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ガンバ協奏曲ファンよりガンバ奏者の方へ

ウィーンのオルフェオン・ファウンデーションのサイトを見ると、下記のリストが上っていました。室内コンチェルトも含まれているようにも思います。いずれにしても、おそらく録音のあるものではないかしら。
ガンバ奏者の皆様、どうかこうしたレパートリーもおとりあげくださいまし。

Giuseppe Tartini - Concerto in D-major viola da gamba and strings and two horns
タルティーニ 独奏ビオラダガンバ、弦楽と2つホルンのための協奏曲ニ長調 (ハイニッツVdg盤)(ディルティエンスVc盤)

Giuseppe Tartini - Concerto in A-Major for viola da gamba and strings
タルティーニ ビオラダガンバのための協奏曲イ長調 (ロストロポービチVc?)(ザンネリーニVc?) (ギエルミ注・ビオラのテッシトゥーラという解釈?)

G. Ph. Telemann - Suite concertante in D-major for viola da gamba and strings
テレマン 独奏ビオラダガンバのための協奏組曲ニ長調 (ハイニッツ)(パンク)(カニンガム)(パール)

G. Ph. Telemann - Concerto in A-major for viola da gamba and strings 
テレマン 独奏ビオラダガンバのための協奏曲イ長調 (パール)

G. Ph. Telemann - Concerto in a-minor for flauto dolce, viola da gamba and strings 
テレマン リコーダー、ビオラダガンバのための協奏曲イ短調 (カニンガム+フェアブリュッヘン) (ギエルミ+オーベリンガー注・最後のアレグロがアラ・バーバリアンという解釈)

G. Ph. Telemann - Sinfonia F-Major for flauto dolce, viola da gamba and strings (winds ad lib.)  
テレマン リコーダー、ビオラダガンバのためのシンフォニアヘ長調(カニンガム)

G. Ph. Telemann - Concerto in G-major for viola(da gamba ?) and strings 
テレマン 独奏ビオラ(ダガンバ)のための協奏曲ト長調 (パール)

Johann Pfeiffer - Concerto in A-Major for viola da gamba and strings
プファイファー 独奏ビオラダガンバのための協奏組曲イ長調 (パンク)

Johann Gottlieb Graun - 8 Concertos for viola da gamba and strings
グラウン 独奏ビオラダガンバのための8つの協奏曲 (8曲が正しければ現在6曲まで録音あり)(パンク・ニ長調) (ギエルミ・イ短調~最新盤ニ短調)(パール・ト長調)(フライハイト・イ短調)

Johann Gottlieb Graun - Concerto for violin, viola da gamba and strings 
グラウン バイオリン、ビオラダガンバのための協奏曲 (ギエルミ)

Carl Heinrich Graun - Concerto for violin, flute, viola da gamba, violoncello and strings
CHグラウン バイオリン、フルート、ビオラダガンバのための協奏曲 (ギエルミ)(パール)

Antonio Vivaldi - Concerto for violin, viola da gamba and strings 
ビバルディ バイオリン、ビオラダガンバ(注・チェロ・アリングレゼ=イギリスのチェロの解釈)のための協奏曲 (サバール) (ギエルミ)

こうして展観すると、オルティスあたりから、ベルサイユへ立ち寄りつつ、サンスーシを頂点として、アーベル、ハンマーあたりまで、遠大なガンバ・ソロの世界かしら。一人の奏者による適切な「趣味」と技法でガンバの全貌を聴かせてくれる、そんな奏者が現れることを祈っております。レオンハルト風に考えるとスペイン語、イタリア語、英語、フランス語、ドイツ語がしゃべれないといけません----かしら。


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CD店のサイトにギエルミの新盤が。「バーバリアン・ビューティ」ですと。ガンバ協奏曲のことではなく、ギエルミのビルトーゾを表わしていると思います。しかし協奏曲という分野が、「バーバリアン」だけでも不十分だし、「ビューティ」だけでも足りない、というのは納得できます。タルティーニ、テレマン、グラウン、ビバルディが並び壮観です。ギエルミの技巧なら、例えばバッハの1052とか1055あたりの編曲版でもできそうじゃありませんか。

