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70.わたし、帰郷。

例えば、ここには書けないくらいの
秘密を抱えて
どこにも行けなくなってしまった。

東京に住んで
夜は芝居の世界を生きて
生きて、生きて、生ききって

少し疲れてしまった。

心にぽっかり穴が空いたみたいだ。

泣いて泣いて、そろそろ泣きつかれた。

健全じゃなかった。
とても、健全とは言えない生活を送っていた。

だから、
ふつうの世界に帰ってきた。
健全な両親が暮らす実家に。

ここは、空が広くて
どこまでも緑がまぶしくて
山々が雄大で美しい。

その景色たちは
穴が空いて色々なものがこぼれ落ちてしまった心を
優しく繕って少しずつ水を注いでくれるよう。

わたしをわたしにしてくれたのは
間違いなくここなのだと思う。

優しい空想ができたのは
イキイキとした文章が書けたのは
ここで18歳までを過ごしたからだ。

麦畑がほら、風に揺れている。
きれいだなぁ。

わたしの心のふるさと。
心地よく息のできる場所。

わたしはこの先どうしたいのか。
そんなこたえ、簡単には出せない。

これ以上頑張れるのか。
頑張るのか?
頑張ると思っているうちはもう、頑張れない。

必死でくらいついて
楽しいには楽しいけれど
同じくらいに辛かった。

大好きなことのはずなのに
同じくらい大嫌いにもなった。
大嫌いで、大好きなこと。
演じるということ。
やめられないくせに怖いこと。

ねぇ、わたし。

ここがひとつの節目だよ。
限界を認めるからこそ、次にいけるのだと
彼は言った。

彼が言ったのだ。

だから、
わたしは置いていく。
そうやってわたしは進む。
怖いけど。辛いけど。
でも今のままじゃいられない。

今のままじゃ、閉塞してしまう。

ごめんなさいと
ありがとうを携えて

充電が終わったら、向き合わなくちゃ。
怖くても、辛くても
ちゃんとわたし、向き合わなくちゃ。

どうぞ神様がいるのなら
わたしに力をお貸しください。
お守りください。

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