【MTGA】最近のヒストリックブロールについて考える 23/08
こんにちは、ぱいそんです。
パイオニアEDHの調整のため、似たカードプールのヒストリックブロールを3か月で1500戦ほどやり込んだので戦略解説でも。
研究の結果生まれた高勝率なデッキも紹介します。
ヒストリックブロールとは
ヒストリックブロール(以下ヒスブロ)とはMTGAに実装されているヒストリック(全カード)のカードプールでの1v1の統率者戦。ライフは25点。
禁止カード 2023/08/01時点
裏切りの工作員/Agent of Treachery
虚空の杯/Chalice of the Void
チャネル/Channel
悪魔の教示者/Demonic Tutor
ドラニスの判事/Drannith Magistrate
死者の原野/Field of the Dead
ギデオンの介入/Gideon's Intervention
呪文追い、ルーツリー/Lutri, the Spellchaser
翻弄する魔道士/Meddling Mage
自然の秩序/Natural Order
運命のきずな/Nexus of Fate
王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns
ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker
真髄の針/Pithing Needle
ルーンの光輪/Runed Halo
魔術遠眼鏡/Sorcerous Spyglass
汚れた契約/Tainted Pact
精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon
筆者の私見では《裏切りの工作員》と《虚空の杯》は釈放し、《敏捷なこそ泥、ラガバン》《告別》《一つの指輪》《書庫の鍵》を禁止すべきである。
ヘルキューについて
ヒスブロには「通常マッチング」と「ヘルキュー」の2種類のマッチング帯が存在している。Hell queue(地獄の待機列)は強過ぎる統率者専用のマッチング帯だ。強過ぎる(とウィザーズに思われている)統率者は禁止に変わる措置として、ヘルキューに隔離される。
ヘルキューに代表されるのは《遵法長、バラル》《ドミナリアの英雄、テフェリー》《眷者の神童、キナン》等。最近では《敏捷なこそ泥、ラガバン》が追加された。「ラガバンにしか当たらねぇ」というプレイヤーは自分の統率者もヘルキューに送られている。私は通常マッチングの住人だが、6月初旬に《敏捷なこそ泥、ラガバン》と《時計技師、ルスコ》がヘルキューに送られて以降一度も対戦していない。
海外のサイトに掲載されていたヘルキュー統率者をリストアップした。私はヘルキュープレイヤーではないのでリストの正確さは保証できない。こいつもヘルキューという情報があれはコメントで教えて下さい。
仮釈放もあり、例えばサイドボードに掲載された統率者は昔はヘルキューに送られていたが最近通常マッチングでの生息を確認した。《時計技師、ルスコ》のように釈放された後に再逮捕された統率者もいる。また、同じ統率者でもデッキの中身次第で通常とヘルキューに振り分けられる統率者もいる。
通常マッチングとヘルキューでは対戦する統率者のプールに大きな差があるので一度に語るのは難しい。今回は基本的に通常マッチング環境について考察する。
メタゲーム
ヒストリックブロールの統計で最もサンプル数が多く、信用できるのはMTGAssistantで集計されるAETHERHHUBの統計だ。
MTGAssistantを導入する事で平均勝率も表示されていたので紹介する。8月の変更で表示されなくなったので情報は7/1時点のものを掲載する。
Metagame 2023/07/01
2023/7月初旬(指輪物語発売後)通常マッチング環境における使用率Top5は
偉大なる統一者、アトラクサ 平均勝率:63%
原初の征服者、エターリ 59%
法務官の声、アトラクサ 56%
初祖スリヴァー 57%
