笑うバロック展(279)  アイドルを探せ ズボンなエキルベイ

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アクサントゥスの16/17プログラム。カリスマプロです。パリに住んでいたら、定期会員になりたいです。
考えてみれば、協奏曲と交響曲か管弦楽のプログラムだけでは限界がありますから、合唱が加わるだけで、広がります。安定したプロ合唱団が活躍すれば、上手に提携していけば、お互い経営的にもよろしいのでしょう。アクサントゥスのキャリアからの憶測ですが、声楽作品の多い古楽関連の成長とリンクしているから?かもしれません。
メジャーは、ドボルザーク「スタバトマーテル」。ハイドン「天地創造」。シューベルト管弦楽伴奏編曲歌曲。モーツァルトのハ短調ミサ。
マイナーは、シチェドリン「目隠しされた天使」とチャイコフスキーの「聖金口イオアン聖体礼儀」(「聖ヨハネス・クリソストムスの典礼」という訳は間違いの様子)の抜粋。ゲーゼの世俗オラトリオ「コマラ」。サンサーンスのオペラ「銀の音色」。

エキルベイ指揮のグルック「オルフェオとエウリディーチェ」演奏会形式の中継。タイトルロールはフランコ・ファジョリとマリン・ハルテリウス。精霊の踊り付きバージョン。意外に合唱の活躍シーンが多い目なので、アクサントゥス向きです。エキルベイの選曲眼というか耳はやはりカリスマかしら。そういえばノリントンやガーディナーあたりも合唱が出発点でありベースにはありますが、ガーディナー路線の継承者でもいいかも。ガーディナーもこのグルックでは名盤を作っていましたっけ。

アクサントゥスづいてyoutubeでコンサート中継を鑑賞。モーツァルトのミサ曲とCPEのマニフィカトのプログラムのアンコールに、心憎いゼレンカの「ミゼレーレ」の冒頭合唱とブクステフーデのアレルヤ!!
エキルベイはなかなかカリスマです。
それで彼らの録音をもう少し聴きたいと検索したら、初期の録音らしいPierre Hugard (1726-1761)のミサ曲の録音がみつかりました。ブロサールのモテットなんかにも参加してます。
ミゼレーレの詩句の一部。「Redde mihi laetitiam salutaris tui: et spiritu principali confirma me. 主よ、わたしの唇を開いてください。この口はあなたの賛美を歌います。」からとられたミサ曲がまた少し風変りというか、レアな録音でした。
ユガールは、この曲がもっとも知られたフランスの作曲家です。彼はパリのノートルダムの聖歌隊の少年でした。1744年に初めてのミサを出版したとき、彼はすでに声変わりしていました。このミサは1761年に出版された4声のアカペラスタイルのミサ曲です。
ただアクサントゥスとしては、やはり特異なレパートリと考えてよさそう。なよなよと聴こえるのが味わいがあり、わたしには好演。
1991年エキルベイが創立。32名のプロ合唱団。デュサパンの演奏など現代曲で評価。1996年からエリック・エリクソンと協力関係築く。17世紀から現在まで幅広いレパートリ。
録音も、プーランク、ラベル、メンデルスゾーン、シューベルトあたりから始まり、2003年に編曲ものアンソロジー「トランスクリプション」でブレイク。合唱団が主役のレパートリを順に取り上げつつ、時代性から器楽との共演も古楽器も厭わず行う。しかし、前述のエリクソンの合唱団とはかなり方向性や味わいが違います。今のところ、コリドンシンガーズのようにブルックナーまでは及びそうもなく、ライン聖歌隊のような緻密さも及ばず、フォーレよりもR・シュトラウスの方が魅力的、ふくよかで艶があり柔軟かしら。エキルベイを「見て」いると「バラの騎士」を想像してしまう----やはり失礼なのかしら。
ユガールのミサの合間に、近い時代の教会音楽家と思われる2作曲家のオルガン曲。ギョーム・ラスクーGuillaume Lasceux (1740-1831)は古典期のオルガン即興の名人のよう、アンリ・アルドゥアンHenri Hardouin (1727-1808)は古い形式のミサを書いた人らしい。 フランスの教会では知っている人もいるのかもしれません。
ユガールの世代はルイ15世治下で、モンドンヴィルとか、ロワイエと同世代でしょうか。グルックとハイドンの間の世代です。

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ローランス・エキルベイ、予想外のスケール
インタビュー: Julie Rovero-Carrez

「私は、シュヴァルツヴァルトでスカンジナビア出身の家庭に生まれました。北欧とドイツの文化に親しみ、音楽好きな家族のもとで育ちました。寄宿舎ではプライベートな時間がほとんどなかったので、音楽を通じて自分自身の秘密の花園を作らなければなりませんでした。ピアノやフルート、声楽、作曲法、和声、分析を学びました。大学入学資格試験に合格したのち、指揮法を学ぶためオーストリアとスカンジナビア、そしてイギリスに行き、そしてキャリアをスタートさせました。私は、常にオーケストラと合唱の指揮を並行して行ってきました。ウィーンにいたときには、生活のため、合唱団で歌ったこともありました。歌は、音楽家としての基礎の一つです。こうして、1991年に、私のヴォーカル・アンサンブル、アクサンチュスが誕生し、その4年後には、パリ地方音楽院に、若い歌手向けの教育課程であるパリ青年合唱団が誕生しました。オー・ド・セーヌ県議会と協力して、古典楽器のアンサンブル、インスラ・オーケストラを創設し、啓蒙時代や、1750年から1850年の時代の有名な作品やあまり知られていない作品を研究する機会に恵まれました。現在、フランス内外で約40回のコンサートを行っています。」「レナード・コーエン、ジャニス・ジョプリン、ローリングストーンズ、バルバラ、ヴェロニク・サンソン、ダミアン・ライス、エミリー・シモン、オリビエ・ルイズなど、電子音楽やバラエティー、ロックを聞くのが好きです。」家族で聞く音楽は? 「ダミアン・ライスのスリープ・ドント・ウィプ。」友達と聞く音楽は? 「レナード・コーエンのフェーマス・ブルー・レインコート。」元気が出る音楽は? 「バッハのクリスマス・オラトリオのいざ祝え、この良き日を。」パーティーの時の音楽は? 「アーロンのアンバーズ。」誘惑する時の音楽は? 「シューベルトの岩の上の羊飼い。」結婚式の音楽は? 「メンデルスゾーンの真夏の夜の夢の結婚行進曲。」「私のインスピレーションの源はパリです。パリは本当に素晴らしい町だわ。グラン・パレ周辺のセーヌ河の岸辺を歩くのが好きです。広々としていて、アレクサンドル3世橋を望む風景が美しいの。本当にきれいだわ。私のモンマルトルは、お店も少なく、カフェも一軒しかなくて、車もほとんど通らないのよ。」パリを表す3つの言葉は?《インスピレーションの源、親しみ(私はパリ生まれなので、すべてが私にとって親しみがあるの)、とらえどころがない(町全体が美術館でありながら活気にあふれ、でも、どの時代もそこに足跡を残すことができるの。》香りは? 「花盛りのマロニエ。」音は? 「スズメのさえずり。」味は? 「コーヒー。」眺めは? 「モンマルトルから見たパリ全景。」

ベートーベンも好いけれど、バロックも忘れないでください。

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