Johan van Veenの今月の一枚「フリッチュのレーデンブルク・コレクションによるガンバ協奏曲」2017年11月

届きました。なぜかこのディスクはMP3版がありません。
モーツァルトのクラリネット協奏曲でシュタドラーが使用したバセットクラの特定の決め手、現在ラトビアのリガに残っていた資料によります。ウイーンでできた曲の演奏家がどのくらい地方巡業しているか、そもそもリガは「地方」という僻地だったのか、渦巻き状に中心から離れていく現象を考えると、イラスト入りの演奏会プログラムというお宝はやはり遠くにあるのですね。ロンドンにプロイセンの大使として今のポーランドに所領がある人物が赴任する、すると今のポーランドにお宝が眠っているわけです。アーベル、クリスチャン・バッハが活動したロンドンは音楽を消費する街といわれました。都会の消費は、それよりもさらに鄙びた町に都会の流行を保存する倉庫を作ったのです。(サントコロンブの息子もイギリスに渡って資料を残していたかと)
フリッチュはレデンブルクコレクションの協奏曲はロンドンのギルケスの1812年作のガンバを使用。単音が輪郭はっきりやや野太い印象に録音されています。チェロ風ととられるかしら。ソナタは1784年ブレスラウのゲプラー作。共に7弦、ピッチは425。こちらは協調柔和ととれる印象の音作り。弓も変えているかも。
アーベルは意外と古風に聴こえます。無伴奏ソロはちょっとパッショネート、センチメントなのに。資料伝えた人物の腕前と趣味が反映されているのかもしれません。グラウンは弾けない腕前なら鑑賞用に資料は残さないかも。それよりも、自分の腕に合わせて、少し遅れて前時代的な趣味の作品を保存するかもしれません。テレマンの協奏作品からエマヌエルの同様作品を線で結んだとき、ややテレマン寄りの作品が多いかしら。このCDを聴くとエマヌエルの作品がかなりアバンギャルドに聴こえます。テレマンのリコーダーガンバ協奏曲の方がラディカルに聴こえるかも。
そうか、残っているのは通奏低音時代の楽譜でルールに従ってある程度は創作できるけれど、すべてではない、トゥッティ部分でおそらく補筆が必要だったかも、楽譜が残るソロがいくら魅力的でももしトゥッティを創作しないといけないなら、そりゃエマヌエルやハイドンのようには書けないでしょう。
いずれにせよ協奏作品のレパートリーが増えるのは歓迎です。期待しましょう、誰かタルティーニ、テレマン、アーベル、グラウンで「ガンバ協奏曲の夕べ」という演奏会を開いてください。


こういうタイトルのCDがでると放っておけません。
まずはネット上のCD評を調べました。未聴なので後々の楽しみに。

画像1

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「レーデンブルク・コレクションによるガンバ協奏曲集」
アントン・ミリンク Anton MILLING (2nd half 18th C) Concerto for viola da gamba, strings and bc in d minor [8:25]
カール・フリードリヒ・アーベル Carl Friedrich ABEL (1723-1787) Sonata for viola da gamba and bc in g minor (A2:56A) [9:20]
カール・フリードリヒ・アーベル Carl Friedrich ABEL Concerto for viola da gamba, strings and bc in A [13:50]
アントン・レッツェル Anton RAETZEL (c1724-after 1760) Concerto for viola da gamba, strings and bc in A [11:29]
カール・フリードリヒ・アーベル Carl Friedrich ABEL Sonata for viola da gamba and pianoforte concertato in C [7:17]
ハルデック公ヨハン・カール1世 JOHANN CARL I OF HARDECK (1703-1752) Concerto for viola da gamba, two violins and bc in F [7:49]
ヨハン・クリスチャン・バッハ Johann Christian BACH (1735-1782) Sonata for pianoforte and viola da gamba obligato in C [9:00]

Thomas Fritzsch (viola da gamba) Michael Schönheit (fortepiano) Merseburger Hofmusik
rec. 2017, Schlosskapelle Saalfeld, Saale, Germany. COVIELLO