CDの解説をいい加減に要約すると----西欧は「東欧圏(シレジアSilesia ヨーロッパ東部、主としてポーランド南西部、一部チェコとドイツに含まれる歴史的地域)」から様々にインスパイアされてきました。それは現在のポーランド、チェコ(ボヘミアの辺り)、ハンガリーの文化であり、その中の色濃い民族音楽「趣味」(注・ギエルミは解説で、「魅力的な≪ドゥエンデ≫を宿した」というような表現をしています。正確ではありませんがフラメンコギターなどの憑依されたかのような勢い速さ音色のようなもの、人間技を超える超えないの境界の集中力が説得力に凝縮した) を西欧圏は取り入れてきました。この地域の民族音楽には、いわゆるジプシー(ロマとかマヌーシュとか)風が入り込んでいると考えられます。あと、民族音楽で今でも使われているドローン付き楽器から、ドローンという持続低音を伴った音楽や楽器を模倣するような曲調なども。それらをイタリアンファッションという協奏曲に仕上げた、のがイタリア、ドイツ圏のバロックの作曲家たちの功績と。それは、ボヘミアの弦楽器奏者たちを重用したベルリンの宮廷にも引き継がれ、グラウンのようなロココ・グランドな協奏曲のソロにガンバを選択することになる、とまあそんな解説です。
当時のバイオリン属の先進性やファッションスタイルから比較すると、宮廷で前時代的、後進国的雰囲気をだしつつ、ドローン的雰囲気を醸しやすい楽器としては、適当だった、ということでしょうか。しかし、技術的には発達したバイオリン属の技法を取り入れて。そうなると体格の大きなガンバは協奏曲に向いている?ことになりますか。ハンマーダルシマーを要所に入れた録音は、ギリギリ薬味になっています。
解説には、フリードリヒ2世に仕えたヘッセの父がよくパンタレオン・ヘーベンシュトライトなるダルシマー名人とデュオをしたらしいと。のちのちダルシマーは「パンタレオン」と別称されることになった、と。フーン現代の演奏家さんたちは大変ですね。作曲家ごとの使用想定言語を覚え、当時の環境の「異国趣味」を覚え、それがアラビア風なのかシレジア風なのかを的確に表現しなければなりません。それによっては、弓の使い方も変えたりしなければなりません。ああ、大変だ。

このCDが届いたとき、パッサカイユ・レーベルの新盤2枚同時に届きました。ひとつは、フィゲイレド演奏のセイシャス作品集。もうひとつは、このギエルミの協奏曲集。
本来であれば、フィゲイレド盤に相応しいはずの「ドゥエンデ」なる表現が、ギエルミ盤の解説に。そして確かにグラウンのニ短調協奏曲を聴いていると、パコ・デ・ルシアのギターやガデスの踊りのような高揚感が徐々に。
反対にフィゲイレドは、異様にあっさり弾いていて、あまりに淡白ではないかしら。しかしバッハの幻想曲とフーガなどもそうだったけれど、異様な「サラリ」感が売りで、「ドゥエンデ」の方でなく「サウダーデ」の方のだったと。ヤコプスのモーツァルトの通奏低音は「ドゥエンデ」に近く、ソロは「サウダーデ」より。
昔、初めて福田進一のビラロボスの前奏曲を聴いたときに1音1音が軽く聴こえたもので。当時山下和仁の弾き方などがちょっとクドイと感じていたので。あれも「ドゥエンデ」と「サウダーデ」の違いだったのかしら。
しかし、「ドゥエンデ」ギエルミは、いつも通り「振り」でなく音そのものに「ドゥエンデ」を宿らせて、聴かせます。かなり超絶な「技巧」がきちっとグラウンの音楽に貢献しています。なんだろう「私の技巧が音楽なのでなく、グラウンの作曲した曲が音楽なのです」と言っているような、感じ。その点ではフィゲイレドのセイシャスも似ているかも。

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