(2015年5月) 美術展 「夜の画家たち 蝋燭の光とテネブリスム」

福山、山梨と巡回中の展覧会。チラシの違いが面白いです。なんとか甲府まで訪ねてみたいものです。

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西洋美術の巨匠たち、「夜の画家」と称されるフランスのジョルジュ・ド・ラ・トゥールや、オランダのレンブラントらは、光と影をあやつる魔術師でした。闇の中から、一条の光によって劇的に事物がうかび上がる彼らの表現は「テネブリスム(暗闇主義)」とも呼ばれ、17世紀のバロック美術の時代にヨーロッパで大流行したのです。
時代はくだって、近代日本。この西欧の技法に出会って感動した画家らがいました。そのひとり、山本芳翠は、絵が「全く光りのついてゐる様だ」と驚きました。それまでの日本にはそんな明暗表現の概念や技術はなく、迫真に迫るような闇や夜の描写も極めて稀だったからです。
亜欧堂田善、高橋由一、小林清親、熊谷守一、高島野十郎といった画家たちが、この未知の表現に果敢に挑んでいきました。深い闇や灯や星明りを巧みに描きだす、新たなる日本の「夜の画家」たちが誕生してきたのです。
この展覧会は、これら日本人画家たちの挑戦と、彼らが残した夜の絵の世界を、のべ120点の作品を通して初めて包括的にふり返り、明らかにしようとするものです。彼らの出発点となった西洋美術の古典、現存する世界的にも貴重なラ・トゥール作品《煙草を吸う男》(1646年 東京富士美術館)が西日本で初出展となり、近代日本の明暗表現の白眉といえる山本芳翠の名作《灯を持つ乙女》(1892年頃 岐阜県美術館寄託)とおそらくは最初で最後となる邂逅を果す様は必見です。

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