報奨の祝賀者、イモーティ 57%
※遅筆な間にエターリとアトラクサの使用率が逆転した。8月初旬には5.2%と圧倒的な使用率でエターリが1位に躍り出た。
自然と対戦回数が多くなるこれらのデッキの戦略を理解して対策をすることで快適なヒスブロライフを送る事ができる。以降の章で傾向と対策を紹介する。
「A-」とは
A-はAlchemyのAである。(過ちのAでもある)
アルケミーの調整を受けたカードはカード名の頭にA-が付く。
A-ミンブ―は1マナ重いのにもかかわらず勝率が59%あるので反省が不足している。
最高勝率の統率者
67% 敏捷なこそ泥、ラガバン (ヘルキュー)
使用率Top48のうち最も平均勝率が高いのは67%のラガバンだ。私自身もヒスブロにおいて最強の統率者がラガバンであることに異論は無い。
ヘルキューにいながら平均勝率67%は高すぎるように思えるのでラガバンを使用して検証したところ、以下の事が判明した。
・マッチングの大半がラガバンミラー
・ミラーでない場合、ほとんどの相手は初手に投了
ほとんどの相手がラガバンとの対戦を拒否するので勝手に勝率が上がる仕組みだった。
ヘルキューの中でも一部の統率者はミラーが発生しやすいように調整されており、ラガバンは極めてミラーが発生する頻度が強い。聞くところによると、昨今のラガバンは対ミラーに全力過ぎて通常デッキ相手に弱くなっているが、どうせ初手に降参されるので問題ないらしい。
65% 骨齧り (通常キュー)
なんと通常マッチングにおける勝率1位は《骨齧り》。全体でも2位だ。ラガバンはヘルキューの住人で実質禁止な事を考えると《骨齧り》がヒスブロ最強統率者と言っても過言ではない。
ゲームプランはシンプルで《ネズミの群生》を並べて畏怖を付けて殴るだけである。
皮肉なことラガバン以外のどんなデッキよりも《ネズミの群生》&《沼》のほうがパフォーマンスが高い。レアワイルドカード1枚で3回に2回勝てるデッキが組めるのでミッドナイトマジックの消化におすすめ。
通常マッチング5大統率者を理解する
通常マッチングにおける最頻出の統率者の戦略を紹介する。
原初の征服者、エターリ
7エターリはのゲームプランはシンプルでランプから坊主めくりを仕掛ける。めくれが弱ければ裏返して殴る。
対策もシンプルだが実現させるのは難しい。
故にエターリは勝てるので使用率は高い。
マナ加速をカウンターする
ランプが間に合う前に殴りきる
手札にMVの大きいカードが溜まりがちなので、マナ加速を止めるローキック戦略が有効。最初のマナ加速をカウンターすると心が折れるエターリを沢山見ている。意外に恐竜はメンタルが繊細。ランプをスルーしてエターリをカウンターしようと待ち構えると他のカウンターされない呪文を先に唱えるので注意。
エターリのCIPで強いカードをめくりたい心理から軽量な除去がほとんど採用されない。序盤から大きなクロックを用意してさっさと殴りきってしまうのも有効だ。問題はそんなに都合よく大きなクロックが用意できない事なのだが。
偉大なる統一者、アトラクサ
7マナアトラクサは2種類の戦略を取る
コントロール
ブリンクシナジー
重コントロールはアーティファクトや土地ランプでマナ加速の後に全体除去で一度盤面を流し、更地にアトラクサを着地させる。
ブリンクシナジーはCIPが優秀なクリーチャーを使いながらアトラクサへの時間を稼ぐ。
登場頻度としては「重コントロール」対「ブリンクシナジー」は9:1。相手にするとブリンクシナジーの方が圧倒的に手ごわいと感じるが、全除去→アトラクサの流れがシンプルで構築の難易度が低いのでコントロールの方が人気である。
コントロールサンプル
ブリンクシナジーサンプル
コントロールの対策はシンプルで自分んおクロックを呪禁や破壊不能で守りながら、アトラクサが出てきたターンに退かして殴りきる。
一方でブリンクシナジーの場合は除去をアトラクサが出る前に使わされるケースが多く、アトラクサが出たターンが隙になりにくい。除去もCIPに頼るので《静寂をもたらすもの》のようなCIPを封殺する生物が致命的に刺さる。
