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77.人形師の憂鬱

愛しのセレナーデ
トパーズの瞳
ブロンドの髪
艷やかな肌
薄紅色の唇

きみは愛されるために生まれたお人形だよ
どうだい?純白のドレスは気に入ってくれたかな?

なぁ、セレナーデ
何か返事をしておくれよ
セレナーデ… セレナーデ…

あぁ、きみは、こんなにも美しいのに
魂だけが空っぽだ

一方の僕は醜くて
誰からも愛されないというのに
どうして神様は僕みたいな出来損ないに
魂を与えたのだろうか

捨てるくらいなら
生み出さなきゃいいんだ
いっそ壊してくれて良かったのに……

ねぇ、セレナーデ、僕は時折ね、
この顔に彫刻刀を突き立ててやりたくなるんだ
僕もきみと同じような素材なら
もう少し手の施しようがあるのだろうけど

あぁ、愛しのセレナーデ
残念ながら、きみを完成としなければならない
きみを待っている人がいるからね
今日が一緒に過ごせる最後の晩だよ
きみが僕の手を離れるのは寂しいけれど
大丈夫、こんなにも美しいきみを大切にしないはずはないさ

…僕を真っ直ぐその瞳に映してくれるのは
いつだって、きみたち人形だけだ

おやすみ、セレナーデ



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77/100 「人形」
美しいものを生み出すほどに、自分との乖離に苛まれていくのです。

「絵描きさんに100のお題」に文章で挑戦中。
http://kuusouya.web.fc2.com/Story2/h_100.htm

一人称替え、部分抜粋、アドリブOKです。

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