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【新版】高校の七人
〇プロット
〇舞台「栄桜第一高校」
・主人公「ミライ」の暗く悲しい生い立ち
・転校生「シンジ」
・護身道部主将「リュウ」
〇学園裏シンジケートとの戦い
・シンジケート首領「カミヤ」
・ラグビー部主将「ケンタ(喧嘩屋)」
・空手部主将「カツキ」
・化学部の天才「医学部志望」
・法務部の天才「弁護士志望」
・カミヤ死亡、その他幹部行方不明に。
・シンジ、リュウ共に行方不明に。
〇裏との戦い
・シンジ、リュウ、全寮制のお嬢様学園「聖彩女子高」に逃亡。
・裏で糸を引いてくれた古い仲間「サクラ」
・格闘姉妹「ナツミ・フユミ」
・シンジ・リュウ、聖彩女子高での不穏な噂「売春組織ベイビーエンジェルズ」の存在を耳にする。その元締はどうやら、潰したシンジケートと繋がっているらしい。
・格闘姉妹うち一人「ナツミ」は、妹のフユミに異変を覚えていた→音声を録音→サクラに相談→シンジ・リュウコンビへ
・しかし、時すでに遅し。殺人部隊が聖彩女子高に潜入、シンジ、リュウを殺しに来た。ナツミは土壇場で、フユミのPCから入手したデータをシンジに送信。その後、ナツミの安否不明。
・街に逃げたシンジ・リュウ……まさかの、ミライが助けに来る。
・ミライ、叫ぶ。「筋物を相手取るな。この地方に安全な場所は無い。遠くへ逃げろ!」
・シンジ、秘められた過去を語る。ミライ・リュウ、その悲惨な四半生に愕然。
・シンジの過去
・未指定闇暴力団体「白糸」
……ストレス解消と称して法を破り、人を畏怖させ、闇に隠れることを快楽とする、異常者の団体。
・シンジ、秘密基地に
――― ――― ―――
〇名門「栄桜第一高」
名門「栄桜(さかえざくら)第一高校」……
設置学科:普通科・スポーツ科・グローバル科
全校生徒:960人(1クラス40人×8クラス×3学年)
就職・専門学校進学をはじめ、国内の難関大学・医学部進学はもちろんのこと、海外の大学にまで進学者を輩出している。それだけではなく、名スポーツプレイヤーの育成にも携わってきた。文字通りの「文武両道」を貫く学校である。
しかし「名門」と呼ばれる学校も「文武両道」を謳う学校も、謳っているだけの学校を含めれば、腐るほどあるし、実際に腐っている学校もあるだろう。この学校が真に誇るべきは、進学実績や、部活の戦績などではなく、校則に込められる「特異性」である。
――― ――― ―――
〇栄桜第一高の特異性
・部活動加入必須(=帰宅部厳禁)
栄桜第一高は、全校生徒1人残らず、部活動への加入を義務付けている。「部活動加入必須」というのが正式な条文であるが、一般には、帰宅部厳禁と称されることが多い。理由は単純。部活動への加入を義務付けることによって、集団や組織の中での協調性やコミュニケーション能力の向上機会を損なわないようにすることである。もちろん兼部も許可される。
・学生端末
全校生徒には、1人1台スマート端末が貸与され、テスト範囲・学級通信・業務連絡等を学校の巨大サーバーで管理する。情報化社会に根差した教育の一環である。とはいえ、ただ学校から端末を貸し出すというだけであり、ポルノを見ようが、ゲームをしようが、お咎めは無い。ただしトラブルが起きた場合は、その解決のために学校のセキュリティオフィスを介す必要はある。
そのため、それ以外の端末を持つことは、"最重要校則違反"であり、違反が発覚した場合は、即刻退学処分の処置を取ると、保護者にも話が通されている。
・生徒会役員
学年で2~3人ずつ、決選投票によって生徒会役員を選出し、行事の運営等に携わらせるというという仕組みは、もはや無い学校の方が少ない。
栄桜第一も言わずもがなである。
ただし栄桜第一は、生徒会役員を2人選出する。
生徒会役員は基本、教員の言いなりなのであるが、自主性・自立心・自律を尊重するこの学校では、生徒会長の持つ権限は大きいとされている。
――― ――― ―――
〇某中学3年生の男
栄桜第一高1-B組の男子生徒の一人その名を「シンジ」。
シンジは、この春入学した男である。
しかし、彼は少々異端な男であった。
栄桜第一高は、普通科だろうが、スポーツ科だろうが、グローバル科だろうが、国内でも屈指の人気度を誇る。ゆえに、320人の枠と言えど、倍率は毎年4を超える。それゆえ、この学校に通う生徒は、必ずと言っていいほど、この学校を第一志望としてきた。
シンジはそうではなかったのである。
何故か。
――― ――― ―――
シンジは中学時代、、、とある女子生徒に恋をしていた。
女子生徒への恋は、やがて、女子生徒との恋となる。
彼女は、非常に満ち足りた人物だった。
齢10代前半といえど、頭脳明晰、容姿端麗……比類なき美しさを持った女性だった。
