笑うバロック展(229) メルド「貼雑年譜」

江戸川乱歩の「貼雑年譜」のごときサイトといつも感心しています。自分としか向き合わないナルシストの面目躍如な収集癖。これが「かつて日本女性の美徳」の「正当な伝統の継承」なのでしょう。収集内容が違うけれど金澤攝氏とも似たものを感じます。

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奏者の青柳いづみこは「ピアノで弾くクラヴシニスト」という一文で答えている。----もともとフランスには、クラヴサン音楽をピアノで弾く伝統がある。というより、そもそもクラヴサン演奏を復活させたのがフランスのピアニストたちだったのだ。----ここには、クラヴサンによる演奏効果を横目で睨みながら、それらしくピアノで弾くという意識は露ほどもない。むしろ、これこそが正当な伝統の継承だという、あえて言えば誇らしさが表に浮かんでいる。(服部幸三)
ヒューイットによるクープラン演奏や、タローのラモー演奏に必ずしも好意的ではなかったわたくしだが、この青柳さんのピアノによる心なごむラモー演奏にはすっかり聴きほれてしまった。----わたくしの思いのなかに、慎み、控えめ、節度、高雅、気品、粋、典雅、繊細、優しさ、奥ゆかしさ、心づかい、などという言葉がいくつもいくつもよぎっていった。かつて日本女性の美徳とされ、しかし今はまったく顧みられず、むしろ軽蔑され忌避されかねないこれらの徳性が、この演奏からにじみ出ているのである。(皆川達夫)


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