余談  胸焼けする味わい「初恋の世界」

「初恋の世界」10巻。40歳の4人の周辺が目まぐるしくてハラハラ。
ああみなはやく幸せになってほしい。だんだん読むのが辛くなってきました。
主人公だけが9巻10巻でハッピーそうなのですが、何しろ4人の人生模様がくるくると、眩暈がしてきます。
そんなにまでして、自己肯定したくないものなのでしょうか。いまの40歳くらいの女性がみなそうなのか、作者が何が何でもそう描きたいのか。
年下のイケメンから好かれるわけがないと、遠ざけ続ける女1。
努力しなくても男が寄ってくる友人のそばで、努力し続け目当ての男を振り向かせようと、半ば狩るように追い詰める女2。
インスタが不倫相手の嘘を証明しているのに、すがり続け孤立する女3。
医者と結婚して1男1女をもうけ、もっとも普通に幸せだった専業主婦の女4に対しては、泥沼波状攻撃。解決したようで、全くハッピー感なし。
4人は友だちの「はず」なのに、それぞれの物語にはあまり干渉しません。干渉しあわず、助け合わず、助けを求めず、な雰囲気。
この他者との関係の分断された感覚が、作者が描きたいことなのかしら。

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女1は、やりがいのあるスペシャルティコーヒーのチェーン店店長。
女2は、玉の輿を願う事務系OL。女3は、教諭。女4は、子持ち専業主婦。
4つの泥沼がほぼ終わったようにも読めるのですが、何かもうひと波乱ありそう。
当初スペシャルティコーヒーで特徴づけされた物語でしたが、やはり胸焼けする味わいが好まれている、そんな世相の反映とも感じられます。
生焼けで渋い味が喉にいつまでも残る女1。生ごみのような匂いがする熟れ過ぎた女2。水をかけて消した焚き火のような燻された女3。環境も筋も良いのに未熟なエグみが強い女4。
このまま「胸焼け」したまま終わるとしたら、西炯子の他の作品を読む気が失せてしまうでしょう。



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