笑うバロック展(65) やはり愛が必要だ、ハンドブックの時代

中国は紙に印刷された書籍、その読者育成と書店の復興を推進していたようです。
棚を整理していて、バロック音楽関係の雑誌というか、ムックというか、小冊子というかが。
左上は、1997年制作のVHSです。

「表情豊かな演奏」に必要なのは「音量と音程のコントロール」ですが、そのテクニックが詳しく紹介されることは、これまでほとんどありませんでした。このビデオでは、音量と音程を調整するそのテクニック(シェーディング、スライディングと替え指)について詳しく解説しました。この方法を用いると、遅いテンポの曲も豊かな表情をもって、またとてもリラックスして演奏できるようになります。

というもの。著者の花岡氏は立派なリコーダーの専門家です。リコーダーの世界は専門化するほど使用する、または所有する楽器の種類が増え、せいぜい2、3本で楽しんでいるアマチュアには荷が重くなっていました。「音量と音程のコントロール」または「調節」、はプロにとっては最初に習得すべきもののはず、アマとの決定的な「差異」かも。
同じ1997年に浜中さんの「音楽指導ハンドブック」。現代では、ここからさらに「発音」、「演技」とか「ゼスチャー」の復興に進展し、バロックオペラなどの演出に活用されています。知ってはいても、ヨーロッパの舞踊に関しては日本人は体格的なハンデが大きいと感じていましたが、どうしてどうしてバレエダンサーの方々の活躍を観ていると、隔世の感。パリのガルニエ宮でバレエ鑑賞をしてみたくなります。
「ウルur」誌は、それ以前は「WAVE」という冊子でした。1995年発行の10号は映画の公開に合わせたコラボ企画。そしてすでに2冊の「カストラート」関連の翻訳書籍が出版されていました。この時期、この一映画作品のためのキャンペーンは結構規模が大きいと思います。この冊子の協力者に瀬高道助氏がいて、当時よく見かけた名前でした。1996年に「古楽CD100ガイド―グレゴリオ聖歌からバロックまで今いちばん新しい音楽空間への冒険」を金田敏也(現クラシックCD輸入業「サラバンド」代表)、谷戸基岩(きっと気骨のある評論家)、鈴木昭裕(イタリア語翻訳家)、那須輝彦(現青山学院大学文学部教授)の各氏と。瀬高氏自身は、ちょっと謎多き。
先年亡くなった礒山雅氏は、1988年春の「NHK市民大学」で「バロック音楽」という講座を持ちました。45分の講座が12回。ビデオに撮って鑑賞した覚えがあります。1600年頃のモンテベルディから、1750年バッハ逝去近辺の宮廷教会から市民生活への浸透までを、多彩な音声と動画で紹介。
この後、バブル期はメセナの時代になり、こうした講座はたくさん開かれたと。1998年頃のNECなども積極的に古楽のレクチャーに協力していました。そういえば、当時ヘンデル学者の渡部恵一郎氏(1932-2001)もヘンデルの上演について演技的ゼスチャーの発言や発信がかなりあったと記憶しています。来年2020年4月に新国立で「ジュリオ・チェーザレ」が上演予定。

「バロック音楽」目次 : 1.装いに真実を求めて-バロック音楽の始まり / 2.音楽による祝祭-オペラの誕生 / 3.この世における聖の開花-宗教音楽の高揚 / 4.廃墟に流れる歌-ドイツ音楽の目覚めと発展 / 5.歌うヴァイオリン-イタリアにおける器楽の興隆 / 6.大御代を輝かす楽の音-フランス音楽の一世紀 / 7.趣味さまざま-国民様式の対立と和合 / 8.音楽を消費する先進国-イギリスとヘンデル / 9.神と人間に注ぐ愛-バッハにみるバロック音楽の深まり / 10.数を数える魂-バロック音楽の思想 / 11.コーヒーを飲みながら、音楽を-十八世紀における音楽の市民化 / 12.現代に息づくバロック-受容史と今日的意義


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