【長編】高校の七人「部活選択」
栄桜第一高合格後、、、
シンジはクラスで孤立した。この環境そのものを否定していたのだから、同級生と仲良くつるめるわけはない。
授業中は、先生とコミュニケーションを取らざるを得ない状況になるが、基本的にクラスメイトとかわすのは「おはよう」「お疲れ」「じゃあね」……一日に、ほぼそれだけ。
だが、コミュ障というわけではない。
言いたいことは、きちんと言語化し、人の目を見て話が出来た。
しかしながら、その眼の奥にある闇には、人を怖がらせるものがあったのである。
――― ――― ―――
ある日……
「シンジくんっているかな?」
その日、1-Bの教室に直々にやってきたのは、生徒会役員の一人、ナイトウだった。3年生の陸上部員で、体育会会長も務めている。
そんな人物がこの教室に、それもシンジの元に、何故現れたのか。
尋ねられた女子生徒が、シンジを呼ぶ。
「ん?」
――チョロチョロ……
シンジは、教室の花瓶に、水を注いでいた。
「あれ?生徒会のナイトウ先輩。お疲れ様です、自分がシンジです」
ナイトウは、少々驚愕した。
ナイトウがここへ来たのは、シンジの入部が確認されてないからである。それは、この学校に敷かれる「部活動加入必須」の校則に違反する。
彼はてっきり、シンジと言う人物を、勉強ばっかりやってきたような、コミュ障の1年坊主だと予想していたのだが、意外にも礼儀正しい男だった。
「シンジくん、帰宅部厳禁の校則は知ってるよね? その件なんだが」
「はい、忘れてるわけではないんですが、決めかねてまして」
「ふーん」
ナイトウはそこで、シンジの眼の奥に潜む闇を垣間見た。
「部活のリストを渡しとく。そろそろ、第二入部期間が終わってしまう。そうしたら、組織が成熟してしまうから、入りにくくなるぞ。今週中に、必ず1個決めてくれ」
「はい、ありがとうございます」
「一応聞くが、習い事はやってるか?」
「習い事……」
シンジは「習い事」と聞いて、遠い昔の嫌な記憶を思い出し、顔をしかめた。
「うっ……!」
脳裏に鋭い痛みが走り、うっかり声が漏れる。
「ん? 大丈夫か?」
「あ、はい。すみません。習い事は、やってないです」
「そうか。分かった。一応、陸上部も募集してるから、気が向いたら見に来い。待ってるぞ」
「ありがとうございます……!」
習い事……
栄桜第一高は帰宅部厳禁だが、外部のチームに所属しているなどと言う理由で部活に所属出来ない生徒もいる事を加味し、生徒会役員補助委員という名目で入部届を受理するのである。
ナイトウは、それを確認したわけである。
――― ――― ―――
人との関わりを避けたい……
だが、部活動には加入しなければならない……
気だるいシンジであるが、部活のリストの中、シンジの目を引くものを見つけた。
「護身道部」
それは、興味と言うより、遠い昔の記憶による、嫌悪だったかもしれない。
――― ――― ―――
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