笑うバロック展(231) 全くご縁がない「中村さんは、カレーもうまい。」

ラモーでCDを製作した青柳いづみこは、師の評伝で吉田秀和賞を受賞。売文できてピアノも弾ける先輩中村紘子は、コンクールルポで大宅壮一賞。クラシック音楽の伝道師でしたが、バロック音楽とは縁遠く。しかし縁は異なもの、わたしは中村さんの著作はほぼ読みました。自然な話し言葉のような書き方で、ちょっとゴシップ好きな雰囲気を醸しつつ、音楽に詳しくないと理解できないことは書きません。文学的表現巧者。コンクールのルポもうるさいメッセージは感じさせません。女流ピアニスト列伝もさらりとエッセイしてしまう。中村さんの品格を保ったやや下世話な話は、相性が合うのですらすら読めてしまう。中村さんは、何もない「空っぽ」、相性が合うというより同類だと思い込んでいます。中村さんのエッセイに触発されて話題の音楽を聴いてみようという気持ちにはならない。無意味無用なくだらないおしゃべりを交わしているよう。本当に気兼ねがない、という間柄というのも大切なのではないでしょうか。

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最後のエッセイ集を文庫化後kindleで読みながら、最後だからって急いで単行本なんか買う必要ないですよ、と言ってくれているような気がするのです。


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