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MAGICAL RENDA STADIUM BGAメイキング

2022年秋に開催されたBOF:ET参加作のBGAメイキングです。

制作の動機

MadeonのHypermaniaのライブをみて、ライブ映像のアニメーションを作りたいなーと思ったのがきっかけです。

DJライブの映像をいくつか見ていると、ディスプレイのドットに照らされた人物はドット絵のようであると気が付きます。

Alan Walker - LIVE @ Parookaville Festival (2019)より

ピクセルアート背景に興味があったこともあり、ピクセルアートによるライブ映像は面白いと踏んで、早速ネタ動画(新世界 田中)を作り始めます。

左手に持っているのは芋田楽でありマックポテトではない

そんな最中、ルゼさんからBOF参加の声をかけて頂き、こういう方向性のBGAで良ければということで制作が始まりました。

映像を構成する要素

大きく分けて以下の要素のタイムラインで構成されています。それぞれのタイムラインを作成して、コンポジットしています。

  • ステージ背景(マルチディスプレイ)

  • 宙創レン(ドット絵キャラクター)

  • レーザー&ライト

  • 観客

それぞれの要素について見ていきます。

ステージ背景(マルチディスプレイ)

ステージ背景の決定には最も時間がかかっています。ステージのレイアウトとカメラ構成で制作可能な全体構成が変わってくるからです。制作途中で後戻りは難しいため、決めること自体をビビっています。諦めて決めましょう。

レイアウトイメージの試行錯誤の過程

自分でも何を描いたのか分からない
ライトか?
ディスプレイの滲み効果のテストと思われる
最終イメージに近くなった

レイアウトはblenderにより試行錯誤を重ねて決定しています。

大きさ、位置関係を正確に表現するため3Dで制作

blenderからレンダリングした画像をガイドにAfter Effects上でオブジェクト(レイヤー)の配置を行っています。DJセットはカメラの引き、寄りの2パターンをレンダリング画像よりドットを打ち直して使用しています。

引きのカメラ用のDJセット
寄りのカメラ用
作中では容赦なく潰しているが割と描き込んでいる

マルチディスプレイ演出は往年の名作「v/er」をイメージしています。

マルチディスプレイは固定カメラのまま2:30の尺を構成するための必須要素です。ディスプレイ投影用の映像素材は殆どpatchworkを使用させて頂きました。

16個のサブディスプレイとメインディスプレイ

ディスプレイは以下の3つの表示モードを切り替えて表示できるようにAfterEffectsのコンポジションを組んでいます。

  • 同じ映像ソースを全ディスプレイにそれぞれ表示

連打前
  • 全てのディスプレイを結合して表示

ビーム前
  • ディスプレイを個別に制御して表示

ピコピコのとこ

まずディスプレイに流す映像ソースのコンポジションを作成しておき、そのレイアウト用コンポジションは別途作成しておくという仕組みです。

こんなかんじ

01. 映像ソース用のコンポジション

パート単位で分割して作成
映像ソースの例
これは縦連打ビームである

02. 映像ソースのタイムライン配置用コンポション

メインディスプレイにのみ投影する要素があるためメイン用とサブ用に分けている
ヒットマークはメインディスプレイ用コンポジションのみ表示
スプラトゥーンのエフェクトを意識している
このように配置用コンポジションには「01.映像ソース」のコンポジションを並べてある
DisplaySoueceXXXのコンポジションはさらに個別ディスプレイ用コンポジションに流し込まれる
個別に別の映像ソースを表示出来る仕組みにしたが使わなかった

03a. 同じ映像ソースを全ディスプレイにそれぞれ表示するコンポジション

ひたすらに各ディスプレイのコンポジションを並べる
blenderで作成したガイド画像に沿って並べたレイヤー

03b. 全てのディスプレイを結合して表示するコンポジション

表示する映像ソースはメインディスプレイ用のみ
03aのコンポジション(layout01)をトラックマットに指定して切り抜いている
切り抜き前
切り抜き後
全ディスプレイが連結されているように見える

03c. ディスプレイを個別に制御して表示するコンポジション
※03aと同じコンポジション

個別表示制御はキーフレームを打ちまくることになるので地獄となる

宙創レン(ドット絵キャラクター)

DJを行うメインキャラクターが必要だが何かないかと代打三兄弟で相談したところ、ルゼさんより「俺(V)」と圧倒的解決策を頂き決定しました。

ドット絵のデザインはtutidamaさんより頂きました。

1時間くらいで描いてくれた

ドット絵アニメは殆どPixelOverで作成しています。セール時1000円くらいです。まだアーリーアクセスのソフトウェアですが、頻繁にアップデートがされています。

PixelOverのボーンアニメ用に体の要素をバラバラにします。元デザインには描かれていない箇所も補完します。使用する手のパターンは予め仕込んでおきます。

性癖によってバラバラにされたわけではない

ボーンを設定してアニメーション作成します。

スケールのアニメが隠し味

細部はどうしても崩れるので、kritaで修正して仕上げています。

ドット絵も意外と描きやすいkrita
できあがり
ディスプレイ投影用の大サイズもある

レーザー&ライト

今回の映像の要です。blenderのジオメトリノードを使用したアセットにより作成しています。

レーザー演出は様々なライブ映像を参考にしていますが、特に下記の映像を参考にさせてもらいました。このクオリティで2時間近く展開するのはすごすぎる。

blender上で思うようにレーザーの動きを制御できなかったため、基本的な動作だけblenderで作成して、After Effectsのタイムリマップで調整する形を取っています。blenderから多目に枚数を出力するのがポイントです。

また、スモークはblenderでいい動きを作れなかったため手描きで作成しました。

無駄に22枚描いている

観客

観客はロトスコープにより作成しています。自分自身を撮影してトレースです。

BGA作者は演技力も要求される
楽しいか?と問われれば楽しい

ピクセルアートな絵作りに対して、演出は実現可能なリアルなものを目指したため、観客アニメとしてはかなり多いパターンと枚数を用意しています。

たくさんある
並べてしまった図
状況によって使い分けるため、観客を並べたコンポジションを10種類用意してある

ルゼさんのアイデアにより、連打モーションのオタ芸は後から追加されました。

紛れもない一体感

ディスプレイエフェクト

格子状のグリッドを被せることでディスプレイのドット感を表現しています。

ディスプレイへの寄り具合により5種類のグリッドを使い分けている

エフェクトを適用したレイヤーを重ね合わせることでディスプレイ感を出しています。適用エフェクト自体は大体標準のものです。

全般的にむらしんさんのDotResizerで拡大してピクセルアート感を出している
ディスプレイエフェクト適用前
ディスプレイエフェクト適用後

コンポジット

上流の映像ソースを変更したとき、自動的にエフェクトがかかって最終出力される構造を意識しています。ライトによる全体的な色調整は全体のコンポジット時に行っています。

大体こんな感じ

カメラポジション別にコンポジションを作成してあるので、最終出力でどのカメラポジションで出力するかタイムラインで切り替えられるようになっています。

実際に使用したカメラ位置(基本ポジション)
アップポジション
表示するコンポジションを切り替えることで簡単にカメラ位置を切り替えられる

最後に


またお会いしましょう


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