笑うバロック展(78) バルバラの反ドレミの歌

予告しておこう。バルバラ・ストロツィの名曲は「ラメント」です。ストロツィを筆頭にバロック音楽の「ラメント」も押さえておきましょう。「アジタ」と「テンペ」の続き。
「ラメント」の1曲が「ラグリメ」です。「涙」のルネサンスからバロックへの変遷は面白そうです。ダウランドがサントコロンブに。ジョスカンの「悲しみ」がストロツィに。間にモンテベルディが。シュッツの「涙と共に種まく人は」もはいるかな。

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今回はテーマが壮大なので、なかなかバロックまで辿り着きませんよ。まずは。
トラップ一家の物語はどこか不穏な手触りがありました。実は今もあまり好きな映画ではありません。

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「ドレミの歌」これも昔から、今一つ好きになれない歌でした。意外と難しく作曲されているので、さもありなん、らしい。

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ところでそもそも「ドレミ」って、ウディ・ガスリーの歌ではお金の意味ですが、それはさておき、起源は----。中世の賛歌の中の「聖ヨハネ賛歌」に遡ります。

ラテン語
Ut queant laxis
Resonare fibris
Mira gestorum
Famuli tuorum
Solve polluti
Labii reatum
Sancte Iohannes
(大意)
あなたの僕(しもべ)が
声をあげて
あなたの行いの奇跡を
響かせることができるように
私たちのけがれた唇から
罪を拭い去ってください
聖ヨハネ様。

この「聖ヨハネ賛歌」の各節の頭をとって----。

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ウィキ検索によると、

第1節から第6節まで、その節の最初の音はそれぞれC - D - E - F - G - Aの音になっている。このことからグイド・ダレッツォはこの歌詞の初めの文字を階名として使用しようと考え、第1節から第6節までの歌詞を利用して"Ut - Re - Mi - Fa - Sol - La"の階名を発明した。
この聖歌の旋律は、音階を覚えやすくするためにグイドが作曲したとする説もある。
音名が7つあるのに対して階名は6つしか無かったため、音域によって読み替えをする必要があったが、後に第7節の2つの語から"Si"が付け加えられた。また、"Ut"は発音が容易な"Do"になった。
これにより、現在の階名「ドレミファソラシ」が成立した。

そして、「ドレミ」は本当に旋律としての「ドレミファソラシド」になります。教育用とはいえ、みなが耳なじみができ、当然パロディもつくられます。
パレストリーナにはミサ曲「ドレミファソラ」なる曲があります。ルネサンス時代の器楽合奏曲には「ドレミファソラ」という曲が結構あります。
そのサンクトゥスの冒頭。わかりやすいですね。最初の上向音階というわけです。ジョスカンには「ラソファレミ」がありますが、やはりパレストリーナは王道ですな。

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さて、ではわれらがバルバラ・ストロツィ女史は何と歌うか。
「ラソファミレド」と下降します。どうもこれがイタリア語で「一晩だけ」と洒落て聞こえるみたいです、きっと。それで何とか口説き落とそうとするのだけれど、別な男にかっさらわれる、言い寄る男みなにあなただけと誘って、おバカな男は骨折り損するだけ。
これだと、当時の貧乏貴族と高級娼婦の駆け引きのように聞こえなくはありません。
「ドレミファソラ」が陰影濃い前の時代を表し、「ラソファミレド」が艶っぽい新しい時代を表す、といえなくもないかしら。
譜例を探したけれど見つからず。

La mia donna (La sol, fa, mi, re, do) – Barbara Strozzi

この話題のサゲとしてちょうどよい歌を発見。

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