笑うバロック展(110) 礒山100選 プラス皆川100選

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礒山100選は、17世紀初頭から18世紀前半の1世紀半を想定し、おおよその発表年代順の並べ、作曲家はペルゴレージの1710年生で区切り、バッハの息子たちは除きました。
歌劇の生まれた時代でもあるため、録音点数増とも相まって選曲が多い。
協奏曲が登場もしています。

声楽作品 歌劇13曲 宗教曲28曲 世俗曲6曲
器楽作品 協奏12曲 鍵盤ソロ17曲 その他のソロ13曲 合奏曲10曲
規模はまちまちだが、バッハ22曲 ヘンデル6曲 モンテベルディ5曲 ビバルディ4曲 シュッツ3曲
▲は聴いてみたものです。

皆川100にあって、礒山100に選ばれなかった作曲家。
△オトテール ホ短調組曲
△シャイン イスラエルの泉
△クーナウ 聖書ソナタ
△サカラメンタ提要 皆川のライフワークのひとつ1605年長崎で出版。内容はバロックとはいえないが。

皆川100選は、ルネサンス・バロックにまたがり紹介していますが、最大の特徴は「バッハとヘンデル」を省いたことです。皆川氏のまあ英断かしら。そうなると省かざるを得ないもの、省くことができないものが浮かび上がってきます。2著推薦だから「特選」とは言いませんが、参考になります。
2著ともに推薦のものは頭に[皆川100]を付けました。
推薦曲の詳細が違うものは、後に[皆川100]を付け注意書きしました。
[皆川100]の付いていないものは、礒山100選だけのもの。


001 [皆川100] カッチーニ 歌曲《アマリリ麗し》 ▲★

002 ゲドロン エール・ド・クール宮廷歌曲《死すべき者よ》

003 モンテヴェルディ(1) 《マドリガーレ集第4巻》 ▲
 [皆川100]は第6巻、第8巻を推薦。

004 スウェーリンク 変奏曲《わが青春はすでに過ぎ去り》▲ 
 [皆川100] エコーファンタジーを推薦。

005 [皆川100] モンテヴェルディ(2) 歌劇《オルフェオ》 ▲
006 [皆川100] モンテヴェルディ(3) 《聖母マリアの夕べの祈り》 ▲

007 プレトーリウス 舞曲集《テルプシコーレ》 ▲ [皆川100]はルネサンス編に編入。

008 ガブリエーリ 《カンツオーナ》 ▲

009 フレスコバルディ オルガン曲集《フィオーリ・ムジカーリ》 ▲
 [皆川100]カッコー・カプリッチョを推薦。

010 [皆川100] シュッツ(1) 《音楽による葬儀(ムジカリッシェ・エクセクヴィエン)》 ▲

011 モンテヴェルディ(4) 歌劇《ウリッセの帰還》 ▲
012 モンテヴェルディ(5) 歌劇《ポッペアの戴冠》 ▲

013 [皆川100] カリッシミ オラトリオ《イェフタ》 ▲★
014 シュッツ(2) オラトリオ《十字架上の七つの言葉》 ▲
 [皆川100]はクリスマスオラトリオ、ヨハネ受難曲、ダビデ詩編が推薦。

015 ヴァン・エイク 無伴奏リコーダー曲《涙のパヴァーヌ》 ▲
016 シュッツ(3) 《宗教的合唱曲集》 ▲
017 チェスティ 歌劇《オロンテーア》 ▲
018 シャンボニエール クラヴサン組曲ニ短調 ▲
019 カヴァッリ 歌劇《カリスト》
020 トゥンダー モテット《ああ主よ、あなたのいとしい天使に命じて》 

021 フローベルガー チェンバロ組曲第20番ニ長調 ▲ 
 [皆川100] フェルディナンド3世のラメントを推薦。

022 リュリ(1) コメディ・バレ《町人貴族》 ▲
023 ストラデッラ オラトリオ《洗礼者聖ヨハネ》 ▲

024 [皆川100] ビーバー ヴァイオリン曲集《ロザリオのソナタ》(全15曲) ▲★
 [皆川100]当時ベネヴォリ作とされた「53声のザルツブルクミサ」を推薦。 

025 [皆川100] リュリ(2) 歌劇《アティス》 ▲★

026 ブクステフーデ オルガン曲《プレリュードとフーガ》ト短調 
 [皆川100] コラール「暁の星は」推薦。

027 ドラランド 《テ・デウム》 ▲
 [皆川100] 「深き淵より」を推薦。

028 [皆川100] パーセル(1) 歌劇《ディドとエネアス》 ▲★

029 [皆川100] コレッリ(1) 合奏協奏曲《クリスマス協奏曲》
 [皆川100]クリスマス協奏曲の括りでマンフレディーニ作も推薦。 

030 シャルパンティエ(1) 《ルソン・ド・テネーブル》 ▲

031 パーセル(2) 《聖セシリア日のための頒歌》▲
 [皆川100] メアリ女王の誕生日オードを推薦。

032 [皆川100] シャルパンティエ(2) 《真夜中のミサ曲》 ▲

033 ブロウ 《ヘンリー・パーセル氏の死を悼む頒歌(オード)》 ▲
034 ブルーンス オルガン曲《プレリュードとフーガ》ホ短調
035 カルダーラ オラトリオ《キリスト足下のマグダラのマリア》
036 グリニー 《オルガン曲集第1巻》

