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上手な責任転嫁のススメ。がんばれない自分を責めないためのコツ。 by夏生さえり

「雨の日だけど、ピクニックに行きたい」なんて荒唐無稽なことを言う人はいない。なにを急に? と思ったかもしれないが、ちょっと一緒に考えてほしい。雨の日ピクニック。ふむ。映画に出てくる、ワガママで突拍子もないことをしては周囲を振り回し、ん”ん”ん”超迷惑…だが…そこがキュ〜〜〜ト!!!!!という主人公ならわからないが、普通の人は、まあしないだろう。雨の日にピクニックを決行することが、どれだけ無理難題かは誰にとっても明白だし、なにより、なんとかピクニックを決行したところで晴れの日と同じようには楽しめない。雨を「自然の恵み」と言って受け入れそうなヨギー極み男子・片岡鶴太郎さんとて無理。しょうがないとしぶしぶながらも、「ピクニックは晴れの日まで待つとして、今日は雨でもできることをしよう」と思うだろう。

なのに。
「元気がありませんが、元気な日と同じだけがんばりたいです!」という人はたくさんいる。しかも、がんばれないと自己嫌悪までしちゃうらしい。

雨の日にピクニック、は、オカシイと気付けるのに
元気がない日にがんばる、は、オカシイとは思わないらしい。


「 “雨の日”と“元気がない”は別でしょう? だって雨はコントロール不能なもので、“元気がない”は自分自身のことだからコントロール可能なのだし」と思うだろうか。もしかしたら自己啓発本なんかでは、「自分のメンタルはいかなる場合も自分でコントロールせよ」って書かれているのかもしれないが、そんなのメンタルマッチョな人だけ真に受ければいい。わたしのメンタルはぷよぷよソフトなのでね。


雨はコントロール不能なもので、“元気がない”は自分自身のことだからコントロール可能? わたしは、そうは思わない。

一度、元気がなくなってしまったら、もうそれは天気と一緒じゃないか? 無理なものは無理。お手上げ降参、全面降伏。自分の機嫌は自分でとれるが、元気がないのは「気分の問題」ではない。

生理を例にとると、わかりやすい。
わたしは中学生の時から生理が重く、生理前のPMSもそれはそれは悲惨だった。生理になる前の10日程度、世界はダークネスワールドと化す。関わる人は全員わたしのことが嫌いだ(と思ってしまう)し、ひとつの失敗は二度と取り戻せない(ような気持ちになる)。ノンストップ落ち込み、エンドレス憂鬱、時々イライラ。がんばりたい気持ちを可視化できたら、たぶん10点満点中9.8点をマークするほどに意欲だけはあるのに、できない。「気持ちの問題」「気合が足りない」なんて嘘。そもそもその気持ち自体がバグ状態なんだから。

……こんなのもはや逃げようのない嵐。天気と同じ。
しかも時間が経てばすっかり晴れやかになるところなんかも、天気そっくり。

当然、生理だけじゃない。理由のわからない「不調」はちょこちょこ訪れる。たぶん、わたしたちは身体の中にちいさな天気を持っているようなものなんだろう。自分ではどうにもならないアンコントローラブルな領域というか。もちろん、事前に不調を防ぐための行動……たとえば普段から健康に気をつける、気分転換をする、考え方を変える等が全く存在しないとは言わないが、「一度、そうなってしまうと、コントロール不可」とは言えるんじゃないだろうか。

わたしの元には時折「がんばれないとき、どうやってがんばっていますか?」と悩み相談が寄せられるのだが、そのたびにちょっとだけ切なくなる。たぶん、真面目で、健気で、責任感が強くて、協調性がある超魅力的ガールほど、「がんばらないと」と思ってしまうんだろう。誰から言われるわけでなくても、自分への叱咤激励だけは鳴り止まず、フレフレわたし! を24時間営業で続けてしまう。病めるときも、健やかなるときも、フレフレわたしってね。

言わせてくれよ、
病めるときはヤメるほうがいいんでないか??

そのうえ、「元気がない日に、がんばれない=自己嫌悪」の数式??
ホーリーシット、ちょっと落ち着こうよガールズ。



とか言いつつも。

じつは、わたしは引きこもりになったことがある。がんばれないのにがんばろうとして、でもやっぱりがんばれなくて、そんな自分が嫌で「大丈夫。わたしは元気。まだやれる、まだやれる」とブツブツ唱えながら弱火に燃料ばかりをバカスカ放り込みつづけていた。すると、ちいさな火に薪をくべすぎると消えてしまうのと同じく、やがて心の元気はゼロになった。それでもなお、「わたしはがんばりたい。がんばれないなんて、ありえない」と思った。「こんなわたしなんて、嫌い」とも。

