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笑うバロック(284) レジェンド探索 「コルネットのオルフェオ」ブルース

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ブルース・ディッキー、アメリカ生まれのコルネット奏者
写真のごとくこのコルネットは別名ツィンク。わたしにとってコルネットとはこれです。
ディッキーはコピーの通り「コルネットのオルフェオ」に相応しい。
写真下は現在のプログラムのひとつ、ハナ・ブラシコバとのデュオ・プログラム。

プログラムの解説を豪傑訳します。
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16から17世紀、コルネットは、人間の声を模倣するその驚異的な能力のために伝説視されました。この模倣は奏者自身楽器を介して話すかのように、多彩な音の作ることができ、その俊敏性、表現力の範囲、動的柔軟性が有機的に結合していました。この伝説的模倣をプログラムにくみました。声とコルネットは、文字通り息で音楽を作るため「息をつけないほど、息をのむ」二者の呼吸の対話を離れた聴き手に届けます。17世紀、歌手、コルネット奏者は即興的装飾の技巧が発展しそれを競い合いました。同じ旋律を華やかに装飾し、それをエコーのように模倣し、まるで楽器と声が蔓草のように絡み合って、音楽的対話を楽しみました。そして、名手たちの装飾は記録され通奏低音伴奏のソロ曲に生まれ変わりました。
このプログラムの最終段階は、17世紀の最後に、特にローマとナポリで、コルネットは、アレッサンドロ・スカルラッティとジョヴァンニ・バッティスタ・バッサーニなどのオペラやオラトリオでしばしば驚異的な難易度のオブリガートパートを演奏、コルネットの活躍後期の花を咲かせました。これは文字通り、コルネットの「最後の息」になりました。
このプログラムでは、17世紀の音楽の合間に、コルネットと声の共通性を探求する新しい作品をはさみました。ギリシャの女流Tsoupakiの作品を取り上げています。
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この特殊な楽器の第一人者は健在でした。最初にこの楽器の音を聴いたときの驚き!!初めてライブで聴いたときのさらなる驚き!!ディッキーの何とも言えない清楚な厳粛な直立不動の立ち姿!!さながらトランペットのようなマウスピースで尺八を吹く、といった趣でしょうか。ルネサンス後期には立派な管弦楽の一翼を担いました。一部地域の宮廷や礼拝堂では、弦バイオリン・ファミリー、管コルネット、トロンボーン・ファミリー、それに合唱団で構成されたアンサンブルが登場していました。すぐに通奏低音を伴う時代が到来、モンテベルディ前後の時代から父バッハの時代まで使われ続けました。バッハ親子の交代時期に忘れられていきます。シュッツ作品にはなくてはならず、テレマンやヘンデルでは見かけません。

似ている楽器でベルリオーズが使用したセルパンという低音楽器があります。後々チューバなどに置き換えられていく楽器です。同じファミリーの低音楽器に見えますが、実際には共演することはないらしい。なぜか?----奇特なことに現代セルパン奏者がいて、サイトで歴史を解説しています。これまた驚き!!

ディッキーで検索するとyoutubeでいくつか最近のコンサートの様子が拝見できます。あきらかに20年前より素晴らしい演奏。特に弦楽や声楽との調和や絡み方が滑らかになって、融合感一体感が増していました。

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