笑うバロック(619)　もう一人の別なパリのアメリカ人、古楽のユディト

2022年9月7日 18:22

2012年6月、アナ・キャロル・ダドリー(Anna Carol Dudley) は「クラシカル・ヴォイス」誌にジュディス・ネルソンの追悼文を寄せました。ダドリーは歌手、教師、カリフォルニア大学バークレー校名誉教授、サンフランシスコ州立大学名誉講師、サンフランシスコ古楽協会のバロック音楽ワークショップの名誉ディレクターです。
その内容は次のようなものです。
両親の名前から察するにフランス系なのでは、と思わせます。そしてパリで出会ったジュヌヴィエーヴ・ティボー・ド・シャンブレなる人物がちょっと気になります。
ジュディス・ネルソンはネット上にポートレートや動画が少ない人でもあります。聖書のユディトは多くの画家の題材になっていますが。

ソプラノのジュディス・ネルソンは、古楽のリバイバルが始まった欧米で最も有名なバロック歌唱の歌手であり、アルツハイマー病との 12 年間の闘いの末、2012年5月28日に安らかに亡くなりました。

1939 年にイリノイ州エバンストンで生まれたジュディ (友人たちは彼女のことをこう呼んでいた) は、ミネソタ州のセントオラフカレッジに通い、有名な合唱団の主要な歌手になりました。1962 年に夫(ネルソン氏)と一緒にバークレーに引っ越し、彼女は UCバークレーコレギウムとバークレーチェンバーシンガーズで歌いました。1972 年UCバークレーのアルフレド・ハーツ・フェローシップでソリストとしてのキャリアを開始、イギリスを含むヨーロッパ諸国を旅しました。彼女は5世紀に跨る音楽のグループに参加し、ジュディにとっての「パリの天使」音楽学者ジュヌヴィエーヴ・ティボー・ド・シャンブレ(1902-1975、楽器楽譜収集も)に出会いました。彼女はルネ・ヤコブス、ウィリアム・クリスティ、ヴィーラント・クイケンと並ぶコンチェルト・ヴォカーレの創設メンバーであり、クリストファー・ホグウッドのエンシェント音楽アカデミーの独唱者でもありました。1979年にはブリュッセルでオペラデビューし、アラン・カーティスのモンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」でドルシッラを歌い、ヴェネツィアの歴史的なラ・フェニーチェの舞台に立ちました。

彼女はサンフランシスコでは、フィルハーモニアバロックオーケストラの創設者の 1 人で、一緒に歌ったり録音したりしました。最初期オフィスは彼女の家にありました。彼女はフィルハーモニアのデビュー録音、ヘンデル「アポロとダフネ」はじめ、ヘンデルの他の作品に愛情を注ぎました。同じように心血を注いだもう一人はパーセルでした。ステージでは、ボストン古楽祭でのヘンデル「テセオ」、ロサンゼルス・ナカミチ・フェスティバルでの「聖アレッシオ」など、いくつかのオペラに参加しました。

フィルハーモニアの音楽監督ニコラス・マギーガンは彼女について次のように述べています。「エンシェントの独唱者としてジュディは頻繁に、親友のエマ・カークビーとペアを組みました。この 2人を一緒に聴いたのは、私の最高の思い出の 1 つです。本当に天使が天から降りてくるようでした。ジュディは女神のように歌いましたが、いわゆる歌姫(ディーバ)ではありませんでした。彼女はスマートで、ファニーで、同僚として一緒にいると楽しい人でした。音楽作りでは暖かさと喜びを放ちました。彼女と共演できたこと、そして観客が彼女の芸術性に魅了されるのを見ることは、とても光栄なことでした。」

ジュディは、サンフランシスコのアメリカ・バッハ・ソロイスツ、マニフィカト、トロントのターフェルムジーク、マサチューセッツのアストン・マグナ・フェスなど、主要なオーケストラやグループと協演し、北米、メキシコ、ヨーロッパ、アジアと世界中で活動しました。

ハープシコード奏者のローレット・ゴールドバーグと女優のレラ・ロッシーとは、エリザベス朝トリオを結成しました。後の「タペストリー」という名前のグループで筆者も招かれました。私たちは毎年、ルネサンスとバロックの音楽とさまざまな国の文学を組み合わせたプログラムでツアーを行いました。彼女は素晴らしい同僚であり友人でした。ジョナサン・ディモックは、私と他の多くのミュージシャンを代弁しています。「彼女は、古楽の様式美の代名詞でした。品格があり、いつも楽々と歌い。人々と一緒に仕事することを楽しんでいました。彼女は録音するのが大好きでした。しかし他のミュージシャンと競争したことはありませんでした。」

ジュディは、約70の録音を行っており、その多くはハルモニアムンディ、オワゾリールとです。特に注目すべきは、ホグウッドの「メサイア」のソプラノ起用で、1980年にウェストミンスター寺院でBBCTV用に録音され、現在は DVDでリリースされています。クラシック音楽雑誌ミュージック (2012 年 1 月) は、その録音を「史上最高の録音50曲」のリストで25位にランク付けしています。1989年9月、彼女の音楽への貢献が認められ、セントオラフカレッジはジュディに名誉博士号を授与しました。

ジュディには夫のアラン・H・ネルソン、息子のクリストファー、娘のジェニファーがいます。彼女の父親ヴァージル・マネスと母ジュヌヴィエーヴ・インゲルス・マネスは先に亡くなりました。追悼イベントは追って発表されます。彼女を追悼するための寄付は、バークレーのアルツハイマーサービス、フィルハーモニアバロックオーケストラ、または地元のホスピスサービスに行うことができます。

独唱の録音。コンチェルト・ヴォカーレ。ロッシ、ストロツィがあります。