【小説】宇宙山事件
〇戦士と怪物
ある日突然、当たり前の平穏が乱された。
どこからか、恐ろしい生物達が現れ、人間の居住区を襲うようになったのである。奴等は、明らかに進化の過程で誕生したようなものではない、圧倒的捕食者達であった。
突然変異、宇宙生物、生物兵器の脱走……自然界からの報復説まで囁かれたが、彼らの正体など、最早どうでもよかった。
平穏……人々が願うのは、当たり前に享受していたはずの、それだけである。
金属を噛み砕き……
炎を恐れず……
重力に逆らう……
既存の「生物」と区別し「怪物」と呼ばれるようになった奴等によって、生態系の頂点を外された人間達は、駆逐される一方であった。
そうして世界が恐怖に歪み、人々が人類の絶滅を覚悟した時……ある男が立ち上がった。その名は「ロベル・ガレオン」……彼は「トラヴェル軍」を率い、武力を用いて怪物達に抵抗を図った。
人間が持つ、その肉体のみならず「知恵」さらに「精神」という武器の効力を、最大限に引き出したのである。
以降、ロベル・ガレオンを筆頭に、トラヴェル軍を組織する者達は「戦士」と呼ばれるようになった。
戦士は数を増やし、あらゆる土地、あらゆる地域に配備され、怪物の闊歩する世界の中でも、人々に平穏をもたらすようになるのである。
――― ――― ―――
〇シンジと言う男
シンジ……戦士の一人だった。
彼は、遠い昔、突如現れた怪物に、父母を残忍に殺された。
本人はそれを、苦にはしていない。
毎日のように、いや、毎秒のように、牛や、豚や、鶏が、人間の腹を満たすために殺されている。
自然界でも、大小さまざま数えられない生物達が、他者に食されている。
父母が怪物に喰われたことは、自然なことに思えたのである。
もちろん危惧はしていた。
幼シンジ:「もし、父さんも母さんが殺されたら……ぼくは独りだ」
しかし、シンジの場合の「危惧」は、覚悟に近かった。
亡父:「親に頼るな。常に、俺たちが殺された後のことを考えろ!」
それは、亡き父の教えだった。
――― ――― ―――
〇戦士連合本部
戦士連合……ロベル・ガレオンが率いた「トラヴェル軍」を前身とした組織である。
「トラヴェル軍」は母体を残し、南半球を管轄。
「戦士連合」が北半球を管轄するようになる。
だが、一つの惑星に2つの司令塔では足らなくなり、戦士連合は3つに派生した。
・戦士連合本部:(北緯0~90°, 東経0~180°)
・戦士連合北方支部:(北緯0~90°, 東経0~180°)
・戦士連合南方支部:(南緯0~90°, °東経0~180°)
・トラヴェル軍:(南緯0~90°, 西経0~180°)
いくつかの治外法権地帯を除き、この惑星は、上記四大戦士機関に統治されているのである。
――― ――― ―――
宇宙山事件 完
――― ――― ―――
〇更新記録
・2024年10月14日 一新
――― ――― ―――
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?