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「経済合理的な移住〜藻谷ゆかり『コロナ移住のすすめ』 / 自分と地域に向き合う移住 (9月29日)」

■経済合理的な移住〜藻谷ゆかり『コロナ移住のすすめ 2020年代の人生設計』

「都会で60歳まで『メンバーシップ型』で働き、高い住宅費や生活費を支払う」場合と、「地方で『ジョブ型』の働き方を選択し、生活費を削減しながら80歳まで働く」場合と、どちらが生涯可処分所得が高くなるか、自分はどちらを選択したいかを考えてみてほしい」p37
「2019年度の首都圏の新築マンション購入の平均価格は6055万円とのことだが、これは都会で共働きをして可能になる購入額である。しかしこれだけの金額を都会で不動産に投資するならば、地方ではその半分くらいの金額で事業と家を買うことも可能である。実際に石坂大輔さんは、老舗旅館を約400万円で取得し、約2000万円で、カフェを新設し水回りをリノベーションした。このように都会に比べて、地方では不動産投資の資本効率が高いのである」p48

藻谷ゆかり『コロナ移住のすすめ 2020年代の人生設計』

 外資でキャリアを積んだ後、長野で家族で移住した著者による移住本。移住の本は体験談が多いですが、分析的で客観的な筆致が心地良いですね。

 「ジョブ型」または「複業」での生き方を求める人。また、不動産投資や事業投資を個人で行おうとしている人にとって、地方移住は選択肢に入るのでは、と語られています。

 地方は人口減少が進んでいるため、新たな事業参入が起きにくい状況があります。こうした経済局面では、需要の緩やかな減少以上に、供給がぐっと減りますから、事業を丁寧に見極めれば、実は経済的な勝機があります。しかも地域と関係をもつと、投資価値の高い物件があったり、様々な補助制度があるために投資効率を高めることもできます。こうした視点でも、地方移住が語られていく必要があります。

■自分と地域に向き合う移住

いわき出身の大場美奈さんが、地域おこし協力隊を経て、広野町でゲストハウスを設立しようとする様子を、移住支援センターで取材しました。

大場さんは、愛する広野町で「自分は何をして暮らしていきたいのか」徹底的に見つめ直します。答えはやはり、ゲストハウスでした。
「そのときから主語を『地域』でなく『自分』に変えたんです。それまではずっと『地域のためになることをしなきゃ』というプレッシャーを感じていました。そうではなくて、私自身がやりたいことをやるべきなんだと」
「もう出来上がっている地域と違って1度ゼロになった場所だから、元に戻そうとか新しいものをつくろうとか、いろいろな波があります。その中に入って自ら新しい波を起こすこともできるし、それを見守りながら共存する道もある。そこがこの地域の面白さだと思いますが、逆に自分のペースを持たないと振り回されてしまうかも」

「地域のため」と「人のため」を繰り返しながら、少しずつ想いを形にしていく様子が力強く感じます。「すこしでも福島を応援したい」という想いでこの地域に来られる方は少なくありません。ただ、長続きする方の特徴は「自分の楽しみ」を持ち合わせていること。想いが強い人ほど、自分が何に喜ぶかも時々振り返って頂ければと思います。

 大場さんのゲストハウスの名前は「月とみかん」。来春オープンとのことです。

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