笑うバロック展(103) 白色彗星のオルガン

映画「用心棒」と、そこで取り上げられたチェンバロを「笑う」のはいささかテーマに合わなかったような気がします。でも改めて映画音楽を聴いてみたら、思いのほか目立って使用され、なんというかレチタティーボの伴奏みたいで一興だと感じました。
ただ「用心棒」のおかげでチェンバロが日本に普及したかというと、きっと違うでしょうねえ。
それでふと思い出した映画があります。
1978年夏休み公開の「さらば宇宙戦艦ヤマト」です。その中に登場する「白色彗星のテーマ」です。
それこそ、「笑う」にそぐわない、かもしれません。
しかし、パイプオルガンの普及に一役かっているとしか思えません。公開初日の行列に並び、立見したわたし自身、以来オルガンの咆哮を聴くと必ず記憶がよみがえります。
「用心棒」でバイオリンを外したのと同じような意味で、とてつもない未知の敵が近づく、ヨーロッパ的には不吉な星が接近する音楽にパイプオルガンを使用する、やはり卓見のような気がします。
実は楽器も作曲もバロックからは遠い、それはわかっていますが、なにかひっかかります。
168000光年の最初の大航海を達成し、「無限に広がる大宇宙」を自分たちと同じように渡ってくる未知の存在を感じ、一種のゼノフォビアの象徴として登場する「白色彗星」。イェニチェリのような軍楽隊でなく、本来動くはずのない音が近づい来ます。
新作「2202」の中の白色彗星内部。

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彗星のテーマ冒頭。こうした音楽はバロック的ではありません。オルガンの曲にも滅多になさそうです。

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バッハのロ短調ミサの冒頭。当時としては、ちょっと風変わりな始まり方が、昔から苦手でした。演奏者の人数が多いほど威嚇的に聴こえました。ルベルの「四大元素」のカオスあたりが不気味に聴こえるか、と思ったのですが不協和音は不安は煽るかもしれませんが、威嚇的ではありません。

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結局、どうもホモフォニックな動きの始まり方、という点で次の曲が「白色彗星のテーマ」に似ているのでは、と思いいたりました。宮崎晴代氏の本からヒントを得ました。ただし、編成、調性が全く違うので、かなり「いい加減」なこじつけです。バッハがそれだけホモフォニーとポリフォニーの使い分けが見事であった、ということ。
普通は固定されたポリフォニックな曲をよく演奏する楽器の王様が、ホモフォニックに移動しながら攻めてくる、の図が宮川氏の見事なところといえますか。

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バッハコンクール優勝なんて方がいました。すいません、こうした正統的なことは無知なのです。
どうもこうしたチラシを見ると、オルガンに持つ日本人のイメージの中に、白色彗星接近みたいな刷り込みがあるように思えてなりません。

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