037 [皆川100] コレッリ(2) ヴァイオリン・ソナタ集作品5(全12曲) ▲
 [皆川100]トリオソナタop1-9も推薦。

038 カンプラ 《レクイエム》 ▲
 [皆川100] オペラ「タンクレード」を推薦。

039 ベーム コラール・パルティータ《ああ、いかにはかなき、ああ、いかに空しき》

040 マレ ヴィオール曲《サント=コロンブ氏へのトンボー(墓)》 ▲
 [皆川100] ハ長調組曲(1692年刊トリオソナタ集)を推薦。

041 A・スカルラッティ セレナ一夕《愛の園》 
 [皆川100] オラトリオ「ジュディッタ」推薦。

042 [皆川100] ジル 《レクイエム》 ▲★

043 ヘンデル(1) 詩篇曲《ディクシト・ドミヌス》 ▲

044 [皆川100] バッヘルベル 《カノンとジグ》 ▲★

045 デマレ グラン・モテ《主は、統べたもう》
046 バッハ(1) カンタータ第106番《神の時は最良の時》 ▲

047 [皆川100] ヴィヴァルディ(1) 二つのヴァイオリンのための協奏曲イ短調op3-11「調和の霊感(幻想)」 ▲
048 [皆川100] ヴィヴァルディ(2) 《グローリア》ニ長調 ▲

049 [皆川100] ゼレンカ トリオ・ソナタ第2番ト短調

050 バッハ(2) 無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調 ▲

051 ド・ヴィゼ リュート組曲嬰ヘ短調
052 フックス オラトリオ《癒しの泉》
053 ヘンデル(2) 《水上の音楽》

054 [皆川100] A・マルチェロ オーボエ協奏曲ニ短調 ▲★

055 バッハ(3) 無伴奏ヴァイオリンのための《シャコンヌ》 ▲

056 ヴィヴァルディ(3) リコーダー協奏曲ハ長調 ▲
 [皆川100]フルート協奏曲「海の嵐」推薦。現在シェドビーユ作とされる「忠実な羊飼い」のハ長調ソナタ(皆川氏の番組主題曲)推薦。 


057 バッハ(4) 《ブランデンブルク協奏曲》第1番ヘ長調 ▲

058 クープラン(1) クラヴサン曲《フランスのフォリア》 ▲
 [皆川100] 「恋のうぐいす」推薦。
 [皆川100] 別に、教区のオルガンミサを推薦。

059 バッハ(5) 《平均律クラヴイーア曲集》第1巻(全24曲) ▲

060 [皆川100] アルビノーニ オーボエ協奏曲二短調 ▲★

061 バッハ(6) カンタータ第147番《心と口と行いと生活が》 ▲
062 バッハ(7) 《ヨハネ受難曲》 ▲
063 ヘンデル(3) 歌劇《ジュリアス・シーザー》 ▲

064 [皆川100] ラモー(1) 《クラヴサン曲集第2巻》 ▲ [皆川100]は「めんどり」。

065 [皆川100] ヴィヴァルディ(4) ヴァイオリン協奏曲《四季》(全4曲) ▲

066 [皆川100] クープラン(2) 《リュリ讃》★
 [皆川100] 別に、「諸国の人々」の「神聖ローマ」を推薦。

067 バッハ(8) 《パルティータ》第1番変ロ長調 ▲
068 バッハ(9) カンタータ第198番《侯妃よ、どうか光をもう一筋》
069 バッハ(10) 《マタイ受難曲》 ▲

070 バッハ(11) トリオ・ソナタ第3番ニ短調 ▲
071 ボワモルティエ ファゴツト・ソナタト長調
072 バッハ(12) 二つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 ▲
073 バッハ(13) 《G線上のアリア》管弦楽組曲第3番ニ長調より ▲
074 バッハ(14) カンタータ第140番《目覚めよ、とわれらに声が呼びかける》
075 ジェミニアーニ 合奏協奏曲コンチェルト・グロッソホ短調

076 [皆川100] テレマン(1) 《ターフェルムジーク》 ▲
 [皆川100] ハンブルクの潮の満ち引き、トランペット協奏曲、リコーダーと弦楽の組曲も別途推薦。 


077 [皆川100] ペルゴレージ(1) 歌劇《奥様女中》 ▲

078 ロカテッリ 《ヴァイオリンの技法》[皆川100] クリスマス協奏曲を推薦。

079 バッハ(15) 《コーヒー・カンタータ》 ▲
080 バッハ(16) 《マニフィカト》 ▲
081 ルクレール ヴァイオリン・ソナタハ短調《トンボー(墓)》 ▲
082 ヘンデル(4) 歌劇《アルチーナ》 ▲

