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続ハープ好き、のレジェンド探索 ジャズ開弦

ジャズ開弦?開眼?
基本的にジャズは聴きません。深い訳はなく、ご縁がなかったからでしょう。
それにたまに接する機会があっても、相性が合うと思うことはありませんでした。
映画は「グレンミラー物語」や「ベニーグッドマン物語」はお気に入りな方です。機内で観たモニカ・ゼタルンドの伝記映画もとてもよかったと思います。ただ音だけ聴いて最後まで聴き続けられるものがほとんどなかったのです。
先日ハーピストの検索をしていて、発見したドロシー・アシュビーの下記のアルバムは実におしゃれで大いに気に入りました。前もって知っている曲はありません。でも冒頭の1音から最後まで、なんだか惹きこまれて聴き入ってしまいました。主役のハープがとても洗練されていて、よく歌い、アンサンブルとのバランスもよく、ジャズの変奏方法のようないわゆる「語法」がわかりやすくて、初心者にも演奏者たちの愉しげな演奏の情景が思い浮かぶようなものでした。それに登場する各楽器の音も判別しやすく、撥弦楽器同士でも距離や輪郭がはっきりして、録音やアレンジもいいのかもしれません。そのせいか音楽にいえるかどうかわかりませんが、清潔感があり健康的で、リラックスして純粋に音楽を楽しみました。
こんな出会いがあるのは、youtubeのよいところ。35年前にアオヤマのアイリッシュハープでアマリリスを弾いたことがあります。そんなことを思い出してしまいました。

Dorothy Ashby - The Fantastic Jazz Harp Of Dorothy Ashby(1965)

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ウィキ検索によると、アシュビーはジャズハープというジャンルを開拓し普及しました。サックスのビバップと同じことがハープにも活用できると証明しました。
ジャズの正統的な演奏をしながら、1970年代には日本の琴をはじめ世界の民族音楽を自分のジャズの中に適切に取り入れていきました。アシュビーは本名をドロシー・ジーン・トンプソンといい、1930年生まれ(1932年記述もあり)、1960年代に活躍し、1986年に没しました。

彼女の父ワイリー・トンプソンはデトロイトのギタリストで、ジャズの仲間に恵まれ娘もその豊かな音楽環境の中で育ちました。ドロシー·トンプソンは最初ピアノを弾いて参加していました。
ドロシーは、ドナルド·バード、ジェラルド·ウィルソン、ケニー·バレルのようなジャズの偉人がいたキャス高校で学びました。高校のとき、彼女はハープに出会っておらずサックス、ベースを含むアンサンブルの楽曲に取り組みました。ウェイン州立大学でピアノと音楽教育を学びました。1952年に卒業し、デトロイトのジャズ界にピアニストとしてデビュー。その後メインの演奏楽器をハープに変えていきます。(ハープとの出会いや師事先については不明です----なかなかミステリアスで好い)
周囲の仲間は最初ジャズのアンサンブルにハープを加えることに抵抗しました。クラシックの楽器だと思っていたので。そこで彼女は無料コンサートを開いたり、ダンスパーティや結婚式で積極的にジャズハープを広めました。
1950年代後半から1960年代初頭には、エド·シグペン、リチャード·デイヴィス、フランク·ウエスなどとレコーディングをし、1960年代にはデトロイトでラジオ番組を持つまでになりました。
ドラムのジョン・アシュビーと結婚。トリオを結成して全国を回りました。ルイ・アームストロングやウディ・ハーマンと競演。1962年にはその年のベストプレイヤーに選ばれました。
以下のアルバムをリーダーとして発表しました。いくつかはyoutubeで鑑賞可能です。

1957: The Jazz Harpist (Regent)
1958: Hip Harp (Prestige)
1965: The Fantastic Jazz Harp of Dorothy Ashby (Atlantic)
1968: Afro-Harping (Cadet)
1970: The Rubaiyat of Dorothy Ashby (Cadet)
1984: Django/Misty (Philips)
1984: Concierto de Aranjuez (Philips)

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詳しくは解読できませんが、アシュビーたちは黒人たちのミュージカル劇団を組織して活動していたようです。

(追記)ハープのジャズへの採用は1920年代から進み、数人の奏者を生みました。当初はジャズギターの手法が模倣されたようです。1950年前後にはチャーリー・パーカーの楽団にもハーピストが在籍しました。
記録に残る最初のソロハーピストとしては、ジャネット・パトナムとベティ・グラマンがいます(写真だと二人とも白人です)。その次世代として登場したのがアシュビーです。アシュビーはそのもっとも偉大なジャズハーピストとして記憶される奏者です。
現代の若手の有望株はブランディ・ヤンガーという黒人女性の様子。ヤンガーのプロフィールを読むと「ドロシー・アシュビーとアリス・コルトレーンのスタイル」に学ぶとありました。アリス・コルトレーンは有名なコルトレーンの夫人です。アシュビーと同じデトロイト出身ですが、コルトレーンはハープ専業でなくピアノ、オルガンも同じ比重の様子(後年はサイババ信者とのこと)。アシュビーは後年日本の琴を弾いたり、アフロを取り入れたりしています。個人的には「世界が狭い」ときのジャズを弾くアシュビーが素晴らしく聴こえます。

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黒いハープ奏者は、黒いモーツァルトや黒いマーラー以上に奇異な印象を覚えます。ダビデの楽器であり、マリーアントワネットの楽器であり、黒い肌の人とは相容れない印象なのですが、もしかするとシバの女王も弾いたかもしれません。


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