法務官の声、アトラクサ
4マナアトラクサの戦略は
スーパーフレンズ
感染
感染はカード不足で強くないので無視して良い。スーパーフレンズとはプレインズウォーカーを並べる戦略で、生物に対する除去が多い相手には相性が良い。
唱えただけで呪文を踏み倒すようなチープさはないので理不尽感は無い。
初祖スリヴァー
ゴロスなどと比べると劣化5Cと言わざるを得ないが実力不足がゆえに通常キューに留まることを許されている。スリヴァーシナジーはメタに多い全除去で壊滅するので採用されず、5Cグッドスタッフであることがほとんどである。
スリヴァーデッキでなければ7/7バニラにオマケがつくだけだ。続唱の都合上カウンターを採用できないので落ち着いて自分のゲームプランを通そう。
報奨の祝賀者、イモーティ
ヒュージな呪文を続唱する。
エターリ同様に手札に重い呪文が溜まるので序盤のマナ加速を止めるローキックが有効だ。続唱の邪魔になるのでエターリ以上に低コストのカードに妨害を採用しづらいので殴りきれてしまう事も多い。
2回目以降は除去らない事も視野に入れよう。7,9マナでイモーティを唱えるのは手札に何もないことが多い。
エターリ、初祖スリヴァー、イモーティに共通してマナ・コストを支払わずに呪文をプレイするので《塔の長官、ボロミア》が致命的に刺さる。7マナアトラクサの全除去にも対抗できるので最もメタに刺さっているカードだ。
メタに有利な戦略を考える
ヒストリックブロールの通常マッチングは
ボードコントロール
ランプ
その他
に三分割される。
その他は広すぎて対策できないので「ボードコントロール」と「ランプ」に有利な戦略を取ることで勝率が向上する。
対ボードコントロール
クリーチャー除去が豊富なボードコントロール相手に有効なのは
除去を弾いてテンポを獲得する
クリーチャー除去の当たらないコンボで勝つ
除去を弾いてテンポを獲得するのは極めて有効だ。最も重要なのは《タイヴァーの抵抗》や《ロランの脱出》といった1マナで呪禁と破壊不能を両方付与できるカード。《剣を鋤に》のような単体追放と全体破壊を両方見れるので《夏の帳》よりも価値が高い。
ボードコントロールはソーサリータイミングの除去が多く、カウンターの採用率が低い。ターンを渡さずに勝てる手段があれば簡単に勝てる。
問題はヒストリックの環境で揃いやすいコンボは多くない事だ。筆者の研究の結果、以下の2コンボは安定感が高い事を確認した。
《感電の反復》+《時間のねじれ》
パイオニアのイゼットフェニックスが使用するテクニックの延長。ボードコントロールに寄った相手は打ち消しの採用枚数が少ないので通りが良い。
次に唱える呪文をコピーする呪文
《感電の反復》
《実例指導》
《双業火》
追加ターン
《アールンドの天啓》
《錬金術師の計略》
《カーンの経時隔離》
《時間のねじれ》
コンボパターンが3x4あり受けが広い。特に《時間のねじれ》が墓地に落ちるので《瞬唱の魔導士》等で何度も使える。危険だが「対象の呪文をコピーする」カードを入れることでコンボのパターンを増やすことも可能だ。
《反転+観点》から《感電の反復》と《時間のねじれ》が揃う上にマナカーブも完璧である。
《一つの指輪》+《パラドックス装置》
一つの指輪が破壊不能で場持ちが良いのであっさり成立する。小テクとしてアリーナではQQと入力すると出せるマナをすべて出せる。知っておけばパラドックス装置で複数回アンタップするコンボも時間切れになる心配がない。
対ランプ
対ランプで重要なのは
ローキック
テンポ勝ち
ランプの優れたマナカーブは
1→3→5→7
1→2→4→7
の2種類であり、いずれも4ターン目にはエターリが出る7マナに到達する。
これらにテンポ勝ちするには後手は3ターン目までに相手を倒しきるクロックを展開した上で、エターリから偶然めくれた除去に対するカードを構える必要がある。
後手から1→2→3のマナカーブをプレイするとこれが不可能になるため、ほとんどの統率者においてエターリのテンポについていくことができずに負けてしまう。
ではどうすれば良いのか?
