の問題点が、アレックスが使える技のひとつ、『LPスロー』の威力がぶっ壊れていることです。

LPスローは、全体攻撃かつ、通常攻撃の10倍以上の威力というハチャメチャなもの。

当然、敵は一撃で溶け、一瞬で戦闘が終了します。

しかも、ミニゲームはシューティングゲームのようなものなんですが、これが適当にボタンを連打してるだけでOKという、数あるミニゲームの中でもトップクラスに簡単なもの。

一応、弱点として、敵に当たらない場合があって倒しきれないことがあるのと、シューティングゲームの的の数が敵の数に比例するので、敵が少ないと失敗しやすいというのがあるんですが、あってないようなものです。

なので、これから遊ぶ人には、LPスローを使わないでプレイすることをオススメします。

しかし、使わなかったからといってバランスがいいかというと微妙で、今度はかなり戦闘が長引いてしまう場面が出てくると思います。

ちなみに、聞くところによると、このLPスロー、初期のバージョンではかなり弱く、アップデートで強化されたようです。

にしてはあんまりにも極端すぎるだろうと思ったのですが、難易度を本格的に調整するまでの間の救済措置としての擬似的な戦闘スキップだと思えば納得できます。

あんまりオススメしませんが、ストーリーだけ楽しみたいという方はむしろガンガン使っちゃうのもありかも知れませんね。

もうひとつ、戦闘バランスの問題点としては、負けイベなのに負けられない問題があります。

終盤のとあるボスが絶対に勝つことのできない所謂負けイベントなんですが、LPスローを使うまでもなく普通にHPを削りきれてしまいます

では、勝てるのかというと、そうではなく、HPが0になっても戦闘が終了せず続行されます。

しかも、普通に敵の攻撃が回避できてしまう上に、喰らっても大して威力がないという有様なので、わざわざ攻撃を食らって負けてあげないと先へ進めません。

負けイベなのは良いとして、せっかくストーリー的には盛り上がる場面なので、もっと激戦を演出して欲しかったところ。

・カレンダーシステム

その他、気になる点としては、後半に登場するカレンダーシステムがあります。

これは、とあるイベントまでの残り日数を、「仲間と話す」「町へ出てサブクエストをこなす」「マインドダンジョンへ入ってレベルアップする」の3つの行動から選んで過ごすというシステム。

上記の行動のうちどれか一つを行うと1日が終了し、次の日になってまた行動を選ぶ、という形で進めていきます。

はじめのうちは面白いシステムで、仲間の会話は多種多様で、場合によっては武器などの特別なアイテムが貰えるためできるだけ多く聞きたいし、掲示板に書かれたサブクエストをこなすのも面白いしで、いい感じに悩ませてくれます。

しかし、サブクエストはひとつクリアすると一日が終了するという仕様のため、どんなに時間がかかってもひとつにつき1日で終わってしまい、会話イベントもある程度の数で打ち止めになり、そもそも選択できなくなってしまいます。

さらに、マインドダンジョンに関しては、そもそも経験値がなければレベルアップできないため、日数を節約しようとすると、経験値を貯めるだけためてから最後に一回行ってしまえばOK。

そうなると、残り日数のうち半分程度を消化した時点で、完全にやることがなくなってしまいます。

残り半分は、ひたすら起きて寝るを繰り返すしかなく、システムとして機能していません。

これも演出としては盛り上がる場面だったので、もったいない!

せめてもう少しイベントの数を増やしたり、1日の行動時間を制限したりといったことがあれば……

■まとめ

……と、こんな調子で、本作は、非常に多くの問題点を抱えています。

しかし、全体的に惜しいというか、もう少し詰めれば面白くなりそうなのに!というような感じがするんですよね。

演出や、シナリオ、BGM等は非常に魅力的で、システム面についても、アイデア自体は独創的で、唯一無二の作品になっています。

本作の世間での評判については、もともと賛否両論分かれそうなクセの強いコンセプトの作品だったところに、上記の様々な不具合が噛み合った結果のものだと思います。

ですが、自分がプレイした限り、進行不能になるような不具合は無く、幸か不幸かLPスローのおかげもあって難しいところもなく最後までプレイすることが可能です。

唯一気をつけたいのは、たまにフリーズすることがあるので、こまめにセーブはしたほうが良いですね。
30時間遊んだうち、3回くらいフリーズしました。
(掲示板で1回、5章のオープニングで1回、終盤のボス戦で1回)

PC版ではひと足早くバージョンアップがされて内容が変わっているようなので、今から遊ぶ方はPCでプレイするか、Switch版のアプデを待ったほうがいいかも知れませんね。

ちなみに、今回なぜオススメするスタイルで書いたのかというと、自分がこのゲームを遊ぶかどうかかなり迷ったからです。

結果、自分は遊んで良かったと思います。

もし迷っているという方がいれば、上記の欠点に目を潰れるのであれば遊んでみて下さい。

それでは。

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