ごく普通、それどころか何事においても中の下の、取るに足らぬ男子中学生だった「シンジ」を、高嶺の花を狙うべく奮起させ、周りから神童・天才と崇め奉られるような人物に仕立て上げたほどである。
シンジは、彼女のために、自己研鑽の努力をたゆまなかった。
しかし彼女は……頭脳明晰、容姿端麗というだけではなく……
佳人薄命であったのである。
――― ――― ―――
彼女は、受験前年の夏、亡くなった。
シンジは、彼女がどうして亡くなったのかということより、亡くなったことそのものに、途轍もない衝撃を受けてしまった。
実は、何故彼女が亡くなったのか、シンジは知らないのである。
当時、その理由は伝えられたはずである。
亡くなった事実そのものが大きすぎて、シンジの頭に記録されてないのである。
「彼女の喪失」に伴う、一連の出来事は、シンジを暗黒の海へ引きずり込んだ。それから半年間、何も覚えていない。
その間、シンジに自我は通っていなかった。
――― ――― ―――
・中学時代
……
……
……
中学2年生の時分だった、、、
シンジは、個々の模擬試験やテストにおいて、こつこつと学年1位をとるようになってから、彼女とよく話すようになっていた。
磁石のように日常に存在する……しかし超自然的な力で、二人は惹き付け合ったのである。
中学3年の春、、、彼女は言った。
「ねえ、シンジ。一緒に、栄桜第一目指さない?」
「えっ!?」
シンジは驚いた。
名門「栄桜第一高」のことは、昔からよく知っていた。自分とは、全く違う世界にある学校だと思っていた。しかし、燃え上がる恋の炎と共に、上昇した学力水準は、既に栄桜第一高を合格圏内に収めていたのである。
その事実に遅れて気づき、面食らったのである。
「一緒に狙わない? 首席」
「首席……」
「シンジとあたし、どっちが1位とれるかしら。ふふっ、競争だよ!」
……
……
……
ただ一つ、彼女の気持ちに応えたかった。
彼女の気持ちに応えて、首席合格を取りたかった。
そして、それからも、彼女の隣で共に歩んでいきたかった。
歩んでいくはずだった。
「一緒に狙わない? 首席」
……その約3ヶ月後の8月某日、彼女は死んだ。
それからさらに7か月後、シンジは栄桜第一高に合格した。
だが「本物の天才」が登場したことにより、シンジの首席合格は阻まれた。いや、恐らくその男がいなくとも、当時の荒み切った内情のシンジでは、首席合格は取れなかったろう。
首席のいかんにかかわらず、シンジは、初めから終わりまで、栄桜第一高なんか目指したことはなかった。
目指しているのはいつでも、彼女の隣だった。
この世界のどこにも、彼女の隣なんて場所が無くなった。
シンジにとって、この合格は、不合格以上に虚しいものだったのである。
――― ――― ―――
〇ナイトウ先輩
シンジは、クラスで孤立した。この環境そのものを否定していたのだから、同級生と仲良くつるめるわけはない。
授業中は、先生とコミュニケーションを取らざるを得ない状況になるが、基本的にクラスメイトとかわすのは「おはよう」「お疲れ」「じゃあね」……一日に、ほぼそれだけ。
だが、コミュ障というわけではない。
言いたいことは、きちんと言語化し、人の目を見て話が出来た。
しかしながら、その眼の奥にある闇には、人を怖がらせるものがあったのである。
――― ――― ―――
ある日……
「シンジくんっているかな?」
その日、1-Bの教室に直々にやってきたのは、生徒会役員の一人、ナイトウだった。3年生の陸上部員で、体育会会長も務めている。
そんな人物がこの教室に、それもシンジの元に、何故現れたのか。
尋ねられた女子生徒が、シンジを呼ぶ。
「ん?」
――チョロチョロ……
シンジは、教室の花瓶に、水を注いでいた。
「あれ?生徒会のナイトウ先輩。お疲れ様です、自分がシンジです」
ナイトウは、少々驚愕した。
ナイトウがここへ来たのは、シンジの入部が確認されてないからである。それは、この学校に敷かれる「部活動加入必須」の校則に違反する。
彼はてっきり、シンジと言う人物を、勉強ばっかりやってきたような、コミュ障の1年坊主だと予想していたのだが、意外にも礼儀正しい男だった。
「シンジくん、帰宅部厳禁の校則は知ってるよね? その件なんだが」
「はい、忘れてるわけではないんですが、決めかねてまして」
「ふーん」
ナイトウはそこで、シンジの眼の奥に潜む闇を垣間見た。
「部活のリストを渡しとく。そろそろ、第二入部期間が終わってしまう。そうしたら、組織が成熟してしまうから、入りにくくなるぞ。今週中に、必ず1個決めてくれ」
「はい、ありがとうございます」
「一応聞くが、習い事はやってるか?」
「習い事……」
シンジは「習い事」と聞いて、遠い昔の嫌な記憶を思い出し、顔をしかめた。
「うっ……!」
脳裏に鋭い痛みが走り、うっかり声が漏れる。
「ん? 大丈夫か?」
「あ、はい。すみません。習い事は、やってないです」