一般に、17世紀の主要な楽器の1つであったヴィオラ・ダ・ガンバは、18世紀前半にその地位を失ったと考えられています。 これはイングランドに関しては事実であり、イタリアのスタイルの影響を受けてますます進行しました。フランスではチェロへのメインストリームを譲りましたが、フォルクレのような高性能な演奏家が残存していました。ドイツは、ベルリンがヴィオルの中心地であり続け、18世紀後半まで続きました。近年、この楽器のためにかなりの数の作品発掘をもたらしたトーマス・フリッチュ(Thomas Fritzsch)は、19世紀初頭のソロ・コンチェルトにさえ言及しています。
最近発見されたコンチェルトとソナタのライナーノートに、彼は楽譜印刷のブライトコプフのカタログに含まれているが、これまで見つかったことのない作品を指摘しています。その中には、1787~1848年に生まれたCarl Wilhelm Ferdinand Guhrのコンチェルトがあります。彼はほとんど知られておらず録音もありません。
プログラムの4つの構成はいわゆるLedenburgコレクションです。 2000年、Lower-Saxonyの国立アーカイブは、オスナブリュックの前身である司教でLedenburg領の音楽、絵画、その他のアーカイブ資料を手に入れました。2015年3月、フランスの音楽学者François-Pierre Goyは、フリッチュを呼び寄せました。楽譜資料はほとんどビオラ・ダ・ガンバのための音楽だけでした。その一部は、フリッチュによって録音された、失われたとされていたGeorg Philipp Telemannによる、viola da gambaソロのための12のファンタジアです。このコレクションには、18世紀後半のヴィオラ・ダ・ガンバの最も著名な奏者の一人、カール・フリードリッヒ・アーベル(Carl Friedrich Abel)の作品も含まれています。彼はドイツ出身でしたが、ロンドンで定住し、公開コンサートを企画し演奏しました。彼は多くの弟子がいました。そのうちの1人、1766年にプロイセン大使としてロンドンに送られた外交官ヨアヒム・カール伯マルツァンでした。彼は1782年に呼び戻されたとき、自己負担でイギリスに何年も滞在しました。アーベルによる2つのソナタとヨハン・クリスチャン・バッハによるソナタは、ともにMilitsch(現在はポーランドのMilicz)にある彼の宮殿の音楽資料庫のコレクションから発見され、そこで1786年以来初めて陽の目を見ました。興味深いことに、上記Guhrは彼のチャペルの一員であり、ヴィオラ・ダ・ガンバのためのコンチェルトと室内楽を作曲することを依頼されました。フリッチュは、かつてマルツァン氏が所有していた楽器で、このコレクションから作品を演奏します。 1812年にロンドンで製造された楽器で作品が演奏されていたという事実は、ビオラ・ダ・ガンバが思ったよりもはるかに長く演奏されたという証拠でもあります。
レデンブルクコレクションには、ドイツの作曲家によるコンチェルトが収録されています。 アントン・ミリングについては何も知られていません。今までコルアングレのための2つのコンチェルトと管楽アンサンブルのためのいくつかの作品しか知られていませんでした。 ミリングはニューグローブには含まれておらず、Hardeck(またはHardegg)のCount Johann Carl Iも同様です。カルダーラのオペラEuristeaのスコア楽譜を参照すると、彼は1724年頃にウィーンの宮廷でチェロ奏者として働いたとあります。録音されたFのConcertoは彼の唯一の知られている作曲です。それは協奏曲と管弦楽組曲の要素をミックスしたハイブリッド作品です。次の 5つの楽章から構成:vivace、allegro、largo、menuet、Harlequin。後者はTelemannのソロ・ガンバと弦楽のための組曲で見つかるようなキャラクター作品です。注目すべき点は、室内協奏曲の楽器編成であること:ビオラ・ダ・ガンバ、2つのバイオリン、通奏低音、ビオラパートなし。
3番目の作曲家アントン・レッツェルAnton Raetzel(またはRetzel)もニューグローブで言及されていません。彼についてわかっていることは、ドイツの学者Ernst Ludwig GerberによるHistorisch-biographisches Lexicon derTonkünstler(1790-92年)のものです。彼はホルシュタイン公のカペルマイスターであり、バスーンの教育を受け、 「グラウンのように」声楽と楽器の音楽を作ったこと。1761年から1770年までのブライトコプフのカタログには、様々な楽器のためのソロ・コンチェルトがいくつも収録されていますが、ここに含まれるヴィオラ・ダ・ガンバのコンチェルトは彼の唯一現存する作品です。 Ledenburgのコレクションには、イ長調Concerto Violo de Gamboも含まれていますが、表紙が紛失したため、作曲家が知られていません。しかし、作曲様式から、フリッチュとピーター・ホルマンは、アーベル作曲の失われた協奏曲の一つという結論に達しました。
この録音のすべてが世界初録音であることは驚きですが、不完全な資料のすべてがWolfgang Kostujakによって再構成されています。この解説には、すべての曲に何が欠けていたのか何も言及されていません。間違いなく、この録音は非常に面白く、レパートリーに大きな追加が見込まれます。の作品と3つの協奏曲に加えて、未知のヨハン・クリスチャン・バッハのソナタが収録されています。バッハ・アーベルのコンサートで一緒に働いていたアーベルのために意図されている可能性があります。ヨハン・クリスチャン・バッハのカタログには、アメリカのプライベート・コレクションに保存されているヘ長調ソナタとFが含まれていますが、このソナタは別物です。 それは、2楽章形式で一般的に後代に転換した形式です。
いずれにせよ、フリッチュとメルセブルク・ホフムジークの演奏は未知の作品を想像力と技能を駆使して雄弁に蘇らせています。鍵盤担当のミヒャエル・シェンハイトは1805年製のブロードウッド・ピアノを選択しています。ドイツではチェンバロでなくピアノも好まれていたことを考慮しています。

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