熟したオペラハウスと熟しすぎの観客(2014年3月記)

彼岸にコルンゴルトの「死の都」観賞。
この演目のマチネでほぼ満席はこのオペラハウスが成熟してきたことを表していそうです。容積が小さいだの専用オケがないだのと色々いわれましたが、そうはいってもきちっとしたオペラ用舞台が設置されていることは間違いありません。隣の紛らわしいオペラシティ・タケミツホールが最初に話題をさらったせいもあって不遇でしたが、やっとそれなりに。バスチーユよりいい部分もあります。

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今回のセットはノーラン監督の「インセプション」もどきです。妻を亡くした男の妄想が生んだ物語なので、意識したかもしれません。
さて演奏。大変素晴らしいものでした。後半にいくに連れて尻上がりによくなっていきました。これがオペラの醍醐味といわんばかりのテナーとソプラノの競演。ふたりがずっと母音のロングトーンで歌い続けます。コルンゴルトは、きちっとしたグルック、ウエーバー、ワーグナー、マーラー、シュトラウスの子孫でした。こういうとモーツァルトが逆に鬼っ子だったように聴こえてきます。「ウエルテル」もそうでしたが余分な序曲なくいきなり物語に入り込みます。全体に何とも爛れた物語です。
休憩時間に一番の行列はシャンパン。ブブクリコ、ランソンにもう一種、スプマンテ2種、赤白各2種。クランベリージュースと合わせた「死の都」シャンパンカクテルまで豪華ラインナップ。800円から1700円。わたしは、開演前に脇の通りの珈琲館でハムサンドとコーヒーのセットに。
今回、ややマイナー演目のためか常連風のお客様の多さが目立ちました。会場の案内係風の男性陣と話し込むお客様をよく見かけました。もしお客様が固定してきている、としたら、お客様も熟れてきている、そんな感じです。自分の俗物っぽさが際立ちます。あまりいい気分ではないけれどわたしもお仲間に入れていただいて感謝という具合です。
物語は、生身の女性が生身の身体で妻の亡霊に憑りつかれた男を救う展開かしら。殉死するブリュンヒルデのように仁王立ちで歌うソプラノは迫力満点でした。この英雄的ソプラノを聴けただけで価値がありました。

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