だから、“がんばれないのは、自分が悪い”という思考回路は、わたしにとって元カレのように身近で、且つ前世の記憶のように遠い存在として、とても理解している。

あの頃は、とにかく「ありのままの自分」を受け入れられなかった。みんなみたいにがんばれないことも、周りのペースと違うことも許せなくて、「欠点まみれの人間として生まれた」という思い込みを振り払おうと、理想としている自分に向かって朦朧と走り続けていたんだと思う。

「がんばれないときだってあるよね」と、ありのままに見つめて認められたら、引きこもるほど落ち込まずに済んだだろう。自分の取り扱いを間違えず、「エネルギー不足なら、ゆっくり行こう」と、いい意味で諦めていたら、あれほど悪化しなかっただろう。真面目すぎた、かつてのわたし。

8年が経って、当時のことをもはや愛おしいとさえ思えるようになり、今では1000%元気&ヘルシーになった。自分で言うのもなんだけれど、朗らかなほうだと思うし、ゲラゲラ笑って生きている。何かに悩みはじめると神経質な面が顔をのぞかせることもままあるが、友人には「大雑把」だと評されるし、事実だいたいのことは気にならない。なんか、どうでもよくなっちゃったのである。理想の自分でいようとか、そういうやつ、ぜんぶ。

とはいえ晴れやすくなっただけで、雨も降る。
ひとつのことでクヨクヨしたり、イライラしたり、意欲とは裏腹にがんばれなくてため息をつく日もある。けれど自分を必要以上に嫌いになることはない。

なんでもかんでも自分のせい、にするのをやめて、ちょっと、冷静になることにしたから。ヘイ、がんばりたいのにがんばれないのって本当にわたしのせいなわけ? ってな具合に。

がんばれない=わたしが悪い と刷り込まれていた数式を一度捨てて、
がんばれない=「?」が悪い と、原因を「?」のせいにしてみよう、と。

だってわたし、がんばろうとしてるもん。それでもがんばれないのは、きっと何かが悪いのだ。そうして見つめるうちに、がんばれない日は、こんな「せい」があるとわかってきたのだ。

わたしががんばれないのは……

その1. もしかしたら、お腹が空いているせいかも。
(お腹が空くと、悲観的になってがんばれないのはわたしの特徴らしい)

その2. もしかしたら、寝不足のせいかも。
(眠りはすべてを制す。眠れていないと元気をなくす)

その3. 最近お肉を食べていないせいかも。
(肉を適度に食べると調子がいい気がする)

その4. 疲れがとれていないせいかも。
(お風呂に長く入ったり、休暇をもらったりするのもいいよね)

その5. 生理前のせいかも。
(生理周期を把握しておく。これは一番わかりやすくて、むしろホッとする)

その6. 低気圧のせいかもしれない
(気分がアガらないときはいつも低気圧。がんばれないとTwitterを開き「頭痛ーる」というアカウントを見て、答え合わせをする)

その7. 季節の変わり目のせいかも……
(「さえりは、これまでの傾向的に季節の変わり目に落ち込みやすいね」と長年の友人に言われて初めて気づいた)

その8. 1~7まで全部違うなら……星回りが悪いせいかも!
(今日の運勢は最下位だったのかもね!的に、天体のせいにする)

この「原因リスト」の中にはなかったが、サプリメント「Revol」のメッセージによって「もしかしたら身体のせい、貧血かもしれない」を得た。そうか、そのせいもあったのかもしれない。原因として思い当たるものが増えれば増えるほど、むやみに「自分のせいだ」と思い込む機会は減っていく。


こうしてリストアップして、解決できそうなことには取り組んで、解決できないことは雨のように取り扱う。

たとえば「空腹」「寝不足」はすぐにでも解決できることだし、「貧血」は、サプリが解決してくれる時代になった。むずかしくないことならすぐに取り組んでみて、もしそのどれもが違いそうであれば、「生理前」や「低気圧」、「星回りのせい」なんかを考える。そうして「じゃあ仕方がない。過ぎるまで待とう」と判断したら、もう無理に元気になろうとしない。雨が止むのを、最低限の快適さを作りながら、待つだけだ。

何かのせいにすることで、免罪符を手にして、自己嫌悪を回避する。
「そんなの……無責任では……」と思ってしまった真面目な人こそ、きっと何かのせいにするくらいでちょうどいい。それで正しく休めるなら、自分を責めずにいられるなら、声を大にして何度でも言い続けたい。

がんばれないのは、あなたのせいじゃないよ〜〜〜〜〜〜!!!って。


……世界には、自分でなんとかできるものと、自分ではどうにもできないものがある。容易に乗りこなせない予想のできない日々のアップダウンを、できるだけ軽やかに乗り越えていくためには、抗うより見つめること、正しく見て、受け入れ、受け流すことが大事なのではないか。


真面目でがんばりやさんで、正義感が強く、自分を責めやすいガールズたち。
正しく自分を知ろう。そうして一緒に、バリバリ責任転嫁していこうぜ。
それがなにより、がんばれる自分になるための近道だと思うから。

Written by 夏生さえり
Edited by はつこ
illustrated by aka

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