083 ラモー(2) オペラ・バレ《優雅なインドの国々》 ▲ 
 [皆川100] 「ピグマリオン」推薦。

084 [皆川100] D・スカルラッティ チェンバロ・ソナタ(全500曲強) ▲

085 バッハ(17) フルート・ソナタロ短調 ▲

086 [皆川100] ペルゴレージ(2) 《スターバト・マーテル》 ▲

087 テレマン(2) 《新パリ四重奏曲》▲
088 バッハ(17) チェンバロ協奏曲第1番ニ短調 ▲
089 バッハ(18) オルガン曲《プレリュードとフーガ》変ホ長調
090 ヘンデル(5) 合奏協奏曲集コンチェルト・グロッソ作品6(全12曲) ▲

091 ヴァイス リュート組曲第19番ト短調 
092 バッハ(19) 《ゴルトベルク変奏曲》 ▲
093 セイシャス チェンバロ・ソナタ(全88曲) ▲
094 バッハ(20) 《フーガの技法》 
095 ヘンデル(6) オラトリオ《メサイア》 ▲

096 [皆川100] タルティーニ ヴァイオリン・ソナタ《悪魔のトリル》▲★

097 バッハ(21) 《音楽の捧げもの》▲
098 バッハ(22) 《ロ短調ミサ曲》▲

099 ヘンデル(7) ヴァイオリン・ソナタニ長調 ▲
100 ラモー(3) 歌劇《レ・ボレアード》▲

2007年の礒山版「バロック音楽名曲鑑賞事典」、100曲のうちバッハとヘンデルで28曲。ほぼ1/3です。1998年に皆川達夫が著した「名曲名盤100・ルネサンス・バロック」では、1998改定前には「百章のうち三十二章をバッハ、ヘンデルの作品に当ててきましたが、今回の改訂にあたってバッハ、ヘンデルの作品はすべて割愛しました」。皆川さんはビバルディ5曲も省きたかったに違いありません。はっきりと好まないと公言し、本の売り上げを考慮して「四季」を取り上げると憚りません。バロック作品は56/100、44/100がルネサンス以前に当てられています。
礒山版が、モンテベルディ5曲 ビバルディ4曲 シュッツ3曲。皆川版は、モンテベルディ4曲 ビバルディ5曲 シュッツ4曲という具合。
モンテベルディを例にすれば、「晩課」と「オルフェオ」、「マドリガーレ」が代名詞であり共通。あと皆川は「タンクレディとクロリンダの戦い」、礒山が「ウリッセ」「ポッペア」とオペラを掲げています。入手のしやすさと紹介される範囲の展開が違っているだけで、方向性と質は共通でしょう。器楽だけの作品がないので仕方ありませんが、「声楽の時代」感がよく伝わってきます。
シュッツも「音楽による葬送」を共通に同様傾向。それでビバルディを見るとアホらしいくらい同じ。声楽は「グロリア」のみ。「四季」「レストロ・アルモニコ」と様々な楽器のための協奏曲。皆川版はプラス、現在「伝ビバルディ(シェドビーユでほぼ確定)」の「忠実な羊飼い」ソナタ集をあげていますので、全く同じ考え方です。片やルネサンス以前が専門、片やバッハ以降が専門の方。いかに嫌われているか!!そんなにビバルディが好きというのが恥ずかしいかしら。「グロリア」の解説にはビバルディには多数のオペラや宗教曲があり、それを取り上げないのはビバルディの半分しか見ていないのと同じ----だと。
ゼレンカの扱いは、2冊とも「トリオソナタ」の「ト短調」作品ひとつだけ元来が同じ目的で作られた本ですから、仕方ないのでしょうが。
シャルパンティエは、代表作の割に録音の少ない「真夜中のミサ」。礒山版は「ルソン」を選んでいます。皆川版は当然1作品だけですが、「エレミアの哀歌」をタリスの作品の代表として選択しています。
さて、バロックの作品で選択が全く共通する作曲家の作品が、一応バロック時代の名曲と考えると(★印)、カッチーニの「アマリリ麗し」、カリッシミ「イエフタ」、リュリ「アティス」、クープラン「リュリ賛」、ジル「レクイエム」、パーセル「ディドとエネアス」、ビーバー「ロザリオのソナタ」。外せないものとして、パッヘルベル「カノンとジーグ」、マルチェロのオーボエ協奏曲、アルビノーニのオーボエ協奏曲あたり。後やはり録音の少ないタルティーニ「悪魔のトリル」。
バランスが取れすぎているような気もします。まるで標題付きの方が一般的にウケるとばかりです。
わたしが聴きはじめた時代は、もはや「バロック名曲集」とか「ピアノ名曲集」というのが少なくなったときでした。前述のカッチーニからタルティーニまでをすべて聴くためには、約15枚のCDを買い集めないといけません。もしかすると、このあたりがユーチューブの活躍に期待?なのかもしれませんが。

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