エルガー・イン・ワンダーランド(2011年4月記)

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ちょうど上野を通りかかったので、都響定期に飛び込みを敢行しました。いろいろとあって、時間の都合で竹沢恭子のエルガーのみ聴きました。
震災の影響か、さすがにかなりの空席。でも、ちょっと失礼ながら、大変でも公演中止にしない方が、オケも助かりますし、わたしのようにフラリ飛び込みも助かるというものです。協奏曲のみなので、3階の右翼の端のB席----といっても50分の大作です。ちなみにプログラム後半だけだと「おそ割」チケットというのができていました。昔の名画座の最終回みたいで、うれしいような----フォルジュルネの影響のようでいまひとつ「?」のような----とはいえ3階席は意外と音がはっきりと聴けました。大ホールは10年ぶりくらいかしら。上野の文化会館は5階まで席があり、大リーグのスタジアムみたいに急斜面ですが、そのため思ったよりもステージとの距離が近いと、3階席の端から眺めてわかりました。コン「ミス」はプログラムをめくったら、いつの間にか四方恭子が。ずっと昔ケルン放響で拝見しましたっけ。
エルガーとブラームスのニ長調交響曲のみのプロでしたが、開始前に震災被害の方のためにバッハの管弦楽組曲3番のアリアと黙祷が捧げられました。
竹沢恭子さんという人、初めて聴きました。というより、よほどのご縁がないと最初で最後みたいな人がどうしても多くなるものです。真っ黒な大きく胸の開いたドレスで登場。3階席から中年オヤジが覗いている格好になって、なんとなく恥ずかしい。しかも並びも2人クラシックフリークな中年が並んで、ますます怪しげ。しきりに過去のエルガーの録音の話に花が咲いていましたから、エルガーフリークかも。
エルガーの最近よく演奏機会が増えた、この協奏曲は、難曲に「見えない」ウエルメイドさ。予備知識がない方が美しさで寝ないで済む、感じ。素人にもわかりやすく最初のテーマに回帰して終わります。3楽章の途中でオケの弦セクションが弦を指でポンポン叩くような、こもったピチカートのような部分が登場、CDで聴いているときは気も着かず、なんだかんだと無意識に聴いているものです。「見る」のが大事と思える瞬間でした。2楽章がホルンやトロンボーンも参加して、ちょっとエクアーレっぽく響き、時節柄との不釣合いもなく。
ソロリサイタルなどでは、よく時間の関係で後半のみ聴くことがありましたが、初めて前半だけで退場。無計画ですが、帰路の気持ちは豊かになるものです。それに後半を聴かないと、聴いた前半1曲がよおく耳に残りますし。
ある方から、普段は情熱的な演奏家とうかがいましたが、震災後ということもあったかとは思いますが、演奏は大変ディーセントなものでした。押し過ぎず弾き過ぎず、しかし適度にファンタジックと思いました。「エルガー・イン・ワンダーランド」に貢献する演奏だったと思います。

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