笑うバロック展(275) CDで勝負する

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「これこそが美術だというものが存在するわけではない。作る人たちが存在するだけだ。」先日記したゴンブリッチの本の冒頭です。
音楽も同様です。「これこそが音楽だというものが存在するわけではない。音楽をする人たちが存在するだけだ。」ただ音楽の場合、「音楽する人たち」はたくさんいます。この場合、作曲家、楽譜の出版社、楽器製作家たち、その所有者たち、メンテナンスする人たち、演奏家、譜めくり、フイゴ吹き、録音技師、解説を書く者、ジャケットデザイナー、販売者たち、そしてオーディエンスたち。一枚の絵を完成させるのとは、少し関わる人数が違うようです。形に残らないにも関わらず、ミケランジェロの壁画のような費用や時間がかかります。

現代、CDは500枚売れればペイするらしいです。3000円×500枚なら150万円です。もし5000枚の販売が確約されているなら、300円で売っても何とかなるものらしい。知り合いの演奏家が勝負に出ました。
音楽は、例えばCDを買って聴くオーディエンスも、「作る人たち」の中にはいります。失礼な例えですが、「作る人たち」の中に「観る人たち」がはいらなくても「美術」は存在できるであろう、音楽とは少し違うかしら。

「これこそが音楽だ」といえる、数少ない「存在」だと思いますので、誰でもいいから、買ってほしい。すぐに聴かなくてもいいから、どうか買ってほしい。これほどトレーサビリティのしっかりしたCDもまた珍しいと思います。多くのオーディエンスにサステインドな協力をお願いしたいものです。

2004~2010年、旧日本大学カザルスホールにて全12回にわたる「J.S.バッハ:オルガン作品全曲演奏会」を開催し、高い評価を受けました。これは新バッハ全集としては日本人では初、という画期的な壮挙となりました。2012年よりオクタヴィア・レコードにて「J.S.バッハ:オルガン作品集vol.1~3」を3枚にわたりリリース。いずれもレコード芸術特選盤、Stereo特選盤に選ばれ、毎日新聞今月の一枚で紹介されるなど、高評を得ている。録音に選ばれたのは、オランダのフローニンゲンにある歴史的オルガン。バッハが存命中から敬愛していたオルガン製作者、アルプ・シュニットガーの手になるもので、一般的に「シュニットガー・オルガン」と呼ばれ、ヨーロッパでも至宝的存在となっている名品。

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