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われらがガリレオ先生の「human chemistry」入門

コーヒー屋やカフェのマスターをされている方へ。
あなたは、お客様が考えていること、感じたこと、来店の前後に行動したことを知りたくありませんか。この本には、目の前の素晴らしいお客様が、何を考えながら、どこから来て、店で何を感じ、その後どこへ行くのか、が克明に記録されています。
まず、お客様の立場から、お店に対してどう語りかけ、どう感じたかが書かれています。お客様の行動や言葉は、お店を経営するオーナーのお店に関わるすべての姿勢の鏡像です。鏡に映る自分自身はひとりですから、たった一人のお客様でも、すべてのお客様を代表するといえます。
つまり、一人の素晴らしいお客様の内なる声を聞ければ、それを真似るだけで、もっとお客様を作り育てられるはずなのです。しかし、お店でお客様に直に聞くわけにはいきません。
あなたは誰ですか?
どこ住んでいますか?
今日はどこから来ましたか?
どのように当店を知ったのですか?
なぜ当店を選んだのですか?お店の雰囲気は気に入りましたか?
味やサービスは満足いただけましたか?
次はいつ来ていただけますか?
これからどこへ行かれるのですか?

2001年ころアメリカの小売業コンサルタントは、依頼主のために年に5万人の顧客行動を追跡調査するとありました。そのコンサルタントはショッピングの科学の創造者で、都市の地理学者とか小売りの文化人類学者とかいう触れこみで紹介されていました。実際には店内をビデオ撮影して顧客分析し、抽出したサンプル顧客を本当に尾行調査するというものでした。確かに前述の質問を矢継ぎ早に投げかける必要はありませんが、莫大な費用がかかります。
そこで、ある一人の素晴らしい知性、かつある店のお客様を選んで、あなたのお客様としてのゲノム(遺伝情報)を解析してください、と依頼しました。その方は、わたしの知り合いの中のガリレオ先生のような人です。もっときちんとした科学者であり、同時に落語を愛するユーモアを解する人です。
本文中に登場する「human chemistry ヒューマン・ケミストリー」は、人間の性質、または人との相性程度の意味が、人間関係から生まれる新たな力や気づき、とポジティブに解釈された言葉です。他者との交流から生じた化学反応という感じでしょうか。
おそらくは、ある店のスタッフとわれらがガリレオ先生の間では、人と人が積極的に「出会う」ための、適切な方法が実行されてきたと思います。
この human chemistry としかいいようがないものを、どうすれば、誰でも努力すればできるようになるか?
すでにできている人には、どうしたらできるようになるかは説明できないわけですから、比較的最近できるようになったわれらがガリレオ先生の具体的な方法をうかがってみたいと思いました。結果、5万人の追跡調査より、価値のあるものになったと感じ、感謝しております。
コーヒー屋やカフェのマスターをされているみなさまには、どうかこの本に書いてある通り、お客様に話しかけて検証していただきたいものです。

2013年8月刊


2015年刊


さてガリレオ先生は、それから2年後2015年に画期的な本を著しました。
落語の本でなく「落語会」の本。
落語の本は数多あれど「落語会」の本はいかに。
「落語」と「落語会」は何がどう違うのか、どういう関係なのか。
「菓子」と「菓子屋」の違い、なのか。
「絵」と「額」の違い、なのか。
「教育」と「教室」の違い、なのか。
落語も昔は口伝えでしたが、後代は速記録などで残っています、が「落語会」は見えないし記録にも残せないものかもしれません。
「料理」と「サービス」の違い、なのかも。
かまくらで42年続く「落語」という美味を提供する老舗の「サービス」の記録といえるものです。42年の間、寄席は減りましたがこの「落語会」は続きました。本当に「継続」するためには、経済的に理由だけでは不十分なのです。「落語」も「寄席」も大きく儲かるものとは誰ももう思いますまい。経済的には淘汰されてしかるべきですが、それこそ「百年目」の栴檀と南縁草のようなトリクルダウンの可能性を信じる人たちが、まだいるということです。


もしかすると今ではグローマー氏やモラスキー氏、はたまた白鳳の方が、よりよく理解できるのかもしれません。もはやこれらの大切な記録を読み解ける日本人は風前の灯かも。数少ない日本人は「芸者論」で花柳界の記録を書き記した岩下尚史氏くらいかも。


落語会はまだ続いている様子


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