笑うバロック(662) スペクタクル「光陰矢のごとし」、ふたつのオンブラマイフ
本当に久しぶりにジェラール・レーヌの歌を聴きました。来日公演に3回くらい接したひとで、独特なテイストなのにバロック音楽の声楽に接するときの目安でした。
かれの周辺世代は概ね健在かしら。
コヴァルスキ1954生
ヴィス、チャンス1955生
レーヌ1956生
リー・レイギン1958生
ケーラー1959生
ただ数年ぶりジェラール・レーヌの相貌に驚きました。
毎日鏡で見ている自分の顔はまあこんなものかしら、と驚きません。
欧米の白人種は、突然極端に老いていきます。ネットの時代ではそれが鮮明に。歌は聴かないけれど姿はよく見る先輩ヤコブスの往年の歌手然とした恰幅と艶々した顔色とは対照的でした。
歌声を聴いて安心しました。もちろんきちんと齢をとって老いていましたが、どこか自由になった印象。
とはいえ気になって以前の活動を検索しました。
ひとつは、2015年のサンドアートと協演した企画もの。自グループを率いて。
スペクタクル「光陰矢のごとし」
Spectacle Tempus Fugit
レーヌ、イルセミナリオムジカーレ
2015 年 6 月 5 日金曜日、午後 8 時 30 分 - アンギャン レ バン アート センター
ダンテの「 lasciate ogni speranza voi ch’entrate 汝等ここに入るもの一切の望みを棄てよ」という La porte des enfers 「地獄の門」の碑銘を朗誦しながら。3つの日本の俳句と結びつけます。背景として女性の日本語で語られます。良寛にしてはややペシミスティックが過ぎるような気もします。
「盗人に 取り残されし 窓の月」(良寛)
パーセルの「孤独」などを。
ヘンデルのオンブラマイフをサンドアートの木陰で。
「あけ窓の むかしをしのぶ すぐれ夢 」(良寛)
シャルパンティエの Mors saulis et Jonatas「サウルとヨナタンの死」
パーセルの「しばしの間の音楽」
「花の影、女の影の朧かな(はなのかげ、おんなのかげのおぼろかな)」 (漱石) 『草枕』中に主人公の作として記された句。胃が痛い漱石は似合っていました。
芸術監督らしきクレジットで、ロランス・レーヌ・パイヨ(Laurence Lesne-Paillot)という人、娘さんでしょうか。
同じ動画チャンネルには2009年の「ケンタウロスの神話~イタリアの作曲家の歌曲」シュリ・シュル・ロワールフェスティバルも。
モイヨンのハープ伴奏でイタリアの装飾的な歌、ルッツァスキ、ロッシなど。こちらは、14年前なので脂の乗り方が違います。最後にカヴァルリの「オンブラマイフ」に辿りつく構成でした。単体で聴いても美しい歌でした。
録音はしなかった様子、新世代の登場、録音販売形態の変化のころかも。
フェイスブックを追って訃報もふたつ。
いつも同行していたモンテイレ。
バイオリニストのマルゴワール。
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