各「地方」の発掘という段階の哀歌、ヴァン・エルモン「ルソン・ド・テネブル」
化学美食が騒がれ始めたころ、デュカスがインタビューで自らのルーツを地方料理と語っていたように記憶しています。各地方の富裕層のお屋敷の料理ということらしい。なんとなく思うのは、細かく深く掘り進む科学的料理と洗練させる技術を共通項に世界規模で各地の料理を変化させてきた流れが、中南米あたりでゴチャゴチャと。業界の大きな戦略とも思うのですが、美食家は地球上を飛び回ることに。
哀歌もヨーロッパの覇権が広がるのに応じて、意外な時代地域の作品が掘り起こされていくことでしょう。
フランスでは王政を称える音楽の取り扱いが微妙でも、オランダ、ベルギーはじめ古楽が花開いた地は王国が多いかもしれません。
デュメストルといい、アクテンといい、贅沢な王宮の料理や料理人には罪はない、という感じ。
もちろん負の類推は消えないけれど、35年間も楽しんで接してくると、もう後戻りできない、と感じます。一緒に背負っていくしかないのだ、と。
マリーアントワネットの好んだハープではないけれど、装飾が過剰気味なのに贅を尽くした粋の極まった感触もあります。だるまのようなブリオッシュが美味しいのです。
冒頭の振りが大きく、ちょっと驚きました。「聖金曜日のための第3ルソン」。2つめの「聖金曜日のための第3ルソン」はドラランドの名作の匂いが少し。
バロックと古典派の間、フランス語圏の伝統とギャラント様式の間をゆく注目作
ヴァン・エルモン作曲 : ルソン・ド・テネブル
ニコラ・アクテン監督スケルツィ・ムジカーリ
シャルル=ジョゼフ・ヴァン・エルモン(1715-1790):聖週間のための暗闇の朝課(ルソン・ド・テネブル)
聖水曜日のための第1ルソン(1737)
聖水曜日のための第2ルソン(1737)
聖水曜日のための第3ルソン(1737)
第1フーガ(オルガン独奏)
聖木曜日のための第1ルソン(1737)
聖木曜日のための第2ルソン(1737)
聖木曜日のための第3ルソン(1737)
第3フーガ(オルガン独奏)
第4フーガ(オルガン独奏)
聖木曜日のための第3ルソン(1756)
第5フーガ(オルガン独奏)
聖金曜日のための第1ルソン(1737)
聖金曜日のための第2ルソン(1737)
聖金曜日のための第3ルソン(1737)
第2フーガ(オルガン独奏)
聖金曜日のための第3ルソン(1756)
第6フーガ(オルガン独奏)
調律: ラモー/ピッチ: A=411Hz
スケルツィ・ムジカーリ(声楽&古楽器アンサンブル)
フアン・ウェイリャン、デボラ・カシェ、フリート・ド・ヘイテル(ソプラノ)
ベニアミーノ・パガニーニ(チェンバロ)
ヴァランタン・バジュ(バス・ド・ヴィオロン、チェロ)
マティルド・ヴォルフス(バス・ド・ヴィオロン)[10、16]
フランソワ・ダンボワ(テオルボ)
ニコラ・アクテン(オルガン、指揮)
2022年8月16-19日 聖ヒラリウス教会、ビールベーク(ベルギー中部フラームス・ブラバント地方)
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