笑うバロック展(85) レジェンド探索 レネー・クレメンチッチ

日本ではかなり有名。図書館に常備されてました。
なのに名前ひとつおさまり悪く。ルネ・クレマンシックなのか、レネー・クレメンチッチなのか----もっとも昔はブリュッゲン、バイルスマ、カユケン、ハルノンクールでしたが。
しかしどこか「胡散臭さ」が拭えない、そんな人。
リコーダー奏者としては、間違えろとばかりリンデ盤そっくりプログラムのレコードを作ったり。マンローと間違われそうな「古笛の響き」とか、中世ものも出したり。演奏はどこか大雑把な印象が。それなのに岩波ホールで上映された映画のサウンドトラックを担当したり、サバールの先駆。
ところが「ドナウ君主国の子」としてフックスの名盤を作り。レーヌを有名にしたペルゴレージのスタバトマーテルも優秀録音とは言えないのに名盤扱い。多芸多才が過ぎる感じ。
当然まだお元気な様子。
ほぼ同年代の皆川達夫先生は、「LP時代にあったクレマンシック指揮の『カルミナブラーナ』は、完全に開き直って 勝手な想像による創造 をおこなっています。一度聞く限りではそれなりに面白く感じられますが、しょせんクレマンシックの捏造であることを忘れてはならない」と評しました。なんとなくですが、皆川評で「捏造の演奏家」のイメージを強くしてしまいました。
そうはいうものの、これだけ国内盤がでて、図書館に収蔵されて、つまり影響力があり、「一度聞く限りではそれなりに面白」いというのも説得力があった、ということなのでしょう。説得力があればそれがオーセンティックだというレオンハルトの言葉を思い出しつつ。同時に、皆が分かるということは、音楽が幼稚か、皆が音楽の言語を学んだ場合しかない、というアーノンクールの言葉も。そのはざまで活躍するクレメンチッチは大衆に迎合した音楽家なのでしょうが、「問いかけ」続ける音楽家なのかも、ね。

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レネー・クレメンチッチ(René Clemencic 1928‐ )はオーストリア共和国ウィーン市在住の作曲家、指揮者、リコーダー奏者、クラヴィコード奏者、チェンバロ奏者、オルガン奏者である。クレメンチッチは、自身を典型的な「ドナウ君主国の子」と言い表し、祖先をイストリア、スロベニア、チェコ、ポーランドなどオーストリア=ハンガリー帝国の各地域にたどることができるという。

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