CD聴取ノート・プレクラ編[1] グラウン、モルター、ハンマー、アルブヒツベルガー

Feuer Und Bravour 熱中妙技主義?

このCD、きっと Musicke & Mirth (ミュージック・マース?)がグループ名です。「陽気音楽」「愉快な音楽」?とか。
イレーネ・クラインとジェーン・アクトマン?のふたりガンバのレパートリ・グループとして1997年活動開始と。リラ・ビオールのデュオからドイツのギャラント・デュオまでを範囲に。2007年にチェコのブルノで録音。
ベルリンの図書館にはまだお宝が眠っているようです。グラウンはベルリン・ジンクアカデミー所蔵だったもの、ミシガン大学の音楽資料館にあるらしいです。

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2011年6月3日記
グラウンの2台のガンバと通奏低音のための協奏的三重奏曲ニ長調が収録。2ガンバのための協奏曲だったかも、みたいな。通奏低音もかなり派手に動きます。主題をガンバのか細いソロから入ったりするのは、別な協奏曲でもあったかと記憶しています。ロマン派以降の室内楽というには、華やかにすぎます。ギャラントなんですがあまり軽くもない。聴いているわたしのような素人を飽きさせない変化があり成功しているように思います。急緩急の3楽章ですが、タイトルの通り熱中妙技(変な訳ですいません)様式かしら。カデンツァがあるのかと思わせるような休符が心地よいです。3楽章は疾駆するスケルツォ。
グラウンのガンバ協奏曲の解説で登場するサンスーシのガンバ奏者のヘッセのオペラ編曲が含まれています。ロワイヤル、フィリドール、ラモーのオペラからガンバ2台と低音用に編曲されたもの。ラモーのタンブランの編曲も。クヴァンツなどの2フルート用などと同様に結構技巧的ではないかと。
多分に聴き映えのするプログラムのように思えます。華やかだけれどちょっとおセンチで、泣かせどころがあります。それこそ、実演で聴いてみたいものです。当時の宮廷の趣味が反映された、楽器と演奏家とそのスタイル、田舎の宮廷がうらやむ先進国の流行りを取り入れる作曲家たち。この中で、改めてCPEバッハの作品や、「音楽の捧げ物」を聴いてみると----まあそのうちに実行してみます。ベルナルディーニと長沢のデュオCDは雰囲気がよくでていたかも。「音楽の捧げ物」はどうだろう。大分サンスーシの様子が広まったところで、サンスーシ側からの「音楽の捧げ物」みたいな録音はでているのかしら。


モルターの協奏曲集

大変地味な演奏家たちと言い換えておきます。「隙間狙い」とは誠に失礼しました。
エッカートは、バーゼルでサバルに習った人です。ブレーメンのヒレ・パールと同世代でハンブルクを拠点に。スザンネ・ハインリヒあたりも近い世代かも。
初期バロックの声楽や室内作品。高音ガンバでテレマンのトリオソナタ。アーベル、シャフラット、ハンマーなどレアな後期バロックもの。フランス、イギリスものもあるのですが、レアなものか、ひと工夫したプログラムが多いです。

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ジモーネ・エッカートが主催するハンブルガー・ラッツムジークは1991年スタートのグループで、継続的に録音を実現しています。徹底した隙間狙いです。

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モルターの協奏曲集。
モルターは、クラリネット、トランペット、ガンバ、ハープのために協奏曲を書きました。ディスカント・ガンバは、パリを魅了し作品ができていましたが、ドイツ語圏の作曲家たちとレパートリは長く忘れられていました。エッカートはフランスのドゥシュ・ドゥ・ビオールのための作品集も出しているようです。ルイ・オードラン(?)、シャルル・アンリ・ブランビユ(?)の作品集。

モルターは、テレマンなどのバロックの通奏低音様式と、ハイドン初期やマンハイム宮廷の間のミッシングリンクです。アイゼナハでは一回り年上のテレマン率いるオケの一員として勉強したようです。
タイトルの「コンチェルトとコンチェルティーノ」は、コンチェルトはずばり3楽章形式の協奏曲、ソロ楽器とVn2+Va+Vc+BCのためのものです。コンチェルティーノは複数のソロ楽器と通奏低音のためのもので、ビバルディの室内協奏曲的です。
エッカートが使用しているディスカント・ガンバは、1719年ニュルンベルクのレオンハルト・マウスジール作の楽器。
このグループには、下記のガンバ音楽最後の巨匠といわれるハンマーの作品集もあります。JCバッハと活躍したアーベルと並ぶガンバ作曲家です。ピアノ伴奏の可能性も提示されています。その後は、ハイドンのバリトンや、シューベルトのアルペジオーネが花火のように登場しては消えます。ビオラ・ダモーレのように民族楽器として命脈を保つ以外には、音楽史の舞台からは退場することとなります。

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アルブレヒツベルガーの協奏曲

いうなれば「グラウンへの道、グラウンからの道」と考えて。
ヨハン・ゲオルク・アルブレヒツベルガー(1736クロスターノイブルク - 1809ウィーン)。
ミヒャエル・ハイドンの同級生でベートーベンの師匠筋にあたります。

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正式には、「トロンブラ(口琴=ジュースハープ)とビオラ(ダ・ガンバ)、2Vn+Va+BC(弱音器付き)の協奏曲」とのこと。聴いてみると口琴とガンバの二重協奏曲でした。この作曲家と作品は昔から「キワモノ」として有名な曲でした。
コワンとモザイク・カルテット、リモージュ・バロックアンサンブルは以前からグラウンもとりあげ、またガンバ系の楽器についてもとりあげていました。これもその一環でしょう。


ヨゼフ・ハイドンはエステルハージ侯のためにバリトンの曲を多く書きましたが、協奏曲はないようです。もちろん時代的に協奏曲の規模が室内楽とさほど量的な差はありませんが。バリトン協奏曲は3曲紛失とありました。brt,SQ,2hrn,BCという編成の「8声のディヴェルティメント」が7曲ほど、規模はほとんど協奏曲といえそうです。エステルハージ侯が愛用していたバリトンは、バスのヴィオラ・ダ・ガンバのように調律されていた(AA, D, G, c, e, a, d)と記録があります。
ハイドンには「リラ・オルガニザータ協奏曲」という変わった作品もあります。(コレットのコミック協奏曲あたりとグラスハーモニカの曲が合体したような----)そうした楽器が全く忘れられてしまうまでの時間に、点々と火花を散らしている感じでしょうか。このCDには「8声のディヴェルティメント」も含められています。聴く限りでは、コンチェルタータとはいえそうにありません。調和には向いた楽器だけれど、目立つソロには不向きなのかもしれません。インティメイトな室内楽は残っていても、協奏曲までは難しいのでしょうか。アルペジオーネにも似たことがいえますか。あと協奏曲というのはやはりコストが高くつく楽曲なのかもしれません。

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テレマンニ長調組曲 at youtube

サバールのテレマン動画。観ながら聴くと、バッハのフルート付きのロ短調組曲の合わせ鏡のようです。 ⇒リンク切れ

Phillip W. Serna氏のテレマン動画。 ⇒リンク切れ

テレマン縁のポーランドのグループの演奏のよう。

https://www.youtube.com/watch?v=8bhoJSEbZ8k

Krzysztof Firlus クリストフ・フィルルスのテレマン。

キャプチャtleman






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