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笑うバロック(625) ジャン・ピエールの「羊飼い」

ミュゼット・ド・クールの新しい録音を、立て続けに2つ聴きました。ひとつは「忠実な羊飼い」の名で有名なソナタ集。
ミュゼットのドローンは、「うるさい」という人がいそうです。
ランパルの流麗なフルート曲として親しみ、ブリュッヘンがハスキーにト短調ソナタを吹き、メルクスやリンデがビエルアルー(このときはドローン調弦の適合する調性のソナタを検討して多様な独奏楽器で)を交えて録音し、その後作品13そのものが「伝ビバルディ」化し、しばらくこの6曲のセットを演奏する人が減ったのではなかったでしょうか。

新しいジャン・ピエールの羊飼い。たしかに少しドローンが耳障りな楽章もあります。ほぼ全編、不均等に演奏しているようです。

練習曲、独奏曲無伴奏、伴奏つき、室内楽、声楽オブリガート、協奏曲、管弦楽の編成員として。
バロック音楽の独奏楽器としてのレパートリもそろってきたようです。ミュゼットのジャン・ピエールも、ラモーのオケピから、様々な小規模アンサンブル、そして独奏へと活動が広がり。動画では、サン・セヴァン・ラベル・フィスという作曲家の古典派よりな協奏曲を。

派手さはありませんが、映像で見る限り「独奏協奏曲」に見えます。動画の後半はきちんとしたカデンツァを披露しています。

ルクレールの高弟ジョセフ・バルナベ・サン・セヴァン・ラベ作のミュゼット協奏曲
フラティマ指揮オペラ・カンパニー「コワン・ドュロワ (王の領地)」による演奏会。

ジョセフ・バルナベ・サン・セヴァン・ラベ( Joseph-Barnabé Saint-Sevin L'Abbé)  (1727-1803)パリのフランス人バイオリニスト兼作曲家 。
18世紀フランス・ヴァイオリンの楽派の重要なビルトーゾ、独創的な作曲家。当時のヨーロッパで最も優れたメソッドの 1 つである「Les Principes du Violon」の作者。音楽家一族生まれ、パリでルクレールに見いだされ師弟関係。オペラ座やコンセールスピリテュエルで活躍。フランス革命の動乱後に物故。
ヒロ・クロサキを中心にした4つのバイオリンだけの編曲集のCDの中に次のような編曲ものが録音されているみたい。
「様々なオペラのエアとダンスによる組曲(4つのヴァイオリン版。1761年に行われたジョゼフ=バルナベ・サン=ゼヴァンによる2つのヴァイオリン版に基づき、キャトル・ヴィオロンが1998年に編曲)

このジャン・ピエールは、あまり他の楽器(フルート、オーボエなど)と兼業という話題がでません。ルネサンスのバグパイプもあまり使わない人の様子。このバロックの楽器をメインとする奏者という印象です。
日本の上尾さんという演奏家も鍵盤が本業の様子。

ジャン・ピエールの解説動画。ドローン管のリード部分初めて拝見しました。ドローンは送風をスライドバルブで開閉して選べるようになっているみたい。指孔とキーの付いたメインパイプで旋律を弾き、隣のサブパイプはキー式で別な音色と音階が弾けるようです。これらを駆使してドローン以外に2声でカデンツァを弾いていたと思います。
先輩の故ジャン=クリストフ・マイヤールが作者不詳のヘンデルの調子のよい鍛冶屋を弾いたとき驚いたものです。
メインパイプの足部孔を塞いで、おそらく弱音を出したりしていました。

ジャン・ピエール氏、2014年の18世紀オケの「優雅なインド」でもソロ。オトテールの録音でグラスキンとアルバムを作ったブリュッヘンのほぼ最後の方の演奏でもミュゼットが、イギリスの葬送のバグパイプみたい。
一時、憧れて趣味で習えないかと模索したときも。うーん、動画を見る限りちょっとリコーダーを練習したくらいのアマチュアには手におえそうもありませんな。

時代は移り変わります。レパートリの開拓、実際の出番増、演奏人口も。

アマンダ・バビントン女史。イギリスのバロックバイオリン奏者らしい。リコーダーも演奏すると同時に彼女は「フランスのバロックのレパートリーに恋をしたので、ルイ 14 世の時代のフランスで短いがきらびやかな魅力を表す楽器を学び始めました。ヴェルサイユの鏡の回廊で聞かれただろうミュゼットです」。こうした兼業家が多いと思います。

ハーディガーディ系の楽器は、現存する民族音楽の楽器奏者が兼業する例がありますが、バグパイプ系の場合、アイルランド、スコットランド、ガリシアなどで使われるバグパイプと兼業している例はあまり聞きません。
グラスキン、マイヤール後、じわじわと研究開発の成果が聴けるのは興味深いものです。


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