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29.わたし、桜並木を歩く。

桜満開。春爛漫。

新しい道、いつもの道、
電車から見える景色に

さくら、さくら、さくら ───

柔らかなピンク色は
どうしてこんなに心を和ませるんだろう
柔らかな空の青も
とっても優しい

桜並木の下を歩く。

上を見上げて 足どり軽く
いっぱいに いっせいに
花を咲かせて風に揺れる
その優しいおはなしに耳を傾けるようにして

胸いっぱいに 桜の匂いを吸い込もうと
深呼吸してみたけれど
あまり鼻のきかないわたしには分からない

ちょっと悔しい 苦笑い

あたまの上で ふわふわ揺れる
柔らかなピンク色

その様子を見ていたら

"おいしそうだなぁ"

なんて、ふと考えてしまった

大きく口を開けて ふわふわをまるごと
はむっと、食べることができたなら…

わたしの口いっぱいに
さくらの香りが広がって
胸の中心から、お腹の中心から
ピンク色になる 春になる

体の中心から春になりたい
全身に春を纏いたい

そして、
春の魔法が使えるような人になりたい

さくらみたいに優しく 柔らかく
誰かの心に触れられたならいい

そうか、わたしの憧れる優しさは
さくらみたいな優しさだ

強くて優しいに桜なろう
どんなに冬が寒くても、
何度でも越える
そして、春には朗らかに咲いて
目一杯のびをして笑うんだ

こんな気持ちで歩けるなんて
もうすっかり、わたしの心は
さくらのピンク色に染まっています。

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