筆者が出した結論は後手の3ターン目までに展開と妨害を同時に行える軽量な統率者を選択する事だ。
メタに有利なデッキ
筆者がヒスブロを研究して「3ターン目までに展開と妨害を同時に行える」と「統率者に除去が当たっても勝てる」いう両方の条件を達成的できる統率者を2つ発見したので紹介する。
《乱動追い、カーザ》
不利:赤単、赤緑アグロ、ハンデス、《サリアとギトラグの怪物》
有利:それ以外
カーザは1マナウィザードを《ラノワールのエルフ》に変換し、ドローとカウンターの択を迫るパーミッションタイプのデッキである。カウンター、コントロール奪取、追加ターンの相手の気持ちを折る3段構えが得意で《遵法長、バラル》とプレイパターンが似ている。筆者はカーザの方が圧倒的に強いと考えている。
1T: 1マナウィザード
2T: カーザ
3T: 1マナウィザード+5マナ3ドロー
の美しいマナカーブが強力。統率者領域に2マナで2マナ以上を生み出すマナクリが置いてあると考えれば強力さが分るだろう。
ミッドレンジ以降のゲームレンジでは最強格で5大統率者すべてに超有利だ。コントロール相手にプレインズウォーカーでマウントを取られても《集団強制》1枚で返せる。
赤緑アグロのような愚直でクロックが早いデッキ、黒いハンデスデッキ相手に不利だが5大統率者がこれらの天敵を食い殺している。赤単が最もつらいマッチアップだが、全ての赤単がラガバンの下位互換ゆえにラガバンしか使用されないので隔離マッチによって当たる事が無い。
いくつかのデッキを試した中で最も高い勝率をマークした。土地を切り詰めたデッキでありながら1~3ターン目までにアンタップインの2色を要求するので色事故率が高く、マリガン死が一番の敗因である。通常キューにおいて最も苦手な統率者は《サリアとギトラグの怪物》。
《運命に導かれし者、ケイリクス》
不利:除去コン、《巨大猿、コグラ》
有利:それ以外
ケイリクスは緑白で1マナのマナ加速が多く、
1T: マナクリ
2T: ケイリクス
の黄金ムーブが安定する。《アヴァシンの巡礼者》分1マナクリが多く、《金のガチョウ》はマナを出したあとにエンチャントの貼り先になる。
クロックは最速クラスでランプ系のデッキが統率者を出す前に倒せる。クリーチャーをオーラで強化するデッキな都合上、除去の多いコントロールは苦手。5大統率者でいえばアトラクサに不利でそれ以外には圧倒的に有利である。
本リストは他のリストと比べ、勝負できないゲームレンジの重いカードを抜き、除去を弾くカードとCIPを封じるカードをかなりの枚数採用する事で勝率が平均58%と比べて大幅に改善した。
《天上の鎧》がこのデッキのキーカード。先制攻撃のダメージステップ中にコピーされるので通常のダメージをコピーが通せる。
なぜこれらの統率者はメタに有利なのか
カーザ、ケイリクス共にどちらも200戦以上戦った上で勝率75%に近い。先行超有利なヒスブロにおいて後手からも半分近く勝つ戦績を残すのはかなり強力だ。
この両統率者に共通するのは
1,2,3ターン目に必ずアクションを取る
統率者への除去が敗因になりにくい
1マナアクションでスタートする序盤の再現性の高さが高勝率をマークする秘訣である。(その意味でラガバンは最高の統率者だ)必ず1ターン目にアクションのあるハンドをキープするために、トリプルマリガンまで許容する積極的なマリガンを行う。(1回フリーなので2枚戻し)
カーザもケイリクスも戦略の補助に過ぎず、統率者への依存度が低いので除去されても立て直しが効く。カーザの場合は統率者はマナ加速でしかなく、相手が除去にマナを使って展開が遅れれば土地を並べてコンボを決めることができる。ケイリクスの場合は《上級建設官、スラム》《収穫の手、サイシス》《皇の声、軽脚》《コーの精霊の踊り手》《セテッサの勇者》等「オーラ―を貼って殴る」戦略を取れる他のクリーチャーが多数デッキの中に存在している。「統率者がデッキの中にたくさんいる」状態なためケイリクスへの負担が少ない。
同様の条件の統率者が開拓できればかなり高勝率をマークできるだろう。
新アンソロジー
7/19~ ヒストリックとエクスプローラーに新たなアンソロジーセットが追加された。《摩滅したパワーストーン》の追加が最大の収穫だ。エターリとアトラクサが1ターン早く出るようになった。
まとめ
繰り返しになるがヒスブロにおける強い統率者の条件は順番に
1~3マナで序盤の動きが安定させながらマナを踏み倒している統率者
唱えたターンに仕事をする統率者
である。「出したターンには何もしないが次のターンに強い動きをする統率者」は複数回の除去によるテンポ損に耐える事が難しく、人気は高いが勝率は低い。
続唱や呪文を踏み倒す統率者は簡単で強いので人気だが、それらに有利なデッキは存在しているので皆も研究して発表してほしい。
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