笑うバロック展(260)  ガリバー旅行(およびバロックの他の奇妙なビジョン)

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2011年の「東京の春音楽祭」の解説。

ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681-1767)は、後期バロックを代表するドイツの作曲家。生前はJ.S.バッハやヘンデルより高い人気を誇っていた。「ガリバー組曲」は、ジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』の物語に沿って展開される作品で、1728年から翌年にかけて出版された《忠実な音楽の師》(多様な楽器編成による全68作の楽曲集)に収録されている。構成は「序曲(イントラーダ)」「リリパット人(小人国)のシャコンヌ」「ブロブディンナグの巨人のジーグ」「ラピュータ島の住民たちの空想と目を覚まさせる下僕たち」「礼儀正しいフウイヌム人のルールと野人ヤフーの野蛮な踊り」という五つの楽章から成る。

前記の曲目を含む2003年頃のCD。スペイン(おそらく)のボネトが主催するリコーダー2本のトリオ編成が中心のグループ「ラ・フォリア」。ウィリアムスの「鳥の模倣」ソナタ。パーセルの「預言者」シャコンヌ。マレ「膀胱結石手術」「タタールの行進」。バッハのフーガの技法の中から1曲。テレマンの「ガリバー組曲」。クーナウ「ダビデとゴリアテの戦い」。テレマンの「忠実な音楽の師」の中の「悲劇のヒロイン(女性の名前を冠した)」トリオソナタ。

一見、標題キワモノ集のようですが、当時の人々が愛好した文化教養についての知識が求められるともいえます。「四季」のソネットとは違いますな。言葉で伝えられる文学が図像として描かれ、それが音で表現されるのには「時差」があります。「祈り」が歌になるのとは、また違ったルート。


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