笑うバロック展(120) レジェンド探索ヴィエール奏者(3)「偉業の」マンデル

たしか1994年にブダペストのフンガロトン・ショップで購入した記憶。
当時は、時代をまたいで何でもあり風な民族楽器であり、古楽的にアプローチが薄く感じました。
古楽は一度断絶したトラッドを復活させる運動、みたいな印象で、民族音楽はそもそもトラッドが連綿と息づいて継続している「断絶なき」分野、みたいな。結果、バロック音楽の領域に収まらない、というような。
そのマンデル氏が「世界初録音のハーディ・ガーディ・シリーズ全4巻」ときました。長いトラッドの時間軸の中からフランスバロックの音楽の「遺産」を取り出して、社会と文化を研究した、「偉業」。育ったものなのか、もともと素養があったのか。素朴な田舎のおっちゃんが、それ自身を装うことが都会の洗練だった時代があったんだってさ、みたいな。
ただ、こうしてみると、「田園風」な楽器群と、ビバルディの取り合わせは不思議に感じます。ビバルディは、メディテラネな洗練の極みだったのかしら。筆写するより新曲を書く方が速く、しかしそれはルーチンにそった職人技で、1曲を100通りに書く、芸術的価値が低く稚拙なと揶揄された(特に日本の学者評者たちに)当時の「流行もの」。

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当時は、そんなにすごい奏者とは思わず。今回検索して驚倒しました。
さすがフンガロトン。スプラフォンと共にいざとなると驚かされます。
笑わずにいらりょうか。こういうのを「偉業」というのです。

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世界初録音のハーディ・ガーディ・シリーズ第4弾
フランス音楽史上最高のミュゼット奏者と謳われたシェドゥヴィルの作品集
ミシェル・コレット(HCD32102)、ドラヴィーニュ(HCD32201)、ジャン&ジャック・オットテール(HCD32334) につづく、ハーディ・ガーディ(手回しオルガン)およびミュゼット(袋に風を送りパイプを鳴らす楽器)のシリーズ第4弾。18世紀の初めにパリ・オペラ座管のオーボエとミュゼット奏者を務めたニコラ・シェドゥヴィル(1705-1782)。かれはみずからミュゼット製作までおこない、当時の記録に「フランスの貴婦人たちのミュゼット教師」と呼ばれ、名家のミュゼット教師として高い人気を得るとともに、ラ・ボルドより「フランス音楽史上最高のミュゼット奏者」とまで絶賛されたほど。全部で30曲からなる作品9は、当時はやっていた、素朴なひなびた様式を試みに取り入れ、タイトルが示すように演奏の難易度もそれぞれが献呈された弟子たちのテクニックに見合ったものとなっており、一世を風靡したこの風変わりな楽器の魅力が詰まっています。(キングインターナショナル)
シェドゥヴィル:こころみ(レ・ドゥフィ)、または音楽愛好家の練習曲~ハーディ・ガーディと数字付低音のための作品集Op.9
ローベルト・マンデル(ハーディ・ガーディ)
パール・ネーメト(バロック・フルート)
アンサンブル・ル・ベルジェ・フォルチュネ
ピロシュカ・ヴィタリウス(バロック・ヴァイオリン)
ゾルターン・セープラキ(リコーダー)
オットー・ナジ(チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ)
アーグネシュ・ヴァーライアイ(ハープシコード)
ガーボル・トコディ(リュート、バロック・ギター)
録音2007年4月フンガロトン・スタジオ

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