「そうか。分かった。一応、陸上部も募集してるから、気が向いたら見に来い。待ってるぞ」
「ありがとうございます……!」
習い事……
栄桜第一高は帰宅部厳禁だが、外部のチームに所属しているなどと言う理由で部活に所属出来ない生徒もいる事を加味し、生徒会役員補助委員という名目で入部届を受理するのである。
ナイトウは、それを確認したわけである。
――― ――― ―――
〇嫌な記憶「暴力事件」
……
……
……
幼い頃、、、
シンジは虐められがちだった。
子供たちの中で、カーストが低かったのである。
ぐずぐず泣いているシンジを見かねた亡き祖父は、知り合いの格闘道場に、半ば放り込むようにシンジを入れた。
その道場……
実は極道の戦闘員養成所だったのである。
もちろん祖父はそれを知っていた。
暴力団規制法の施行により、排斥されつつあるが、祖父の時代には、ヤクザは一般的なモノだった。
表社会・裏社会で、法の陣営が交代する時代だったのである。
「組長、うちの孫は気骨がねえ。ちょっと頼んでもいいかい。小坊だが、物分かりはいいぞ」
「よっしゃ」
その格闘道場は、アメとムチの差が激しい場所だった。
竹刀で打たれる、殴られる、蹴られる、怒号が飛ぶ……一寸先どころではない闇の中を生きるような裏社会で、使い物になる人材を育成するためなのだから、当たり前のことだった。
それでも、シンジは心根の強い男だった。
普通の子だったら、1日で逃げ出していたことだろう。
だがしかし、常軌を逸していたのは、アメの方だった。
竹刀の雨を浴び、あざだらけで崩れ落ちたシンジに、
「よーしよしよしよしよしよし!!!」」」」」
刀傷のある男、刺青のある男、小指の無い男達が、群がってシンジを褒め称える。
それも、猫撫で声と、君の悪い笑顔で。
教育と言うよりは、まるで猛獣の教育のようだった。
……
……
……
その後、、、
「道場は潰れた」
ある日突然、祖父は険しい顔でそう言った。
幼いシンジは、それ以上祖父に何も聞くべきではないと察した。
おおよそ祖父が孫にするとは思えない、険しい表情だったのである。
恐らくだが、組員が不祥事を起こし、組そのものが雲隠れとなったのである。
……
……
……
――― ――― ―――
……
……
……
極道の世界にも耐えうる精神と、身体能力を身に着けていたシンジ。
だが、シンジはやはり、悪童たちの辱めの的となっていた。
当然である。
一度いじめられっ子になってしまうと、よほどのきっかけが無い限り、その雰囲気や立場を改めるのは難しいことである。
悪童たちが、こぞってシンジを苛める。
給食セットを女子トイレに投げ込み、上履きを金魚鉢に投げ込み……
シンジは、暴力の恐ろしさを、暴力を以て学んだ。
暴力は、暴力を学ぶ以外に使ってはいけないと。
だが、限界だったのである。
シンジの心根の強さが、裏目に出る形となった。
限界を遥かに超えて、爆発した。
――パァン!
その日、その時……風船が割れたかのような音が、教室に響き渡った。
シンジを虐めていた女の子が、倒れた。
……殴ったのである。
シンジは、女の子の横っ面を、拳骨を固め、渾身の力で殴ったのである。
女の子は血を吹いて気絶した。
「てめえ!」
もう1人の悪童が、シンジに掴みかかった。シンジは手首をつかみ、腕をねじ上げ……
――バキッ
……折った。
クラスメイトは、悲鳴を上げることが出来ないほどに、恐怖した。
……
……
……
……それから、どうしたか。どうなったか。
シンジには、記憶が無い……わけではない。
女の子の顔には傷がついただろうし、歯も折れていたかもしれない……
男の子の腕は、元通りにくっついただろうか……
とにかく、物凄い修羅場があったに違いない。
シンジの生存本能は、必死でその期間のことを隠す。
シンジと言う生物を構成するうちの大多数の細胞が、思い出そうとする行為をしようと考えようとすることすら止めさせる。
本物の黒歴史なのである。
――― ――― ―――
〇部活
人との関わりを避けたい……
だが、部活動には加入しなければならない……
部活のリストの中、シンジの目を引くものがあった。
「護身道部」
恐らく、
――― ――― ―――
…… …… ……
〇
「ミライ……君は生まれついて、ほぼ聴力を持たなかった。だから、周りとの違いに、心を砕くこともあったと察する」
「……」
「自分語りをしてしまうが、俺は……」
そして、シンジの凄まじい半生が、明かされた。
「たった1晩!それも1時間にも満たない間の話だ! 俺は父と母も、学校の友人もみんな失った!」
「……」
「分かるか。当たり前にあったモノが、亡くなってしまう。俺は、耳も目もある。それゆえに、今でも思い出す。溺れ死ぬ母の断末魔と、母を助けるべく飛び込んだ親父の波しぶきと……」
「……」
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