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コーヒー店訪問 200年生き抜いた逞しい生産者と渡り合う



仕事帰りに急に思いたってコーヒー店訪問。
知人のFacebookを見せて、同じコーヒーが飲みたいと指差し注文してみました。すぐ理解してくれたけれど、名古屋から来たおのぼりさんと勘違いされました。
応対してくれた若いサービスマンの感じの良さに、感心し最後はつい美味しかったご馳走様と店を出ました。あのコーヒーで独立しようとしているとしたら、ちょっとかわいそう、ですけれど。
誰も教えてあげる人がいないのでしょう。その店のこだわりは、ほぼ全てお金をだせば凌駕されてしまうものばかりです。
立地優先で設備節約の店をまねぶのは、かわいそう。産地偏重スペシャルティしかしらない、としたらなんとも複雑。
ふと昔フランスで修行した料理人の例え話を想起しました。修行中の料理人が飲めるのはリシャールくらい。その味を覚えて帰国しても、ねえ。
また、ブラジルやコロンビアに住んで生産者のところで飲んだコーヒーはというものも----確かに本場のものだが、輸出が主の換金作物にとっては生産地が必ずしも最高のものとは限らずです。その反省から発展したスペシャルティコーヒーはこの20年で、他とは違う風変りなものを開発しては押し付けるように。
鎮座プロバット12キロかしら。ダクトはビルの谷間1階の壁を通りまで這わせただけ。ライトロースト専門とはいえ。もしかすると1回の焙煎量は上限があるかもしれません。(残念ながらローストまでいかない「ライトロースト」だと感じました)
指差し注文したのは、コスタリカ・ナランホ・シンリミテス・ケニア種の嫌気性発酵を使ったもの。普通のコーヒー好きを翻弄してます。(ナチュラルとか、アナエロビックとか日本人好みのカタカナ言葉なのでしょう)
テイスティングノートの表現。ハズレてはいません。
グレープフルーツ、ブラッドオレンジ。カシスとクランベリーはいまひとつピンときませんが。フレーバー、アシティティ、アフターが9ポイントで強調。
その時のコーヒーはグレープフルーツの皮の渋さの方が目立ち、未熟な柑橘のカタイ酸みが引立ち。冷めてくると後味に微か麻袋の香り。(いずれワインのように欠点の香りがしたら提供しないという時がやってくるのかしら)
胸焼けまではしませんでしたが、多分にあの抽出の仕方による調整が大きいような気がします。
名前にあるケニアの雰囲気を望むと裏切られます。むしろ優良な高地産コスタリカの雰囲気の方が当たっていると思います。が、どうも嫌気性醗酵とやらは産地特性を相殺するような気がします。おしなべてコスタリカは高地産アラビカの量産国から、付加価値のためにあの手この手を繰り出す小ロット実験国に。完成された製品というより、開発途上の珍品先物で競うよう。
ケニアが飲みたければケニアを飲めばよいし、嫌気性醗酵は、コスタリカのハニー製法以来のバリエーションのひとつと考えてみます。
個人的に記憶の中の、あえてワインに例えると、リヨンのブラスリーでポットでたのむ白ワインみたい。マコンだったかしら。この想像だと、早く飲める辛口の普通のものとなり、それがコーヒーだとマグカップ1杯分900円はコスパが悪く感じます。以前から、ワインに例えるのは無理があると感じていました。表現するコーヒー屋さんたちが適切にワインを味わっていないか、表現したワインの質の高い雰囲気に焙煎できていないように感じます。高いワインも飲んだ方がよいですよ、と思いますが、何よりワインの適切な指導者とともに質の良し悪しから、基本的な味わいの表現が共有されるような飲み方をしっかりするべきかと思います。
コーヒーも同様です。十分に火が通っていない生焼けの味を甘いと言ったり、渋い味を強い酸みと言ったり、抜けの悪いこもった風味をスパイシーと言ったり。濃度が濃いのを苦いと言ったり。
1杯飲み干すと胸焼けを起こすようなコーヒーを1杯で飲みごたえのあるスペシャルティと言ったり。設備費用を節約して浅煎りに特化していると言ったり。
しかし、それでも、プイイフュメのようなちょっと個性的な雰囲気を出すコーヒーは飲んだことがあります。素晴らしいコーヒーのひとつはニュイサンジョルジュのようだと感じたこともあります。ただ、この数か月で飲み歩いた中には、残念ながら良好な出会いはありませんでした。コーヒーに関しては安いワインのように感じるものがやけに高価に売られ、1杯飲みきるのに胸焼け必至なものが多かったということです。


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