笑うバロック展(21) 通奏低音の証拠第2号

イタリアとスウェーデンの図像があり、フランス圏、ドイツ圏、イギリス圏の証拠が少ないような。機会があればまた検索してみます。
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今度はピノックのヘンデル、トリオ・ソナタ集のカバーアート。
作者は誰なのか?
ペール・ヒレシュトレムPehr Hilleström(1732-1816)はスウェーデンの画家。1794年にはスウェーデン王立芸術アカデミーの教授。1810年に芸術監督に就任。
ストックホルムの上流中流階級の家庭で数々のジャンルの様々な日常業務を行う人々の絵を制作。ドレスや家具は、彼らが見たように正確に描かれ、当時の生活についての貴重な情報源となりました。それに加え、彼は製紙工場や他の初期産業の職場で職人の技を描写。1757年から1772年の間に、彼はフランスで貿易を学び、タペストリーの職人として働いたことも。

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このカバー画は、「Gustavian Style Interior with a Musical Party (Pehr Hilleström - 1779)」の部分です。
世はアメリカ合衆国の独立戦争の時代です。1783年にスウェーデンはいち早くアメリカを承認しています。
絵は「グスタフ朝様式の部屋の室内楽」とでも。グスタフ王はスウェーデン中興の祖。クーデターにより貴族層の支配から、啓蒙専制君主制に移行。
ドロットニングホルム宮には今も当時のオペラ劇場が残っています。バロックというよりロココ文化の時代。最盛期のバロック音楽の時代とは異なるため、絵が鍵盤楽器とチェロで通奏低音を弾いているのか、前古典期風な室内楽の様相なのか判断できません。

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もう一つ別な図像例。
作者不詳。

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下の図像もなかなか出典がよくわかりません。特に上の絵は怪しげですが、出典ありました。
ポール・ジョゼフ・デルクローシュ(1716-1759)作「セレン城内リエージュ主教の城館におけるコンサート」1750年ころ。
それにしても「出来すぎ」の感があり、嘘っぽい絵に見えます。
バロック音楽の演奏風景の絵画は、サンスーシ宮のフリードリヒ大王の絵がよくできているのに、同時にフェイク的側面があり、図像的にどの辺が信憑性が高いのか、いまひとつわかりません。

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様々なCDのジャケットを飾る絵画の数々を集めて展示したサイトがありました。
興味深く拝見しました。
たしかに通奏低音の図像的証拠となるような作品はとても少ないと感じました。
わたしたちが当たり前のように聴いていた、ブリュッヘンのリコーダーにレオンハルトの鍵盤、ビルスマのチェロという通奏低音編成は証拠が不十分かもしれません。クイケン兄弟とコーネンにしてもハゲットのトリオ・ソヌリーもしかり。

「カメラータ・ムジカーレ ギャラリー」

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