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読書の感想 その名は「世界一」、それを捨てて「一」をとった男

何冊あるのかしら。
アマゾンで「世界一」と検索したら紙の本だけで優に1000冊でてきました。
「世界一のおそうじマイスター!」「世界一覚えやすい中学の英熟語430」「世界一短い手紙で気持ちを伝える」「WHAT IS SAPEUR ?――貧しくも世界一エレガントなコンゴの男たち」「世界一のジェラートをつくる」「hearty little cake 北鎌倉の世界一小さな焼菓子屋 」「スターバックスを世界一にするために守り続けてきた大切な原則」と次々。
そして世界一といえば当然これ。「ギネス世界記録 人はなぜ世界一が好きなのか?」。
名前にしている人もいます。朝倉世界一。「世界一のプレゼント」というハーレクインロマンス。
「東大卒で49歳の主夫がなにもはじめずに運動不足を解消しこんな体になった世界一かんたんな方法」「神保町リバイバル ネット時代にも負けない世界一の本の街」「パティシエ世界一」「ユニクロ 世界一をつかむ経営」「食べることは、生きること 世界一のてんぷらをあげる 」「世界一即戦力な男」「まず「できます」と言え。やり方は帰り道で考えろ。「世界一の庭師」の仕事の流儀」。とりあえずどんなにマイナーでも「世界一」名乗れる人たちやものがあるようです。
世界一には、やさしい、安心、楽、反語的に挑発といろいろ。

そして、「世界一のおもてなし」の著者のトレーニングを担当した下谷隆祥氏「世界一のサービス」。「おもてなし」氏が世界一になる2012年前後に出版され、「世界一のサービス」の書名をいわば掠め取り、仕方がないこととはいえ。出版社もそれがいいというでしょうし、後輩にその書名を譲るにはプライド高そうです。
何にせよ「一」は最初の人しか使えません。「世界一」は取れなかったが「一」をとったということでしょうか。「世界一」氏はそれがスタートであり、「一」氏は最後の勲章です。ドロドロした書名由来はともかく、内容は興味深く読みました。
著者自身が、お客様の立場として様々な店を訪問するときに感じることは、重要なことでしょう。オフの日に街でお客様と出くわしたとき、これもなさそうでありうること。それが「世界を歩いてきたお客様に学ぶ」につながっていきます。「お客様の視点」=「自己の客観視」というのは、大切だけれどなかなか言えません。
サービスはお客様とスタッフの共同作業、これも常識的だけれど言えないお言葉で、説得力のある説明がされています。
第5章の競技会編は最初蛇足と感じましたが、エーベルラン杯のエピソードは競技会に対する全うさ、真摯さが表れていたと思います。
「タンポポ」やっぱり観てみよう、とも思わせられました。

さて、余談ながら。当の「世界一」氏は、世界一後にいくつか「世界一」本を出しました。『世界一のメートル・ドテルだけが知っている、好感を持たれる60のコツ』(マガジンハウス2013年4月)、『一流のおもてなし術 メートル ドテル 宮崎辰の流儀』(東京堂出版2015年12月)、『世界一のおもてなし』(中経出版2015年4月)『世界一のメートル・ドテルが教える 利益を生むサービス思考』(光文社2019年1月)----。

うーん。どれも簡単に作った感じの本。やりたいことはわかるのですが。
「世界一」氏も、教育活動が大切なのはわかるのですが、もう少し現場にいて、実際、彼のサービスを一般のお客様が受けられる「キャリア」をきちんと続けていてもよかったのではないかしら。
ふと思うのですが、「井の中の蛙」的な思考はとても大切だと。「世界一」氏の本に書かれていることは、いかにも「コンサル」的物言いのように聞こえてしまうのです。
一応、「世界一のサービス 10年前のお客様を忘れない」と「世界一のメートル・ドテルが教える 利益を生むサービス思考」をセットで読むのがよいかと思います。



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