2012年夏、新聞記事とブログを交互に読む

2012年7月20日。時節柄なんとも景気を高揚させるような記事を読みました。
この記事のコーヒー屋さんのところで飲んだコーヒーが大変美味しく、あんな材料が手に入るなら取引したい----という人たちがいっぱいでるのでしょうか。
わたしは先日、伊那谷の富永農園さんを訪問しました。猛暑でブルーベリーとサクランボの収穫を急いでいました。
そんな中、ていねいに見せていただき、ブルーベリーを品種ごとに手摘みして試食させてくださいました。良質な熟度のブルーベリーは、甘みが強めで酸味がとてもソフトでした。香りは揮発性の高い香りが強めで、ブドウよりややメロンより。もうひとつ、熟度がいまひとつのものも試食。こちらは、酸味がスパークして、よくいえばシャンパンみたいといえなくもありません。香りはブドウの皮の香りが強く、これもよく言えば赤ワインのような、といえなくもない。不味くないという表現も、やはり言った者勝ちの世界のようです。どちらのことを「ブルーベリーのような」というかは、言った人のセンスと、体験経験の集積如何によります。
このコーヒー屋さんは、どうも典型的な「現代の日本が望む」人材と思います。思いますが、このコーヒー屋さんは、誰にコーヒーを楽しんでもらうためにがんばっているのか、よく考えてみないといけないように感じます。捉えようでは、いよいよ軽井沢という地域(軽井沢に「地域」があるかどうかは難しいところですが)を離れ、ユニクロ化しようということかと読めます。だとすると、このコーヒー屋さんの東京進出は、「どこにも根を持たない人間」の初めの一歩なのかもしれません。

(日経記事) 軽井沢の人気店、丸山珈琲、都内に初出店、生豆の卸売りにも参入。2012/07/18 日本経済新聞 地方経済面 長野 / 軽井沢の人気コーヒー店、丸山珈琲(軽井沢町、丸山健太郎社長)は9月、東京都内に初出店する。現在、店舗は長野、山梨両県のリゾート地のみ。来店者からの注文などで県外からの通信販売が増え、都内で多店舗展開も検討する。併せて、高品質の生豆の卸売販売も始める。焙煎(ばいせん)技術が評価されるなど知名度の高まりを生かして事業を拡大する。 / 店舗は東京・世田谷にある尾山台の商店街に出す。60平方メートルに14席。尾山台には現在、焙煎豆販売店と、専門家や一般の参加者にコーヒーについて講義するセミナー会場を兼ねる施設がある。2014年に都内にさらに1店舗を出すなど、今後は首都圏での多店舗展開を検討する。

(内田ブログ)  西水恵美子さん(元世界銀行副総裁)がグローバルリスクについて書いていた。西水さんはブータンが人口70万の小国であり、かつ多民族・多言語国家でありながら、よくその国民的統合を保ち得たのは、先王雷龍四世の国民国家観が堅牢だったからだとみている。 / 王は1989年の勅令にこう記している。「国家固有のアイデンティティーを守る以外、独立国家の主権を擁護する術を持たない。富や、武器、軍隊が、国を守ることはできない。(・・・)異邦文明を避け、我らの文明を献身的に責任を持って慣行とせねばならない。」よく知られた「国民総幸福」(Gross National Happiness)という概念はこの王の提唱したものだが、「文明の持続的発展を国政の中心に置く」ものである。
日本の国民国家としての危機はまさにこの「国家固有のアイデンティティ-」を企業収益の増大のために、ほとんど捨て値で売り払いつつあることによる、というのが西水の診断である。
「日本にはその逆、政治と経済の低迷に後押しされる人材流出が国家経済を空洞化するリスクがある。(・・・)この数年来、スーパーシチズンという呼び名の国籍を超越する中産階級が、世界中で増えている。人作りが国作りではなくなる21世紀のグローバルリスクだ。その到来にわが国の政治家は気づいている様子はない。」(毎日新聞、7月15日)

(日経記事) 食味や栽培管理などの厳しい基準をクリアしたスペシャルティコーヒーを取り扱う。発祥地の欧米で人気となり日本でも需要が伸びている。丸山社長は世界の同分野の審査員も数多く務める国内の第一人者で、丸山珈琲はここ10年で年商を1500万円から7億円(2012年6月期)に伸ばした。

(個人の感想) 日商5万円から、日商230万円にということです。店舗の日商が増え、店舗自体も増え5軒で仮に合計日商100万円達成していると計算したら、残りは卸売部門でしょうか。1キロ2000円から3000円程度で取引して、1日500キロから販売している計算。売上がコーヒーに特化していることを想定すると、ですが。

(日経記事) 生豆は一般的に輸入商社などを通して調達するが、高品質の豆を選別できる専門人材が不足し、国内需要の伸びに供給が追いついていなかったという。丸山珈琲は自社で扱うコーヒー豆のほとんどを自社で輸入。仕入れた豆について一部のコーヒー豆業者にも販売していたが、卸販売に参入することで対象を広げる。

(内田ブログ) 「グローバルな競争」というゲームを「誰かがもう始めてしまった」ので、「オレたちは『バスに乗り遅れない』ために必死になるしかないんだよ」という悲鳴に近いものを私は聴き取った。
「バスに乗り遅れるな」というのは日本人を鼓舞する最も効率的な言葉であるが、そこには「バスの行き先を決めるのも、バスを製造するのも、バスを運転するのも私たちではない」という深い諦観がこびりついている。
人類がどこにゆくのか、その行き先を誰が決めるのかという問題について、それは自分ではないかということについて一瞬も考えたことのない人間だけが「バスに乗り遅れるな」という言葉に絶望的な切迫感を感じるのである。 

(個人の感想)  有能なコンサルタントが「バスに乗り遅れるな」と囁いているのかしら。アメリカのバスの方が早く目的地に着きます、と。日本のバスはガラパゴスのバスだ、と。君がアメバスで颯爽と走れば、みな乗り遅れまいと必死についてくるでしょう。

(日経記事)  生豆の仕入れにあてる資金として4000万円を群馬銀行から借り入れる。来年3月にかけて生豆が入荷する時期に合わせ卸売事業を拡大し、25~30トンを新たに扱う。3年後には取引先を新たに8社程度増やし、生豆の卸売りで2億円の売り上げを目指す。都内の開店資金1500万円も群馬銀から借り入れる。

(個人の感想)  生豆仕入用には、毎月の返済が50万円くらいになりそうです。開店資金は、毎月20万円らい。日商230万円の企業なので、軽い軽いなのでしょうか。4000万円で30トン買ったと計算すると、1キロ1300円くらい。拠点地域の全域に店舗展開し掌握し、大都市へ店を構え、というのがアメリカのサードウエーブスタイルですか。

(日経記事)    丸山珈琲は1991年に創業。コーヒーをいれるバリスタの国際大会に出場実績があるなど社内の人材も養成している。

(個人の感想)  熱心だけれど、実績はどうでしょう。立派に結果を残していると解釈する人たちもいますし、あれだけ入れ込んでどうして優勝できないのかと批判する人たちもいます。さらに言えば、このもっとも経費がかさむ人材育成の費用は、誰が出しているのでしょうか。特別スポンサーがついていると良いのですが。かっこよくお客様ひとりひとりの1杯1杯がスポンサーということでしょうか。だとすると、このコーヒー屋さんのお客様は、投資の配当や恩恵がしっかりあるのかどうか、目を光らせておかないと。



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