パリのウエルテルまたは食あたりの報酬(2014年2月記)

会食の日程が1日ずれて22日の夜があきました。
そこで問い合わせたらまだ席があるとのこと。同行の方たちに了解をいただき、いざ皆でバスチーユへ。今年最初の音楽会----。
苦い記憶。一昨年春、接待目的でトライしたけれど席確保できず大失点しました。その時はドンジョバンニか何かで、無理ないかと勝手に想像していました。さすがにマスネなら席にゆとりがあるのだろう、と。確かにとれたけれど、いざ中へ入ると満員御礼、よくはいれたものです。うーん、しかし夜の予定を組むとき、会食の予約を優先させれば、当然夜のお楽しみスペクタクルは後回しになります。時期的には、様々な公演が目白押しの頃、なんとも幸運でした。

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ゲーテの「若きウエルテル」が原作。あらすじを読むと大昔の昼メロみたいです。台本は一種のクリスマスストーリーに仕立て。 ボーッと観ていると、ウエルテルのテナーの独り舞台のようです。ロベルト・アラーニャは確かに有名ですが、わたしにとってはマイナーな歌手。指揮のプラッソンも同様。とにかくテナーのためのオペラのように聴こえます。

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演出のジャコも誰?という感じ。派手なセットも意外な仕掛けもなし。たっぷりとフランス語のアリアに耽溺できないと、猫に小判豚に真珠です。時どきウトウトしながら、周りの聴衆はかなり真剣な面持ちで、食入るように舞台に集中しています。

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大絶賛の拍手。カーテンコール。きっとすごい公演の中にいるに違いない、バスチーユで、マスネのウエルテル、アラーニャのタイトル、プラッソンの指揮----お好きな人にとっては、3星でキャビア、フォアグラ、トリュフ尽くし、前菜は季節の生カキ、メインはジビエ----みたいなもの。うーんでも食あたりを起こしていると、どれもおいしく感じません。その2日後夕刻サンジェルマンデプレ教会でモーツァルトのレクイエムのゲネプロに遭遇しましたが、その頃には食あたりも峠を越え、このまま聴いて帰りたいと思いました。ところで、ウエルテルではサックスが使用されていたと聴こえましたが、空耳かな。(ここに引用した写真は、ネット上から。熱烈ファンがアップしたものらしいです。)

宿泊ホテルはポルトデパンタン。ヴィレット地区にあり、シテドラミュージックの前。楽器博物館には、サックスのサックスが展示してありました。
この楽器博物館(というより音楽博物館という様相)、各時代の代表的オケ作品を再現した展示があります。「幻想」オケの楽器を再現する、とか。当然オフィクレイドが展示されています。初演場所の模型まであって、想像を掻き立てます。そのほかにもコリション、ベルトランのガンバ、ホフマンのリュート、エムシュやタスカンのクラブサン----しばし仕事を忘れて楽しみました。

2014年1月22日 パリ・オペラ・バスチーユ
マスネ作曲「ウエルテル」
主演 ロベルト・アラーニャ 指揮 ミシェル・プラッソン


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