はみだしチチ、または「黒い三連星」

イギリス古楽のダブルベース(コンバス)奏者でチチ・ナノクというアフリカ系の女性奏者が活躍しています。
彼女のヴァンハルとディッタースドルフの協奏曲を聴きながら、目立たない人と思って検索したら----孫悟空の夫人ではありません、念のため。
チチは、アフリカ系のクラシック奏者たちに声をかけて、オーケストラを創設したらしい。
そのチネク・オケ(?チネケらしい)のベートーベンのイ長調交響曲の動画を拝聴。ほぼ真っ黒なオーケストラ。
そういえば、イギリスはコーリッジ・テイラーという作曲家がいたっけ、と。そのコーリッジ・テイラー作曲の管弦楽のためのバラードの動画もあり。コーリッジ・テイラーはアメリカでは「黒いマーラー」として成功。へーっ!!いや待てよ「黒いモーツァルト」もいたはず。
それでサンジョルジュに跳び。
作曲のみならずフェンシングマスター、サンジョルジュの資料の中に、下の絵が参考に。
シュバリエ・デオンという人物との試合。激闘の末にサンジョルジュが「負け」と。
このシュバリエ・デオンなる人物が----どうも「逆」オスカルらしい。

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本当に最近できたオーケストラのようですな。
ダブルベース(コンバス)については、CDの解説によると、20世紀の名手としてセルゲイ・クーセヴィツキーがあげられています。コンバス協奏曲も書いているらしい。クーセヴィツキーはバーンスタインの師匠であり、使用していたアマティ・コンバスはゲーリー・カーに承継されている、とのこと。
しかし、わたしにとってコンバスといえば佐久桜です。桜も十分チチのオケに入る資格がありそうです。

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チネケ!オーケストラという団体。2015年に創立され、2017年夏のBBC Promsにも初登場したまだ若いオーケストラ。どんなオーケストラかと言うと、ヨーロッパ初の「黒人と少数民族によるオーケストラ」です。創設者は、エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団(OAE)の創設メンバーであり、首席コントラバス奏者を30年以上に渡って務めた名手、チチ・ワノク(Chi-chi Nwanoku)です。彼女はナイジェリア系とアイルランド系のイギリス人で、芸術監督と首席コントラバスを務めています。

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「ピアニストだって冒険する」で中村さんが書いていた「豊かな社会」に向かうクラシック音楽の世界を例えた段「ローマ市民はひたすら『パンとサーカス』を享受する側にまわり(中略)ついには皇帝まで、蛮族や解放奴隷出身者にまかせてしまった」を思い出しつつ、その前の時代にあたるバロック音楽の「異国趣味」はどう違うのかしら。後の時代になると植民地拡大を経てブラム・ストーカーの「ドラキュラ」に描かれるゼノフォビアの時代に。

またしても、バロック時代は実際に目的の音が出ていなくても、聴衆は想像で補えたが、市民革命以後は実際の音を求めるようになった----というアーノンクールやブリュッヘンがした話を思い出さずにはおれません。

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