笑うバロック展(393) レジェンド探索 特別ゲスト「ひび割れた骨董の壺」その2
ハッピイバースデイ、83歳の時に真似できるか!?わたしはそんなに長生きできません。
ホロビッツのモーツァルトの協奏曲セッションの録画。
1987年にミラノで。当時ホロビッツは83歳らしい。
意外とあっさり弾いています。何よりユーモア溢れる映像と演奏。
以前何かで読みましたが、レコード録音初期の時代、若き日のカザルス。例えば協奏曲を録音してもカザルスはライブと同様1回しか弾かない、ライブと同じなのでミスもでる、録音が編集によって傷が修正された記録になると理解されていませんでした。それどころか傷のない演奏に価値を見出していなかったという。ですから部分的な撮り直しのために、マエストロあなたが間違えた部分をもう一度演奏してください、と誰も言えず、やむを得ず録音技師が自分のミスのために部分的に再演奏してほしい、と訴えたというエピソード。
ホロビッツはそんなことはわかっています。第2楽章の録音チェックを聴きながら「好い」を連発し最後は「完璧」と指揮者と握手。セッションなのでオケ伴のところでも体を動かしながら指揮者を真似たり。第3楽章でミスした時の凍るような表情。そして弾き切った時の雄叫び。
ミス修正ができるために、ミスのない完璧な演奏が求められ、それを本当にこなしてきた本当の「ビルトーゾ」です。75歳のラフマニノフのニ短調協奏曲の映像より厳しい試練だったと思います。誰が何と言おうと敬服の至り。
16歳でキエフの音楽院を卒業するときにはラフマニノフの件の協奏曲を弾いたらしい、ラフマニノフよりはモーツァルトの方がきっと簡単に違いない、ピアノという機械化された楽器は歳をとっても演奏しやすいだろう、何しろそれだけを訓練して83歳まで食べてきたのだから、ラフマニノフより小柄とはいえそもそも体力が違う、と様々に思っても----自分自身のこととして、その時本当にホロビッツの真似をする気力が出るだろうか?
そうやって観聴きしていているうち、このホロビッツ83歳のモーツァルトイ長調協奏曲が大変偉大な演奏に感じるようになりました。今活躍する後輩たちの中にホロビッツに表敬する者が多々いるのも肯けます。初来日の騒動だけでずっと気にかけずもったいないことをしました。
三谷幸喜がお芝居にするくらいの夫婦。
左がラフマニノフ。右隣ウオルト・ディズニーは178センチらしい。右端はホロビッツ。
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