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ゴスペラーズ『Beginning』から着想した掌編


クリスマスが終わると、途端に街が静かになる。

本当は、年末商戦だ正月の準備だなんだってことで引き続き賑わってはいるのだろうけれど。
ショッピングモールのエントランスが、派手に飾られたクリスマスツリーからぴしっと引き締まった門松に変わると、なんとなく「そこまで浮かれていられない」という気持ちにさせられる。

混雑している場所が苦手な僕と彼女は年末年始の買い物を早目に済ませ、ある種引きこもるように部屋で過ごしていた。

年越し蕎麦をすすりながら大晦日の特番をなんとなく流すけれど、時折気になって手が止まってしまう。

「年越し蕎麦って年が明ける前に食べきらなきゃダメらしいよ」

「そうなの?」

思わず、器に残っていた蕎麦をかき込む。

「今年もいろいろあったね」

「その節はすいませんでした」

「これからも気をつけないとね」

「だね、突然いなくなっちゃうなんてこともあるかもしれないし」

「…そんなこと言わないで」

不意に彼女が、僕の手を握った。

「考えちゃうんだ。
一緒にお花見したり、海に行ったり、キャンプしたり、遊園地行ったり、クリスマスを過ごしたり、こうやって一緒に年を越せるのも、あと何回ずつあるんだろうなって」

その瞳が震えていたから、僕は強く手を握り返した。

何度でもこの時を一緒に迎えよう。

そのひとつひとつを大切に。

後悔しないように…いや、どれだけ努力してもしてしまうとわかっているなら、その後悔がなるべく小さく小さくなるように。

伝え続けよう。

言葉で象ってしまうには大きすぎる気持ちなら、毎日少しずつでも、できるだけ伝えられるように。


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ゴスペラーズ
Beginning


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12月、全然思いつかなくてやっと書けた〜。

取り急ぎ、良いお年を!

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