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コーヒー店訪問 アナロジードリンクの貧しさ

『アナロジーとは、あることがらの意味合いを他のことがらへ、類似性に基づいて適用する方法などと説明されますが、「これは何かに似ていないか」「何かと共通性はないか」と考えることです。』

ネットの検索ででてくる、いま評判のコーヒー店やカフェを訪ねてみよう、と歩き回りました。
まずはご存知天下御免の向う傷「行列に並ぶ」ことに。
表参道の青山通り沿いに某コタンなるパン屋に並ぶ行列が目をひきます。ちょっとバカにして眺めていたのですが、その考えは改めなくてはなりません。
ネット検索に誘導されていく先々、どこも行列に並ばずして入店できるところはありませんでした。

土曜日、オペラが美味しそうに見えたインスタに惹かれて、カフェミクニズに。

開店の5分ほど前にお店を発見。学習院小学校の裏手の路地の奥。それでもすでに行列ができていました。列前の人がお店のサービスの人に一巡目で入店可能か尋ねてくれました。すぐにはいれるならわたしも並んでみよう、と。
カフェのみの利用か、ランチか尋ねられ、インスタのオペラが美味しそうで、というとランチの後でも選べると。そこで限定30名様のスパイシースペアリブランチを。
写真を撮ることなどそこそこに、すきっ腹にほりこみました。みなさんていねいに写真に収めてから、まるで主にスマホに食べさせているみたい。
わたし独りどんどん食べて部屋の回転をよくしてしまったかもしれません。
食後、オペラとバナナのサントノレを所望。UCCラルゴといっしょに。思いのほか相性好く。
おバカなので、お土産まで。見事に術中にハマったという体たらく。
サービスが好いものでした。
会計で、冒頭のメートルさんがしっかり顔を出して「オペラはいかがでしたか」と声掛け。記憶力と機転、サービスはそうでなくては。機会があればまた伺います、となるでしょう。2000年丸の内でカフェ、レストラン、結婚式の三毛作四毛作業態を開き、たしか結婚披露宴かなにかで中毒をだしました。その後も、従業員に対する暴力でもニュースに。いまはすっかり「まるく」なられたようですな、動画投稿を見ると。収入が十分にありイライラの元凶が減ったのでしょう。
それにしても、全うなサービスはお客様に、また、いや何度でも再来店してほしいものです。お客様がリピートすればするほど説明の手間が省略可能になっていきます。懐具合を推し量り、全うに美味しいものに散財しそうなお客様なら、一言でも多く声をかけ、お互いが意識していると伝えたいものです。二度と来ないような偵察に時間を使いたくありません。

火曜日。通院ついでドトール。桜のモンブランとブレンド小杯。昨年末の劣化した風味に驚いて、しばらく遠ざかりました。まあまあよかったです。薄利多売は世界情勢の影響大であろうと改めて。
桜のモンブランは、いまひとつ器の生地が生っぽく。この会社は流行を一番最後結果を見てから模倣するような癖があって残念です。もっと、自信を持って企画すれば、よいのに。妙に思いついたアイデアを「とって置き過ぎる」きらいがあります。

水曜日。占野さんに教えていただいた櫻井焙茶研究所、という名前のほうじ茶カフェ。


ヒガシヤ出身らしい。ひとり6000円のコーヒー客単価を目指す方の、アイデアの上流を溯上という具合。
クロモジ、タラのブレンドほうじ茶を3煎じ。間に桜の道明寺羹といぶりがっこ青菜。以上で1850円。
こちら、しっかりとお客様の目の前で点前を見せつけるカウンター形式。急須を傾けて絞りきる所作はきまっていました。煎茶の点前と、台湾の茶芸を巧みに良いとこどり、といっていいでしょう。それをさらにコーヒーに活用しようというのが占野さんでしょう。
しっかり落ち着いた45分ほどは、適正な価格感でした。
ビルの5回までお客様を誘導するのは並大抵ではなかったでしょう。ただ計算するとこの喫茶だけで採算がとれているとは到底考えられず。高級卸をしているのではないかと思います。


土曜日。ヨックモックの旗艦カフェに。ルビーチョコのカフェモカ990円。
安心トイレ代です。いやコーヒーもふつうと思いました。

暗い日曜日の昼前。末広町で下車し、清水坂を湯島天神方向に上がるとみじんこなるコーヒー店目指す。が、すでに行列。しかもスタンド式の予約端末に登録しスマホで呼びだしてもらう。狭い店内がちらりと見え、端末のモニターには待機6組----あきらめて湯島天神に向かって歩き、天神様を突っ切って春日通りに。消防署の並びのタイズに向かいました。
11時30分はまだクローズ札、正午開店なので本郷3丁目交差点に向かって歩くとみじんこの本店、というか焙煎所、アンモナイトが。覗いて尋ねると座って飲めます、とのこと。
エスプレッソシングル280円。店奥で焙煎中。ダクトは建物の裏手をかなりの高さまであげていました。
例えば深煎りといっても、おおむね胸焼けするような酸みが襲ってくるものばかり。
早々に飲み干して、タイズに向かうと狭い歩道内の隣接建物に沿って、行列が。なんとか入れそうではありましたが、挫けて帰宅しました。

家で、コーヒーメーカーで飲み、ダイソーのワンタッチフィルターで飲みするコーヒーの喩えようのない美味しさ、安心感。
クリアな味わいを味を抜いた、個性を殺したと勘違いし、胸焼け、酷いと下痢を起こすような生の味、渋みエグミを原料由来の特性と勘違いして、美辞麗句を並べる----まさかこんなに美味しくない店ばかりとは。
生産地の品評会の焙煎では、そんな味はほぼないか、もしあれば評価が低くなりました。特に後味の残り加減は各国水準以上に良質な処理がされていて、渋みとまでは言えないが、冷めてから鈍重な味わいがいつまでもこびりつくようなものは、何かやりすぎ、例えば過熟にしてしまったとか、判断されていました。一方では、単一品種のクリアさと特徴も経験の多い審査員ほど、粉の香りの段階から「ティピカだ」とか特定するほど、技能的な成熟段階にはいっていたかと思います。もちろんその分、生産者と審査員が思惑のある中間業者として、特長個性を全面に打ち出し、できるだけ高く売りたいと考えていたと思います。

そして、月曜日。厩橋の近くに週休4日のコーヒースタンドがあると検索で。リーブズコーヒーへ。
エチオピアのナチュラル。円錐ドリッパーでペーパードリップ。800円。
シトラス、フラワー系を避け、ベリー系の風味という案内で選びましたが、残念ながら。道に捨て置かれたワンカップ大関のグラスから漂う安酒臭。一体どんなメロンとかストロベリーとかの喩えなのかしら。もう少し褒めるとしても、ヘビータンニンの安いカベルネソービニオン、いやカベソーに申し訳ないくらい。
サービスの人は、流暢に説明してくださいましたが、表現のやりすぎは、説明している人のアナロジーの元になるはずの味覚の生育歴を疑われるようなもの、だと思います。その表現も、その人その人の言葉という感触は低く、ステレオタイプなものに。焙煎しているか、仕入れ担当の評価を一緒に試飲して、「刷り込まれ」てしまっていて、そうではない味わいのコーヒーになることがあり、もっと別に存在するとか、感じとれないレベル。表見の言葉の記号としてでなく、どの程度のレベルを規準としてその「もの」が例えられているか検証もせず、刷り込まれたままではないかと。
ぜひ、意識してより豊かな食生活を楽しみ、価格と味覚を比較対照して自分たちが売る商品の価格帯としてのレベルにあった表現を模索してほしいものです。
「悪貨は良貨を駆逐する」その悪貨の味を喧伝しないでほしい。良貨の洗練を努力してお客様に伝える人たちの邪魔をしないでほしいと願います。


立派な焙煎機の排気ダクトの先は壁の金網張りの排気口に向けられているだけ。戸外から見ると金網にコーヒーのカスが綿ゴミのようについています。
焙煎量が増えるほど、渋くなるでしょう。少し粉の挽き目を粗くして多少はマスクされるでしょうが。
お口に合いましたか、の声掛けに、さすがに正直に「慣れない味なのでちょっと」と。そんな反応は初めてなのかも。おしゃれな偵察隊の若者ばかり相手にして、アナロジーにアナロジーで反応してくれるようなお客様ばかり相手していると、わたしはどんな風に映ったかしら。

まさかとは思いましたが、橋を渡って対岸のコフィノワを目指しました。蔵前神社で桜とミモザを鑑賞し、アンビカでグラブジャムンを買い、同じ町内会にあるコーヒー店に。深煎りのブレンド500円。焦げた苦みと鈍重な酸み、喉ごしの良好な後味は弱い。ブレンドとはいっても融合調和した味わいでなく、いかにも複数のコーヒーがバラバラに感じられ煎りムラなのかしら、と。古い中古の焙煎機が店内鎮座。オープン展示なので、開店営業中は焙煎できない設置。脱煙クリーナーは付いているものの、天井と並行に店の奥へ伸び、外へ出てもダクトは上に上がらず、「Uターン」して店の壁に沿って玄関脇に排気。クリーナーのファンの他に戸外ダクト途中にファンが追加されていました。


これほど、焙煎についてきちんと調べず、探し当てた「商売に有効」な店舗に合わせた設置で開業とは。その中で可能な範囲で費用をかけますから、ビルの屋上までダクトを上げようなど考えもしないのでしょう。その設置で「できる範囲」の試行錯誤から、まあ「飲める」コーヒーを作ります。それは薄氷を踏むような調節の方法で、季節の変化や素材の状態の変化には対応が難しい、安定した味わいにするためには、1杯ずつの抽出まで細かく調節が必要になります。粉の細かさや、分量、1回毎注ぐ湯の量。器具も選ばないと調節が難しくなります。例えば、ガラスサーバーの下にハカリを置いて湯を注ぐことに。いつしか精妙な調節方法を見つけ出したことが、わが店の唯一無二の抽出法に刷り込まれていきます。


お客様に「いやあ、美味しい。高いけどもう一杯おかわり」といってほしくないのかしら。

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